
マニラ:岸田文雄首相は4日、マニラのフィリピン議会で演説した。東・南シナ海で覇権主義的動きを強める中国を念頭に「法の支配に基づく国際秩序は重大な危機にさらされている」と指摘。自由で開かれた国際秩序を維持・強化するため、米国を含む「同盟国・同志国の重層的な協力が重要だ」と訴えた。日本の首相が比議会で演説するのは初めて。
首相は、気候変動や感染症といった「複雑で複合的な課題」に国際社会が直面しているとした上で「このような状況下、世界はイデオロギーや価値観で分断されていて良いわけがない」と主張。「国際社会を協調に導き、自由と法の支配を守り抜く決意だ」と誓った。
米比軍の合同訓練への自衛隊の参加や、6月に初めて行われた日米比3カ国の海上保安機関の合同訓練を歓迎し、「力ではなく、法とルールが支配する海洋秩序を守り抜いていこう」と語り掛けた。政府安全保障能力強化支援(OSA)として沿岸監視レーダー供与で合意したことに触れ「日本は引き続きフィリピンの安全保障能力の向上に寄与し、地域の平和と安定に貢献していく」と述べた。
1977年に当時の福田赳夫首相がマニラでの演説で対東南アジア諸国連合(ASEAN)外交の原則を打ち出してから約半世紀がたち、首相は「日本とフィリピンの関係はかつてないほど強固になった」と評価。日ASEAN友好協力50周年を記念して12月に東京で開く特別首脳会議について「『信頼』を次世代につなげ、新たな時代を共につくるためのビジョンをASEANと共に打ち出したい」と語った。
時事通信