
東京でソフトウェア・プログラミングの仕事と育児を両立させているラショーン・トヨダ氏は、どうすれば新型コロナウイルスワクチンの接種を受けられるのか、日本語を話さない人たちの間ではますます混乱が広がっている様子をSNS上で目にした。
36歳の元英語教師の彼女は最近、パンデミックをきっかけとした転職活動として、コーディングの集中コースを修了したが、当局からの明確な案内が不足する中で、自分には不安を解消する手助けがきっと出来ると感じた。
「いつ、どのように、どこでワクチンを接種できるのか、日本語以外の言語で入手できる情報が全くありませんでした」と、10年前にアメリカのメリーランド州から東京に移り住んだトヨダ氏は語った。
「私は夫に『娘を見てて、何か作らないといけないの』と言いました」。
その数時間後、トヨダ氏は、データベース「ファインド・ア・ドック https://www.findadoc.jp」を立ち上げた。これは、優先接種対象の高齢者が接種をキャンセルしたことで新型コロナウイルスワクチンが余っているクリニックを、非日本語話者が見つけるための保健データベースだ。
6月13日に公開されたこのデータベースは、わずか2クリニックから、すぐに70近くのクリニックが19の言語で情報を提供するにまで成長した。
トヨダ氏のツイッター@theyokohamalifeには、サイトを通じて接種を受けた人たちの感謝の言葉や逸話で溢れており、同氏によると、同サイトは3万6000人以上が利用しているという。
このサイトの人気は、日本で、特に、オリンピック開幕まで1ヶ月を切っている東京で、ワクチン接種の展開が遅れていることを明確に示している。
ロイター通信の調査班によると、少なくとも1回の接種を受けた人は人口の23%に留まり、主要国の中でも最も低い水準となっている。
限られた供給量のワクチンを医療従事者や高齢者に優先接種して接種開始が遅れたことを受け、菅義偉首相は、今月末までに高齢者に、11月までにその他の全ての大人に対するワクチン接種を完了させると約束した。
また、政府は接種活動を加速化させるため、独自のシステムやセンターを設置して接種を管理する権限を自治体や企業に渡した。
これは、特に一般の人にとって、ワクチンを接種できるかどうかが、職場や住んでいる場所によって大きく差別化したということを意味する。
昨年、首都圏で緊急事態宣言が出た時に、非常勤で教えていた学校が休校になり、新しい技能を習得したトヨダ氏は、先週、自身のデータベース上のクリニックを通じて1回目の接種を予約した。
このサイトには幅広い支持が集まり、アルファベット社のグーグルや、メルカリ、アマゾンなどのより経験豊富なプログラマーがボランティアで機能を追加したり、セキュリティを向上させたりしている。
このような協力は、2011年の福島原発事故をきっかけとしたオンライン・コミュニティ活動に通じるものがある。当時も同じような公式情報の不足が見られていた。
「私たちは、政府が何でもやってくれるのが当然だと考えていますが、決してそんなことはありません」と、ボランティア団体セーフキャストを共同設立したピーテル・フランケン氏が語った。同団体は日本中の放射線測定値を収集することから活動を開始したが、それ以降、空気の質や生活の質に関するその他の要因の追跡にまで活動の幅を広げている。
「市民の行動で、穴は埋めることができるのです」。
ロイター通信