
ニルマル・ナラヤナン
リヤド: 2021年、サウジアラビアは3大陸を結ぶグローバルな物流拠点として王国を位置付けることを目的とし、国家運輸物流戦略を始動した。そのとき、この野心的な夢を同国がどのように実現できるかについて、疑問を抱くものもいた。
しかし1年半が経過した今、懐疑的だった人々の懸念は払拭されている。
サウジアラビアの物流セクターは進歩を遂げ、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下率いる政府が、世界の物流地図上で王国を重要拠点にするための正しい方向に導いていると示されているからだ。
サウジアラビアにとって、物流の効率化は王国のサプライチェーンを強化するためには必然的な課題であり、ビジョン2030が描く経済多様化の目標を達成するためにも不可欠である。
画期的なイニシアチブ
サウジアラビアの物流セクターの成長は、サウジアラビア物流運輸省、サウジ湾岸当局(通称マワニ)、そして国家産業開発および物流プログラム(National Industrial Development and Logistics Program:NIDLP)が主導する多くの画期的なイニシアチブによって推進されている。
なおマワニとNIDLPは、人工知能を含む高度なデジタル技術の利用推進にも力を入れている。これは、サウジアラビアの港湾と物流センターを完全に自動化するためである。
ジョンズ・ホプキンス大学の講師でキング・ファイサル・センター・フォー・リサーチ・アンド・イスラム・スタディーズ・エネルギーおよび環境安全保障の上級研究員を務めるポール・サリバン氏は、NIDLPもマワニも「国内や他国との今後の物流開発において、必然的に大きな役割を担うようになるでしょう」という。
サリバン氏は次のように付け加えた。「投資や、システム内部のシステムが発展していく中で、マワニとNIDLPは多くの議論に参加することを求められます。地方レベルから国家レベルまで、サウジアラビア行政の他の多くの部分も、これらの発展への参加が求められるでしょう」
物流セクターの成長を加速させるため、サウジアラビアのサレ・アルジャセル運輸物流大臣は2022年10月、59の物流ゾーンを発足してサプライチェーンを強化する計画を発表した。
1月12日には、リヤドで開催された未来鉱物フォーラム(Future Minerals Forum)でアル・ジャセル大臣はさらに、サウジアラビアは変革の道を歩んでおり、王国の物流セクターはこの変革を可能にしなければならないと述べた。
サウジアラビアは、システム内部の物流システムを発展させるためにアラビア湾、紅海、インド洋、そして自国の土地とそのつながりを利用することができます。アラブ首長国連邦(UAE)の物流拠点に近いことは、サウジアラビアの将来の物流ネットワークにとって大きなプラスになる可能性があるのです。
サレ・アル・ジャセル運輸物流大臣
「サウジアラビアは現在、港湾、鉄道、道路に関していえば、非常に強力なインフラを享受しています」と彼は繰り返した。
サリバン氏によると、サウジアラビアは地理的に、物流大国を目指すのに役立つ決定的な優位性を持っているという。
「サウジアラビアは、システム内部の物流システムを発展させるためにアラビア湾、紅海、インド洋、そして自国の土地とそのつながりを利用することができます。アラブ首長国連邦(UAE)の物流拠点に近いことは、サウジアラビアの将来の物流ネットワークにとって大きなプラスになる可能性があるのです」とサリバン氏は述べた。
スキル開発
サリバン氏はさらに、サウジアラビアは、物流目標を実現するための教育と訓練プログラムを提供することによって、地域内でのスキル開発に取り組む必要があると指摘した。
「サウジアラビアの物流システムが発展するにつれて、法律と規制をさらに整備していく必要があります。サウジアラビアの法令だけでなく、他の国々の法令についても、理解を深めるための訓練が必要になるでしょう」とサリバン氏は付け加えた。
2021年のサウジ・ロジスティクス・アカデミーの立ち上げは、この成長産業で競争力をつけるための訓練をより多くのサウジ国民へ実施するとともに、このセクターの雇用を増やすために政府がとった最初の措置のひとつだった。
同アカデミーは、郵便物流サービス、海上および港湾輸送、国際貿易、海運および輸出、陸上輸送、電子商取引、倉庫管理、そして航空輸送を含む7つのセクターを対象としている。
11月初め、サウジアラビアの公共交通機関は、王国の貨物輸送取次ぎ事務所を地方に分散させることを目的としたイニシアチブの開始を発表した。このイニシアチブは、サウジ・ロジスティクス・アカデミーを含む他複数の団体と共同で実施されている。
リヤドで開催されたローカル・コンテンツ・フォーラムで講演したアルジャセル大臣は、王国の運輸物流セクターが、そのあらゆるサービスにおいてサウジ国民の雇用割合を増やそうと取り組んでいることを特に強調した。
課題への対応
サリバン氏は、こうした動きの中で、この先に生じるかもしれないいくつかの課題に対処するためのポジショニングをサウジアラビアは取るべきである、と考えている。
「物流は、地方や国、地域、そして国際的なレベルに分かれています。これらのレベルは複雑につながっています。サウジアラビアは、国内の物流ネットワークをさらに発展させるだけでなく、地域のネットワークや地域外のネットワークとも協力する必要があります」と彼は述べた。
またサリバン氏は、王国がゼロから仕組みを作る必要はなく、「たとえば、UAEやエジプトの物流システムとの協力的な投資や開発の道を見つけることができます。英国やEU、インド、日本、オーストラリアなど他のネットワークとも同じことができるでしょう。物流ネットワークを最適に機能させるためには、それらの統合が不可欠です。そこには、信頼できるパートナーなどとの総合的な計画や投資も含まれます」
1月初めにマワニは、ジュネーブを拠点とする国際定期船運航会社のメディタレニアン・シッピング・カンパニーが、インドと西地中海をつなぐ新しい航路にジェッダ・イスラミック港を追加したと発表した。
マワニはさらに、新航路が地域全体の輸出入業者に新たな機会を開くものであるため、この出来事はサウジアラビアの定期船接続を強化する重要なステップであったと述べている。
サリバン氏は、国内および協調的な海外との物流ネットワークを開発するならば、その極めて重要な部分は、インフラ、情報、通信などのシステムの安全性を確保することによってのみ可能になると指摘した。
「物流とは、システムとつながったシステムであり、他のシステムの中にネスト化され、さらに多くのシステムとリンクしてこそ最高の形態といえます。それぞれが全体を構成し、すべてが正しく機能している必要があるのです」と彼は指摘した。
ビジョン2030が描く物流目標の達成を目指してサウジアラビアが歩んでいく中、2023年以降にも、さらに重要なイニシアチブを目撃することになる可能性がある。それは常に高みを目指し、気高い目標の達成に向けて努力する王国リーダーシップの成果である。