シカゴ:アメリカ航空宇宙局(NASA)は1月7日、UAEのムハンマド・ビン・ラシッド宇宙センター(MBRSC)と提携し、月を軌道周回する宇宙ステーションの発射計画であるアルテミス/ゲートウェイ宇宙ミッションにおける重要パーツである「エアロック」を建設すると発表した。
NASAは2022年11月、25日間にわたる無人ミッション「アルテミス1号」を成功させた。4人の宇宙飛行士を月面に着陸させるミッションであるアルテミス2号(ゲートウェイ)は、2024年11月に予定されている。
UAEは、将来的に月の周回軌道に発射されるステーションの建設に携わっており、この計画は月面基地の建設、さらには有人火星探査ミッションへと続く布石となる見込みだ。
Illustrations of the design of the Gateway Lunar Space Station project, in which the UAE is taking part. The illustrations also show the Emirates Airlock, which will be the airlock unit of this first lunar station in history. pic.twitter.com/A3pnFWwr7A
— MBR Space Centre (@MBRSpaceCentre) January 7, 2024
「米国とアラブ首長国連邦は、宇宙開発、そして今後の人類の宇宙探査に関する協力関係において、歴史的瞬間を迎えた」と、NASAのビル・ネルソン長官は声明を発表した。
「アルテミス計画を通じ、われわれは平和的で国際的な宇宙探査の体制を築き、宇宙探査の新時代を切り開いた。UAEが提供するゲートウェイのエアロックは、宇宙飛行士が深宇宙で画期的な研究をなしとげ、将来的に火星に人類を送るための準備に貢献するだろう」
MBRSCはゲートウェイのクルーモジュールと科学研究用のエアロックモジュールを提供する予定であり、さらに今後のアルテミス・ミッションでは、UAEの宇宙飛行士が月周回宇宙ステーションに滞在することになっている。
「米国とアラブ首長国連邦のパートナーシップに関する今回の発表は、重要な計画における進展を示すものだ。両国のリソース、研究能力、技術的スキルを統合することで、米国とUAEは宇宙に関する共通のヴィジョンを発展させ、地球上のすべての人々にすばらしい成果をもたらすことができるだろう」と、カマラ・ハリス米副大統領は述べた。
アルテミス2号は月面に最初の女性と最初の有色人種を着陸させる予定であり、「革新的技術を用いて月面をさらに探索する」と、NASAは述べる。
NASAはサウジアラビアとUAEを含む、多数の民間および国際的パートナーと提携し、史上初の月軌道長期滞在の計画を進めている。NASAによれば、月面着陸によりアルテミス計画チームは「次なる大きな一歩である、初の有人火星探査」を視野に入れることができる。
ゲートウェイはNASAが主導するアルテミス計画の主要部分であり、月への再訪を実現し、初の有人火星探査への道筋を示すうえで鍵を握る。この小型宇宙ステーションは、月の軌道を周回する多目的基地であり、月面ミッションに不可欠なサポートを提供するとともに、科学研究拠点として、またさらなる深宇宙探査への足がかりとして機能する。NASAはゲートウェイ建設に際し、多数の民間および国際的パートナーと提携している。
今後のアルテミス・ミッションには、日本の航空宇宙開発機構(JAXA)の宇宙飛行士1名がゲートウェイのクルーメンバーとして参加する予定だ。
アルテミス合意の参加国のひとつであるサウジアラビアは、宇宙旅行の分野で若い人材を育成する奨学金プログラムと、宇宙飛行士養成プログラムを2022年に設立した。スルタン・ビン・サルマン王子は1985年、アラブ世界で初めてNASAのスペースシャトルに搭乗した宇宙飛行士となった。同氏はまた、宇宙ミッションに参加した初のアラブ人、初のムスリムでもある。
サウジアラビアは2023年、アルテミス計画に原加盟国として参加した。ほかの原加盟国は、オーストラリア、カナダ、イタリア、日本、ルクセンブルク、UAE、英国、米国である。
エアロックの建設に加え、MBRSCは月周回宇宙ステーションでの生活を支える工学的サポートを提供する。エアロックは、クルーと研究者がゲートウェイの加圧クルーモジュールの居住空間と、真空の宇宙空間とを行き来するうえで不可欠だ。こうした移動により、深宇宙環境の広範な調査とゲートウェイのメンテナンスが実現する。
ゲートウェイは深宇宙での長期的な探査と科学研究を支え、宇宙飛行士に生活・労働空間を提供するとともに、月面ミッションや月軌道周回中の船外活動の拠点となる。
NASAのアルテミス計画は、人類の深宇宙探査の歴史上もっとも多様で広範な多国間協力の賜物だ。カナダ宇宙庁、欧州宇宙機関(ESA)、JAXA、そして新たに加わったMBRSCとの提携を通じ、NASA協力は月面に再び人類を着陸させ、科学的発見を推進し、初の有人火星探査への道筋を示す。
今回のゲートウェイ建設での協力は、有人宇宙飛行に関するNASAとUAEのこれまでの協力関係の上に築かれた。
2019年、UAE国籍者として初めて宇宙に滞在したハザ・アル・マンスーリ氏は、国際宇宙ステーション(ISS)への短期ミッションに参加し、NASAとの提携により科学実験や教育アウトリーチをおこなった。
2023年、UAEで2人目の宇宙飛行士であるスルタン・アル・ネヤディ氏は、NASAのスペースX Crew-6ミッションを通じてISSに到達し、人類の知識を拡大し、地球上の生活を改善する科学研究に従事した。
現在、さらに2名のUAEの宇宙飛行士候補者が、ヒューストンにあるNASAのジョンソン宇宙センターで訓練を受けている。NASAはまた、火星研究や地上アナログ研究でもUAEと協働し、両国の探査目標を推進している。