
東京都は30日、過度の疲労を理由に静養していた小池百合子知事が退院したと発表した。当面はテレワークで公務をこなしながら全快を目指すとしている。ただ、都議選は7月4日の投開票に向けて終盤に差し掛かっており、与野党は小池氏の動向が風向きを大きく変えかねないとみて神経をとがらせている。
「本当に良かった。大変なご苦労だったと思うので、今後も健康に十分ご留意いただきたい」。自民党の森山裕国対委員長は30日、記者団にこう語り、小池氏を気遣ってみせた。
だが、同党内では小池氏が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」の応援に回ることを警戒する声が上がる。自民党は2017年の前回都議選で、第1党となった都民ファの前に歴史的惨敗を喫した。今回は情勢調査で堅調とされるが、小池氏入院を受けて「同情票が都民ファに向かう」(二階派関係者)との見方が多いためだ。
実際、自民参院幹部は「小池氏は一番いいタイミングで選挙戦に出てくるのではないか」と懸念する。選対幹部も「街頭に立つかもしれない。何を考えているのか、不気味だ」と疑心暗鬼に陥っている。
前回は都民ファ、今回は自民と協力する公明党も同様だ。幹部は「入院でこんなに影響が出るとは思わなかった」と指摘。中堅は「最終盤で応援に行くと大変なことになる」と漏らした。
野党からも「小池氏が必死に訴えれば5議席くらいひっくり返りかねない」(立憲民主党幹部)との声が出ている。
一方、小池氏は都議選を静観するとみる向きも少なくない。自民党は昨年の都知事選で小池氏を実質支援した経緯があるためだ。同党の閣僚経験者は「都議選後の自民党との関係を考慮するのだろう」と予測した。
当の小池氏は、退院に合わせたコメントで都議選に触れ「改革を続け、伝統を守る皆さまにエールを送る」と記した。特定の政党を支援するかどうかは明らかにしなかったが、自民党内では改革は都民ファ、伝統は自民党を意味するとの見方も出ている。
ただ、都民ファのある候補は30日、小池氏から「都民がついています。がんばりましょう」と直筆の檄文(げきぶん)が届いたとツイッターに投稿し、「知事はこれからも都民ファと共に戦う」と訴えた。
時事通信