
東京電力は10日午前、福島第1原発事故で溶け落ちた2号機の核燃料(デブリ)の試験的取り出し作業を再開した。試験的取り出しは2011年の事故後初の試みで、8月22日に始める予定だったが、デブリ回収装置に取り付ける5本のパイプの並び順に誤りが判明し中断していた。実際に回収できれば、廃炉に向けた工程は新たな段階に入る。
東電によると、「テレスコ式」と呼ばれる釣りざお状の回収装置を遠隔操作で原子炉の格納容器内に投入し、底にたまったデブリから最大3グラム程度を取り出す。期間は少なくとも2週間かかるとしている。回収したデブリは、日本原子力研究開発機構の施設で硬さや性質などを分析し、本格的な取り出しに向けた研究などに役立てる。
この日の作業は、午前6時35分ごろから開始され、同7時20分ごろに回収装置が格納容器の手前にある「隔離弁」を通過し、試験的取り出しに着手したという。
8月に作業を開始しようとした際、パイプの順番が誤っていると判明。協力企業が7月にパイプを接続したものの、東電は順番を一度も確認していなかった。このため準備段階から自社社員による確認を徹底するなどの再発防止策を講じた。今月9日には小早川智明社長が自ら映像でパイプの順番を確認したという。
同原発1~3号機内には、事故により溶け落ちた燃料と、原子炉内の構造物が混ざり合って固まった約880トンのデブリがあると推定されているが、詳しい状態や性質は分かっていない。放射線量は極めて高く、取り出しは廃炉作業の中でも「最難関」とされる。
当初は21年に着手する予定だったが、海外での装置開発の遅れや準備作業の難航などにより3回延期していた。
時事通信