
東京:作家の村上春樹氏は自宅からの自身のラジオ番組で、好きな音楽で世界の明るい面に焦点を当て、コロナウイルスとの闘いはお互いを支え合う方法を考え出すための挑戦だと語った。
「羊をめぐる冒険」や「ねじまき鳥クロニクル」などのベストセラーで知られる村上氏(71)は、金曜、この番組が「コロナブルーを吹き飛ばす」ことを願っていると語った。
村上氏の深夜の2時間番組「村上RADIOステイホームスペシャル」はザ・モダン・フォーク・カルテットの「Look for the Silver Lining」で始まった。その後、クラシックからジャズ、ポップス、ロックまで16曲が流された。一連の選曲には、笑顔、日の光、虹、誕生日の思い出など人生の幸せな側面が流れている。
村上氏はコロナウイルスとの戦いを、政治家の様に戦争になぞらえるのは不適切だと話した。「自分たちが協力し助け合いバランスを保つための知恵を出し合っていけるのかが課題だと思う。殺し合いをする戦争ではなく、誰もを生かすための知恵への戦いだ」と彼は言った。「嫌悪や憎悪はいらない」
音楽は村上氏の物語の重要なモチーフとなっている。熱心なリスナーであり、音楽コレクターでもある村上氏は、音楽に関する本も執筆しており、書斎にはレコード・ライブラリーもある。金曜日の番組はこの書斎で事前に収録された。
村上氏はTokyo FMで2018年8月から隔月で自身の番組「村上RADIO」に出演している。Tokyo FM関係者によると、金曜日の番組は、東京など一部地域でまだ継続しているコロナウイルス緊急事態宣言の下で暮らし、ストレスを受けている人たちを応援するという村上のアイデアだ。
村上氏は大学卒業後、東京でジャズバーを経営しながら執筆活動を始めた。1979年にデビュー作『風の歌を聴け』を出版した。1987年の恋愛小説『ノルウェイの森』は初のベストセラーとなり、若くして文壇のスターとしての地位を確立した。近年のヒット作には「1Q84」、「騎士団長殺し」などがある。
長年ノーベル文学賞に近いと言われ、また、あまり表にでないとされる村上氏は、長い間家で活動しているので生活習慣はほとんど変わっていない、と語った。さらに、「コロナ」によって多くの面で影響は受ており、作品へのインスピレーションに繋がるかもしれないと語った。
村上氏は、カルト教団が起こした1995年の地下鉄サリン事件や、自身が育った神戸での大地震など、社会を大きく揺るがした出来事に触発された物語を執筆している。
村上氏は、どの様に実現するかは別として、出来事を記録するというよりも、小説家として「別の形の物語」にすることに関心があるという。
村上氏によれば、世界は「大規模な社会実験の様な状況にあり、良くも悪くも、その結果が徐々に全体に広がっている様なもの」なのだ。
村上氏はコロナ後の世界は、コロナに対する防御が良くなったとしても、閉鎖的で利己的な社会になってしまうのではないかと危惧している、と語った。
「マスクやワクチンが十分流通していたとしても、愛と思いやりに欠けていたら、コロナ後の世界は確実にとげとげして味気ない世界になってしまうだろう」と彼は話した。「愛が大切なんだ。」
AP