
ジョン・デュエルダン
リヤド:この夏エジプトとサウジアラビアが全力を出しきれなければ、2020東京五輪に長くは残れないだろう。
国際トーナメントに16チームしか出場しない場合、失敗は許されない。この夏のオリン ピックのサッカートーナメントに向けた4月21日(水)のくじ引きがそれを物語る。
カイロ、リヤド、それにその両国をあげて、人々の反応の仕方は3通りしかない。恐れ、興奮、あるいはそれらの混在だろう。
サウジアラビアが対戦相手の実績を確認するには、2016年のオリンピック決勝戦を振り返ればよい。対戦相手の強豪2チームが共に決勝戦に出場したからだ。ブラジルはリオ・オリンピックの決勝でドイツを敗っているが、その両チームが若きグリーン・ファルコンズと日本で対戦する。
サアド・アル=シェフリー監督率いるサウジチームは、おそらく開会初戦でアイボリー・ コーストに勝たなければならないだろう。7月22日に横浜で3ポイントあれば3日後にドイツと対戦する希望が生まれる。
これは「言うは易く行うは難し」なのだが、サウジアラビアにも希望はある。サウジチームにはヨーロッパでプレーする選手がおらず、6月13日から7月10日まで開催されるコパ・アメリカを心配する必要がないからだ。
ヨーロッパの近代サッカー史上で最も慌ただしく肉体的に厳しいそのシーズンを終えた後に、各サッカーチームは必ずしも自動的に各国代表チームのコーチたちが欲しがっている選手全員を解放するとは限らない。何らかの交渉を経る必要があるのだ。
アイボリー・コーストは2019年度アフリカU-23ネイションズカップでの好成績により、オリンピックに出場する。彼らはトーナメントで優勝したことはないかもしれないが、あと一息のところまで近づいている。エジプトとの決勝戦は全90分間互角の戦いだったが、ヤング・ファラオズが延長戦で決定的なゴールを決めたのだった。プティ・エレファンツが選んだ初期チームは、多くがヨーロッパを拠点とする選手たちだ。
しかし1996年以降オリンピックに出場していないサウジチームには、ドイツが次に控えている。
ドイツチームは才能ある選手を多く抱え、2019年度UEFA U-21欧州選手では第2位となった。誰が日本に行くにせよ、サウジチームとは比較にならないトップレベルの国際経験をもつチームとなることは間違いない。ドイツチームの大半、あるいはほぼ全員が、ブンデス リーガ出身となるはずだ。
トーマス・ミュラー選手をチームのオーバーエイジ枠に含めるという話もあったが、このバイエルン・ミュンヘンのスター選手は辞退した。しかし、ボルシア・ドルトムントのマッツ・ハメルズ選手と、ボルシア・メンヒェングラートバッハのクリストフ・クラマー選手が加わることになるはずだ。
ドイツのコーチ、シュテファン・クンツ氏は、これから厳しい仕事が待ち受けていることを肝に銘じている。
彼はこう言う:「アイボリーコーストの80〜90%の選手がヨーロッパでプレーしている。タイにおけるアジア選手権でのサウジチームも見た。サウジチームは特殊なスタイルと特別な精神力を持ち合わせている。
「ブラジルについては言うまでもない。誰もがシニア代表チーム同士の素晴らしい対戦や、2016オリンピックの決勝戦のことを覚えている」
ブラジルの選手たちは確かに覚えているはずだ。2016オリンピックの金メダル受賞チームであれば、普通はトーナメントに真剣に取り組む。しかし、今回オリンピック開幕直前に終わるコパ・アメリカがあるのだ。間違いなく言えることは、プラジルは祖国とヨーロッパ大リーグ所属の大規模クラブに、ありあまるほどの優れた選手人材を持っているということだ。コーチのアンドレ・ジャーディン氏は、むしろ誰をチームから外すかを決めるのに苦労することだろう。
サウジアラビアが南米やヨーロッパの二番手チームと同じグループにされれば、エジプトはサウジに同情している場合ではない。自分たちは両大陸のチャンピオンらと同じグループにされるのだから。
アフリカの選手権保持者であるエジプトは、1992年以来初めてのオリンピック出場で2012年に準々決勝まで進んだが、アルゼンチン、スペイン、オーストラリアと対戦することに なっている。
アルゼンチンは二度金メダルを獲得しており、昨年の南米代表の予選トーナメントでは、ブラジルの上位につけ、7試合中6試合を勝ち抜いている。コパ・アメリカとオリンピックの同時開催は事を複雑にする可能性があり、とりわけオーバーエイジ枠に入れる選手の選出にそれが言えるわけだが、コーチのフェルナンド・バティスタ氏は招集する優秀な選手を多数持っている。その中にはおそらく、ブライトン&ホーヴ・アルビオンのミッドフィール ダーを務めるアレクシス・マック・アリスター、ニューヨーク・シティのヴァレンティン・カステリャノス、リバープレートのジュリアン・アルヴァレス、グラナダのネウエン・ペレスといった選手たちが含まれると思われる。
スペインについて紹介する必要はなかろう。話にも出ているように、セルジオ・ラモスやホルディ・アルバ級の選手がオーバーエイジ枠で東京へ行かないとしても、大リーグのトップクラスの選手らがいる:2019年度UEFA U-21欧州選手権で活躍したRBライプツィヒのダニ・オルモ選手のようなスター選手。弱冠18歳だが、すでにバルセロナでプレーしているアンス・ファチ選手。昨年およそ2千万ポンド(2,770万ドル)でマンチェスター・シティと契約したウィングのフェラン・トレス選手。やはりマンチェスター・シティの選手で、おそらく東京へ行くと思われるセンターバックのエリック・ガルシア。
オーストラリアはどうだろう?オリローズはトーナメントまではあまり話題に上らないだろうが、単に数合わせのためにいるのではなく、彼らも好戦するだろう。
アラブ諸国にとってこうした事すべてが大きな挑戦となっている。