
新型コロナウイルスの感染拡大を受けた自衛隊の災害派遣で、宿泊施設で療養する軽症感染者らの生活支援を求める自治体の要請に対し、防衛省が派遣を約1週間の期限付きにするケースが相次いでいる。
災害派遣は事前に活動期間を設定しないことが多いが、防衛省は感染防止を徹底すれば、感染者と会わずに食事を決められた場所に運ぶなどの支援は自衛隊でなくてもできると判断。隊員が初動で防護衣着脱などのノウハウを自治体や民間に伝え、初動後の役割分担を定着化させたい目的もある。
「生活支援や輸送支援は自衛隊が当初の業務を立ち上げ、1週間でスムーズに業務の受け渡しをしたい」。河野太郎防衛相は記者会見で、派遣の基本方針を繰り返し強調した。自治体や民間にできることは任せ、爆発的感染や大規模な自然災害などに備えて余力を残しておきたい判断もある。
自衛隊は3月下旬から空港での水際対策を実施しているが、4月上旬以降、北海道、宮城、東京、埼玉、神奈川、兵庫、高知、福岡など各都道県から新型コロナ対処の災害派遣要請を受けた。このうち、ホテルなどに一時的に滞在し、療養する無症状・軽症者への生活支援などについては、期間を1週間程度にした。
現場では隊員が、自治体職員らに医療用ガウン、キャップ、手袋などの着け方や、脱ぐ時の感染防止方法などを指導。これとは別に大阪、岡山両府県などでは衛生教育支援の名目で、府県職員や民間宿泊施設の従業員らにノウハウを伝えた。
軽症者らを受け入れるホテルは安全管理上、生活支援に従業員を直接関与させないケースもある。結果的に自治体職員が昼夜、携わることになる。
ある自治体の職員は「災害派遣要請前の調整段階から自衛隊側は活動期間の限定を条件にしていた」と指摘。「職員は普段のデスクワークから、突然防護衣を着て対応することになる。感染リスクもあり派遣期間後も自衛隊には柔軟に支援してほしい」と話した。
防衛省幹部は「自治体とは緊密に連携している。期間の延長や、撤収後も要請があれば再派遣することも有り得る」としている。
JIJI Press