

東京:開催が1年以上先に延期され先行きが不透明ななか、2020年東京五輪記念グッズを取り扱う数10店舗にはほとんど客の姿が見られず、何千もの記念グッズが陳列されたままになっている。
東京オリンピック組織委員会も気をもんでいる。委員会は、公式五輪グッズの箸、傘、それからおよそ200ドルもする大型ぬいぐるみを含む、5,500種の「ライセンス」商品から1億ドルの収入を上げたいと考えている。
感染症の流行と先行きの不透明さのため、五輪グッズショップでは閑古鳥が鳴いている。そして、1つの大きな疑問が不安を大きくしている。「延期された大会は本当に開催されるのか」である。
東京五輪組織委員会の森喜朗会長は、2021年7月23日に開催できなければ、延期ではなく中止すると述べている。
妙なことに、大会の中止が五輪グッズのセールスを後押しすることになるかもしれない。パンデミックのために1度ならず2度までも中止された2020年五輪の記念品への需要が高まるからだ。反対に開催された場合も、それまで押さえつけられていた需要の反動で、セールスが押し上げられるかもしれない。
オリンピックは世界大戦中の1916年、1940年、1944年に中止されたが、感染症で中止されたことはない。
南カリフォルニア大学でスポーツビジネスを教えているDavid Carter氏は、「2021年に東京五輪が開催されなかったら、製造済みの2020年大会グッズの価値が上がるし、小売店から今ある商品が引き上げられたりしたら、さらに急激に上がるだろう」とAP通信に対しEメールで述べた。「核心となる問題は、それらの公式・非公式の収益を得るのは誰か?」だ。
「2020年東京五輪グッズは、多くの人たちにとって、2020年が世界にとって持つ意味のすべてを象徴するレアな商品になります。世界中の人たちの話のタネです」とCarter氏は付け加える。
組織委員会と国際オリンピック委員会が大会を開催すると述べる一方で、多くの科学者や保健の専門家はワクチンが開発されない限り先に進めないと反論している。
開催される場合、最初に選手たちを隔離してから観客を入場させるのか? 200以上の国と地域から集まった11,000人もの選手を東京湾近くの選手村に詰め込むのはいかがなものか? 選手はどうしたら安全に練習できるか? 出場競技に参加するために、どのように海外を移動したらよいのか?
オリンピックを無観客で開催したら、合わせて10億ドルの収入を地域の開催者にもたらすことが期待されている、チケットや関連グッズの販売から見込まれる売り上げはどうなるだろう。すでに入場券を購入したファンは返金を受けられるのだろうか(組織委員会によると780万枚の入場券が用意されていたという)?
東京五輪組織委員会によると、4月末時点で、日本中でおよそ90店舗の公式グッズショップが営業していたという。オンラインショップは確実に残るだろうが、14か月半後に大会が開催されるまで、すべての店舗が営業しているかどうかは分からない。
「十分な販売量が確保されているなら、決定が明確になるまで(部分的でも)開いておく方が賢明かもしれないと」とCarter氏はいう。「結局のところ、共有されている不確実性を考えた場合、それはまだ得ることのできる重要な収入源です」
東京五輪組織委員会とIOCは3月に大会を2021年まで延期した際に、2020年のブランディング要素を維持することに決めた。これにより何トンもの2020年五輪グッズの処分が回避された。そうしたグッズは2020年大会のディスコン商品の二次市場を形成していたかもしれないし、 組織委員会の収入を削るような「パチ物」市場の形成を促していたかもしれないのだ。
スポンサー企業は、ここ数年間看板やタクシー、地下鉄など、東京のあちこちで見かけるようになった、2020年大会のブランディング要素を維持することを支持した。地域のスポンサー契約は、過去のどの大会と比べても2倍以上の額となる33億ドルの収入を東京組織委員会にもたらす。
全体として日本が大会の開催に支出した額は公式には126億ドルだが、政府の監査報告ではその2倍の額となっている。そのうち56億ドルを除く全部が税金だ。
これとは別に、IOCにはインテルやトヨタなど14社の長期スポンサーが付いていて、五輪ロゴを表示するために、各社が約1億ドルを支払うことが報じられている。
東京のショッピングモールのあるオリンピックショップには、Tシャツや帽子、ぬいぐるみのマスコットで埋め尽くされた棚が何10も並んでいたが、この週末には客の姿はほとんどなかった。オンラインショップを訪問する人たちには、急いで買う理由がなかった。
「オリンピック記念グッズを買うつもりはありません」とMisako Satoさんはいう。「でも、大会が中止になったら、何かを買おうと思うかもしれません。話のタネにするため、興味本位です」
友人のYasuko Kitadaiさんは「日本人は、イベントの開催前は買うのを直前まで待つことが多いので、今年開催されるとしても多分買うのはまだ早すぎます」と付け加えた。
2020年大会のブランディング要素を維持することは、経費を抑える正しいやり方だと、二人とも同意した。それは、与えられた名前の「大輔」だけで特定されたいという買い物客の心情でもある。
「オリンピックが閉幕されるまでにきっと何か買います」と述べた。「でもまだ早すぎます」
それまでまだ400日以上ある。
AP