



パレスチナ領ベツレヘム:迫撃砲が貫通したと思われるコンクリートブロックに並置されたキリスト降誕シーン:クリスマスを目前に、匿名アーティストのバンクシーによる最新のベツレヘムへの贈り物が土曜日、イスラエルに占領されたウェストバンクに姿を現した。
「ベツレヘムの傷(Scar)」と名付けられたこの作品では、幼子のキリスト、マリアとジョセフは損傷したコンクリートを通した逆光に照らされ、ベツレヘムの星(Star)に似せてぽっかり開いた穴から四方に飛び散る銃痕が刻まれている。
この作品はバンクシーのウォールド・オフ・ホテル(Walled Off Hotel)に設置されている。ホテルの全室は、占領されたウェストバンクをイスラエル領土と隔離するためイスラエルが建設した壁のコンクリート部分を眺める。
アートインストレーションのコンクリートブロックには、それぞれ英語とフランス語で示された愛(LOVE)と平和(PAIX)のグラフィティが見える。この場面の最前部には、包装された大きなプレゼントが3個ある。
「これはキリスト降誕です」とホテル支配人のウィサム・サルサー(Wissam Salsaa)氏は作品を設置した後に語った。「バンクシー流のクリスマスへの寄稿作品です」。
「ベツレヘムの物語、つまりクリスマスの物語を違った方法で取り上げ、パレスチナ人のベツレヘムでの暮らし方を考えてもらうには、絶好の方法です」。
サルサー氏はイスラエルの壁のことを、壁の建設を支持した者全員に恥辱を与える「傷」だと呼んでいる。
イスラエルは分離壁(一部コンクリート、他の部分はフェンス)の建設を2002年のパレスチナ蜂起(インティファーダ)の間に開始した。
大半はウェストバンク内部に建設されており、イスラエル側は攻撃防止のために必要だと主張している。パレスチナ側はエルサレムから隔離するための人種隔離の壁と呼んでいる。
伝統的なベツレヘムのクリスマス祭は来週、キリスト教徒によりキリストが生誕したとされる場所に建設された降誕教会で行われる。
バンクシーのウェストバンクでの足跡は、この降誕シーンと2年前に開業したホテルだけではない。
2007年、バンクシーは壁に手をついたイスラエル兵をボディチェックする少女を含め、ベツレヘムに数多くの作品を描いた。
2005年には、高さ8メートル(27フィート)の分離壁沿いのさまざまな場所にステンシル画を9点、スプレーで描いた。
その中には、壁に立て掛けたはしご、風船に運び去られる少女、そして平和な山の風景を望む窓などである。
パレスチナのグラフィティアーティストたちも、分離壁を政治とアートの表現の場所に変えた。
世界の他の場所と同様、この占領地域のバンクシー作品は、作品を制作するため真夜中に出没することが多いという理由もあって、ツーリストを呼び寄せている。
世界で最も有名なグラフィティアーティストの正体はいまだに謎で、最新作の公開中も現れなかった。
「バンクシーは声を上げられない者の声になろうとしています」とサルサ氏は言う。
「バンクシーは、アートを通じてレジスタンスの新しいモデルを創造しているのです」。
バンクシーは、2000年代初め、イギリスの公共の場で彼の反体制的なアート作品が現れ始めてから有名になり、長年、暴力と衝突をテーマに取り組んでいる。
AFP