
平成以降で最悪となる犠牲者36人、重軽傷者32人を出した京都アニメーション放火殺人事件で、殺人などの罪に問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判の判決が25日、京都地裁で言い渡される。事件発生から4年を経て開かれた公判で、青葉被告は起訴内容を認め、動機について「小説を盗用された」などとする自身の思い込みを主張。こうした「妄想」が刑事責任能力に影響しているのかが最大の争点となった。
◇被告「やり過ぎた」
「私がしたことに間違いありません」。昨年9月の初公判で、車椅子に乗って出廷した青葉被告は「こんなに亡くなるとは思わず、現在ではやり過ぎたと思っている」と話した。10回にわたった被告人質問では、京アニを狙った理由について「(コンテストで)原稿を落とされたり、内容をぱくられ(盗作され)たりして、根に持つ部分が一番大きかった」と説明。「2、3人」と思っていた死者数が36人だったことは「(逮捕時に)被害者名簿が読み上げられて知った」と明かした。
被害者参加制度を利用した遺族の代理人弁護士に、「京アニが自分にしてきたことを全て不問にするのか」と反論する場面も。結審前日の同年12月6日、改めて遺族らへの思いを問われ、「申し訳ございません」と初めて謝罪。「(死刑で)償うべきだと考えている」と述べた。
◇遺族が直接質問も
審理には遺族や事件に巻き込まれた京アニ社員も参加し、青葉被告に「犠牲者に家族がいるとは考えなかったのか」と直接問いただすなどした。意見陳述で遺族は「被告人が死刑になっても憎しみや恨みが収まることはない」「36人が死んだだけではない。(家族ら)みんなの心が死んだ」などと声を震わせ訴えた。
重度のやけどを負った女性社員は「生きたまま体を焼かれた感覚は一生忘れることはない」と強調。多くの同僚を失った男性社員は「時間が止まってしまった仲間がいる中、人生を楽しんでいいのか頭をよぎる」と打ち明けた。
◇鑑定医、異なる見解
青葉被告の精神鑑定を行った専門医2人の尋問も行われ、被告の妄想について「事件に与えた影響はほぼなかった」「本件犯行の動機を形成している」と見解が分かれた。
検察側は論告で、「妄想の影響は限定的で、極刑回避の事情にはならない」として死刑を求刑。対する弁護側は「当時は心神喪失か耗弱状態だった」として、無罪か刑を減軽するべきだと主張している。
◇青葉被告の事件までの経緯
2006年 青葉真司被告、8年間勤めたコンビニ店を辞める
8月 女性宅で下着を盗むなどして逮捕
07年 3月 執行猶予付き有罪判決
派遣社員として工場を転々とする
08年 6月 秋葉原無差別殺傷事件
09年 2月 郵便局でアルバイト。「前科知られた」と約4カ月で退職
5月 アニメ「涼宮ハルヒの憂鬱(ゆううつ)」に感銘受け、小説執筆
11年 4月 匿名掲示板に「京アニ女性監督とやりとり」
12年 6月 コンビニ強盗で逮捕。服役中に小説のアイデアをノートに
16年 1月 出所。その後、心療内科に通院
7月 執筆再開
11月 小説コンテスト「京アニ大賞」へ応募
17年 3月 落選通知
6月 落選小説を投稿サイトに投稿
18年 1月 ノートを燃やす
11月 再放送の京アニ作品視聴。「ぱくってやがる」と投稿
19年 3月 携帯電話解約
6月 包丁6本購入、大宮駅前で無差別殺人計画も断念
7月 15日、所持金を全額引き出す。包丁を持って新幹線で京都へ
16日、京アニ第1スタジオを下見
17日、ホームセンターでガソリン携行缶など購入
18日、ガソリン購入、第1スタジオに放火
時事通信