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疲弊した日本の最前線に置かれた医師や看護師はコロナウイルス対策を手作りしている

2020年4月23日、川崎・聖マリアンナ医科大学病院のICUでコロナウイルス病(COVID-19)患者の治療にあたる医療従事者。(File photo/Reuters)
2020年4月23日、川崎・聖マリアンナ医科大学病院のICUでコロナウイルス病(COVID-19)患者の治療にあたる医療従事者。(File photo/Reuters)
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28 Apr 2020 06:04:52 GMT9
28 Apr 2020 06:04:52 GMT9

東京・聖路加国際病院のICU(集中治療室)のベッド8床のうち、7床をコロナウイルス重症患者が占める

500室規模の同病院で感染制御部門を管理する坂本史衣氏は、「8床のベッドをすべて使用してしまうと容態が急変した患者を受け入れられなくなるので、常に1床空けてあります」と語る。

またICUのこの1床は、一日のいつ救急車で到着するかわからないコロナウイルス患者のためにも空けておく必要があるのだと坂本氏は言う。

「当病院のICUは今、実質的にはコロナウイルス患者用になっています」と、彼女は言う。

日本で確認されたコロナウイルス患者数が12,000人を超える中、聖路加のような病院は、増加しつつある重症患者に対応するため限られたICUのベッド数を節約し、最前線の医療スタッフを保護するためにその場しのぎの防護具を即席で作って使用している。

一部の病院はCOVID-19患者の受け入れに消極的で、重症患者は受け入れ姿勢を表明している聖路加のような病院に移されるが、聖路加もすでにキャパオーバーとなっている。

聖路加は感染症指定医療機関であるため、政府の補助金を受けて感染患者を受け入れている。

日本は他の国のように当局が厳格なロックダウンを強制したり、外出自粛ガイドラインに従わない企業や個人に罰則を課したりする法的権限を持たないため、特に困難に直面している。

政府は今月、全国的に非常事態を宣言したが、ほとんどの病院に対して患者の受け入れを強制することはできない。

また日本は、世界の多くの国と同様、防護具や医療機器の争奪戦も余儀なくされている。

一部の医師その他の専門家は、中央政府および一部の地方自治体は病院や医療スタッフに十分な財政援助および防護具の提供に失敗したと言う。

「(患者を受け入れさせるための)法的手段はありませんが、あったとしても、感染症対応の準備ができていない病院にそのような要求をすべきではないと思います」と、東京都庁でコロナウイルス対応を担う幹部職員の杉下由行は語る。

東京都は今月、病院や保健所が自発的に受け入れたコロナウイルス患者数を更新できるオンラインデータベースを開設したと杉下氏は言う。

日本ではこれまでに370人以上がCOVID-19で死亡し、そのうち100人が東京で死亡している。

医療上および財政上リスク
コロナウイルス患者の受け入れは、普段感染症治療の準備を整えていない施設にとって、医療上および財政上の両方の面で重大なリスクを伴う。

ロイターによる国内ニュース報道の分析や医療機関の発表、東京に拠点を置く医療ガバナンス研究所による独自の研究によると、約1,500人の患者および医療従事者が医療施設内でCOVID-19に感染したか、それらの機関で働いたり滞在したりする間に陽性反応を示している。

このようなアウトブレイクにより、病院は緊急でない手術や外来診療等の医療サービスを停止するようになっている。

「現時点では、私立病院や一部の公立病院は危篤状態にあるコロナ患者を拒絶することができます」と、西日本の大病院で働くICU医師は語った。医師はメディアに対して話すことが許可されなかったため、名前を出すことを拒否した。

コロナウイルス患者の治療に当たるこの医師は、多くの病院が収入を日常的な手術や短期入院に頼っており、それらのサービスを停止する余裕がないと語った。

全国のICUで1万人以上の会員が働いている日本集中治療医学会では、コロナウイルスの重症患者数がこの2週間で倍増したと推定している。

同学会によると、日本はドイツやイタリア等の他の多くの国に比べて10万人当たりのICUベッド数が少ない。他の病院のベッドを重症患者のベッドに変換することは可能だが、それらの病棟のスタッフは即刻補強が必要だと言う。

このICU医師によると、これまでに見られた最悪の例の一つでは、80代のコロナウイルス患者が近くの病院から繰り返し追い返された後、居住地から350キロ(220マイル)以上離れた東京の病院に搬送されなければならなかったと語った。

その後、男性は家族と遠く離れた東京で亡くなった。

「たとえ患者を受け入れてもよいと自分たちの中で決めたとしても、病院長に報告すればはねつけられる可能性があるのです」と医師は言い、COVID-19患者を受け入れるほとんどの病院は財政的損失の中でそのようにしていたと付け加えた。

東京都によると、3月に東京で救急患者が5カ所の病院に拒絶されたか、救急外来を見つけるのに20分以上かかったケースは931件となり、1年前に比べ3分の1増加した。

日本の厚生労働省は医療関係者の懸念に対して、医師や看護師の病院派遣に関する費用を負担するなど、医療施設への支援に1,490億円(13億8,000万ドル)の追加予算を割り当てている。

厚生労働省の特命コロナウイルスタスクフォースの職員である島田志帆は、この追加予算は看護師や医師のためのホテルのベッド確保や、機器の購入に使用されると言う。

しかし、コロナウイルス患者を受け入れてから通常の機能の一部のシャットダウンを余儀なくされている病院を支援することを目的とした措置はないと彼女は言う。

厚労省の役人はむしろ、病院がICUでのコロナウイルス患者の治療に対して受け取る一日当たりの料金を倍増することを挙げ、これは病院の支援にかなり役立つはずだと語った。

愛知県の大村秀章知事はロイターとのインタビューで、中央政府は病院を支援するためにもっと多くのことをしなければならないと述べた。知事は今月、1月下旬からコロナウイルス患者を受け入れた病院に対し、患者1人あたり100~400万円の補助金を提供すると発表した。

「入院費用を倍にするという政府の計画は十分には程遠いレベルだ」と大村は述べた。

防護具不足
日本の厚生労働省は世界各国の保健省と同様に、必要な器具を病院に供給するために奔走している。
当局は毎月1億枚のサージカルマスクを病院に供給すべく努めているとしているが、これは日本医師会が表明している必要枚数の4分の1だ。

東京の東側の県のリウマチ学の専門家の萩野昇氏は政府を待つことにうんざりし、他の3人と協力してマスクを探し出し、個人や企業からの寄付を募ってきた。

「厚労省の役人は動きが遅すぎます」と萩野氏は述べたが、コロナウイルスのアウトブレイクの中で問題を根本的に解決する時間はなかったとも付け加えた。

他にも、3Dプリンタを使ったりクリアファイルをテープで貼り合わせたりしてフェイスシールドが作れるか試している病院もある。
厚労省は物資の不足を認めている。

「サージカルマスクに比べ、N95はさらに不足していると聞いています」と、物資の調達を担当する厚生労働省職員の千田崇史は言う。医療従事者を伝染から守るために不可欠な業務用N95マスクの供給についてはまだどんな数字も提示できないと千田氏は語る。

防護ガウンについては、現在の需要と供給の間には「300万枚の差」があると氏は述べた。

聖路加病院で坂本は、スタッフが長い戦いに向けて準備していると語った。

「病院は医療スタッフの犠牲と善意に頼るだけでは生き残れません」と、彼女は述べた。

ロイター

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