
デビッド・カンプマン
ドイツ、エップシュタイン:
ノラ・ブルーザ氏の人生には、常にデーツの存在があった。37歳の彼女はモロッコ南部出身で、そこでは以前亡き祖父がデーツ農園を経営していた。「デーツは常に家にありました」と彼女はアラブニュースに語った。
2018年に、ブルーザ氏のオランダ系モロッコ人の夫が仕事の関係でドイツに来た時、17年間オランダに住んでいた彼女は、3人の子どもを連れて夫についていった。
「当初は3年だけ滞在するつもりでした」と彼女は言う。しかし、新型コロナウィルスの大流行が一家の計画を狂わせた。
滞在期間を延長せざるを得なくなり、さらにロックダウンにより、日常生活のほとんどを家で過ごすことになった。ブルーザ氏にとって、それは諸刃の剣であった。
「デメリットは、家にいなければならなかったこと。メリットは、アイデアを練って、それを活かせるようになったことです」。
昨年のラマダンの時、ブルーザ氏の娘がある話題を持ち出したことで、彼女は新しいアイデアを思いついた。
「娘は、特にラマダン中に人々が大量に消費するデーツの種類や味について、思い出させてくれたのです」
その時ブルーザ氏は、ドイツで自分のデーツビジネスを立ち上げ、大量輸入をすることを思いついたのだ。デーツを食べて育った彼女にとっても、ビジネス自体は新鮮なものだった。
ブルーザ氏がモロッコ人であったため、モロッコや隣国のアルジェリア、そしてチュニジアがまず有力候補として挙がったが、いずれも彼女の条件には合致しなかった。
「期待したほどの収穫量は見込めませんでした」と彼女は言う。「また、種類も求めていたほど多くありませんでした」
種類の多さと品質が彼女の最優先事項だった。結局、条件を満たすのは、サウジアラビア産のデーツだった。
「サウジアラビアには、さまざまな種類のデーツがあり、ユニークなものも多いんです」とブルーザ氏は言う。「例えばアジュワデーツは、マディーナでしか採れないんです」
ブルーザ氏はリサーチを行い、自分の理想に最も近いサプライヤーを探し当てた。マディーナにあるNakheel Alya社だ。
30カ国に製品を販売しているが、Nakheel Alyaは2015年に設立された比較的新しい会社である。
それでも「私の条件に合っていた」という。ブルーザ氏は夢を叶え、2021年8月に会社「Nakheel Fruits」を立ち上げた。
タウヌス山脈の端にあるヘッセン州の町、エップシュタインにある同社の倉庫には、ナチュラルデーツ、デーツクッキー、デーツをチョコレートでコーティングしてアーモンドやクルミを入れたものなど、様々な製品の箱が並んでいる。
「主にスーパーマーケットと、ウェブサイトを通じて購入する個人顧客に販売しています」とブルーザ氏は言う。
個人の客はドイツ全土にいるが、スーパーマーケットはヘッセン州のものが多く、ラマダンの時期には需要が高まる。
ブルーザ氏は当初は3年程度の滞在を予定していたが、今はずっとドイツにいたいという。「この場所が好きです。それに、この仕事も大好きなんです」。
彼女は自分の事業が成長し、全国に広がることを望んでいる。「私の夢は、事業をさらに発展させ、サウジアラビアのデーツとデーツ製品の品質の良さと種類の豊富さを、ドイツのお客様に知ってもらうことです」