
重症の心臓病患者にさまざまな細胞に変わる人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った心臓の細胞を移植する計画を進めている大阪大のチームは27日、患者に移植して安全性や効果を検証する医師主導治験を実施したと発表した。
iPS細胞を使った心筋の移植は世界初。
移植を受けたのは、心臓の血管が動脈硬化などで詰まり、血液が十分に届かなくなる虚血性心筋症で心不全になった患者。治験は計10人を対象に実施する。
阪大チームの澤芳樹教授(心臓血管外科)らは、健康な人の血液から作ったiPS細胞で心筋細胞のシートを作成し、患者の心臓に貼り付けた。シートは消失するが、細胞が出すたんぱく質によって心臓に新たな血管が生え、心機能が回復する効果が期待できるという。
一方、移植する細胞は約1億個と多く、変化し切れないiPS細胞が混ざっていると腫瘍になる恐れがあると指摘されている。阪大チームはこれまで臨床研究を計画していたが、治験を優先させることで治療の早期実用化を目指す。iPS細胞を使った治験は国内で2例目となる。
iPS細胞を使った再生医療では、理化学研究所などが2014年、目の難病患者に対し世界初の臨床研究を実施した。
今後、慶応大が別の心臓病患者への移植を計画しているほか、脊髄や膝関節の軟骨を損傷した患者らを対象に移植が予定されている。
JIJI Press