
65歳以上の高齢者に対する新型コロナウイルスのワクチン接種が12日から始まる。政府は感染封じ込めの「切り札」と位置付け、接種体制の整備に万全を期す。感染状況が「『第4波』に入りつつある」(尾身茂新型コロナ感染症対策分科会長)中、接種の「実動部隊」となる自治体側が円滑に作業を進められるかが焦点だ。
「希望する方は確実に打てる。慌てずにお願いしたい」。調整を担う河野太郎規制改革担当相は6日の記者会見で、一部自治体で高齢者向け接種の予約が始まったことを受け、冷静な対応を呼び掛けた。
対象となる高齢者は約3600万人。先に接種が始まった医療従事者(約480万人)の7倍以上だ。接種に使う米ファイザー社製ワクチンは1人2回の接種が必要となる。
政府は週内に都道府県に対し、第1弾として約9万8000回分を配布。順次、供給量を増やし、6月末までには全員が2回接種できる量のワクチンを配送する計画だ。自治体の接種作業は大型連休後に本格化する見通しだが、全国で194の自治体が大型連休中の接種を希望しているという。河野氏は会見で「しっかり供給できるようにしたい」と述べた。
ただ、接種会場の整理に当たる自治体スタッフや実際に注射を打つ医療従事者を確保できるかという不安もある。全国各地で感染者数が増加傾向にあり、医療提供体制が逼迫(ひっぱく)すれば、医療従事者が新型コロナの対応を優先せざるを得なくなるからだ。
政府が12日から導入する接種状況を管理する新システムへの懸念もある。「簡単だ。複雑な操作はいらない」。河野氏は6日、報道機関向けにタブレット端末で個人データを読み取る操作を実演して見せたが、現場の事務負担増となる可能性も指摘されている。