Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

フランクリースピーキング: サウジアラビアにとって米国はまだ重要か?

在ワシントンD.C.サウジアラビア大使館報道官のファハド・ナゼル氏にインタビューする『フランクリースピーキング』の司会、ケイティ・ジェンセン氏(提供)
在ワシントンD.C.サウジアラビア大使館報道官のファハド・ナゼル氏にインタビューする『フランクリースピーキング』の司会、ケイティ・ジェンセン氏(提供)
Short Url:
12 Jun 2023 03:06:50 GMT9
12 Jun 2023 03:06:50 GMT9
  • サウジアラビア大使館のファハド・ナゼル報道官は、両国関係は「長年にわたり強固な基盤の上にある」とし、憶測に反して「複数のレベルで強化、拡大、深化を続けている」と述べた
  • 先日の米ブリンケン国務長官による訪問の結果に関する疑問にも答えた。中国が仲介したイランとの国交正常化はワシントンの意に反するか。リヤドは既存の米国との関係と新規パートナーシップのバランスをどうとっているのか

アラブニュース

ドバイ:中東の地域政治は絶えず流動している。長年対立してきたサウジアラビアとイランの間で、今年3月、中国の仲介の下において和平交渉が行われたことで、このことは明白になった。この交渉によって中国がピースメーカーとしての地位を獲得し、中国とインドがサウジアラビアの石油輸入国リストに名を連ねる中、米国は依然として湾岸諸国にとって重要なパートナーなのだろうか。

在ワシントン・サウジアラビア大使館のファハド・ナゼル首席報道官は、懐疑的な見方にもかかわらず、両国の結びつきはかつてないほど強固だと言う。

「この関係はただ維持されてきただけでなく、長年にわたって拡大と深化を続けてきました」と主要な政策立案者とのインタビューを取り上げるアラブニュースのトーク番組『Frankly Speaking』でナゼル氏は司会者ケイティ・ジェンセン氏に話した。

また、ブリンケン米国務長官がサウジアラビアを訪問したことで、「関係の柱が強化されました(中略)関係に変化があったとすれば、それは良い方向への変化です。関係はより広く、深く、強くなりました」とナゼル氏は付け加えた。

在ワシントンD.C.サウジアラビア大使館のファハド・ナゼル報道官にインタビューする『Frankly Speaking』司会のケイティ・ジェンセン氏(提供)

「7月のバイデン大統領による訪問のように、これらの訪問によって、関係の柱である政治協力、安全保障協力、軍事協力、貿易などが強化されると同時に、多くの面で、関係はより拡大したものとして輪郭が描き直されました。その中には、サイバーセキュリティ、気候変動の影響緩和、食糧安全保障、さらには宇宙開発など、様々な新分野での協力も含まれています」

一部アナリストの間では、過去2年間のサウジと米国の関係は、主にバイデン政権の初期に取られた行動により、最近の歴史の中で最悪のものであったと評価されているが、ナゼル報道官は通説となっている「対立から和解へ」を唱えるナラティブに同意しない。

「関係は強固な基盤の上で続いてきたと考えています。この2年間をとってみても、我々の関係や協力、多方面での連携は維持されてきました」とナゼル報道官は述べ、米国と英国が定期的に行っている合同軍事演習、何千人ものサウジアラビア人が米国で高等教育を受けていること、そしてサウジ王国に何千人もの米国人が在住していることに言及した。

「どのような関係でも特定の政策について意見の相違があるのは当然だということを認識することが重要です。と同時に、サウジアラビアと米国に関してはとりわけ、政策において一致する範囲の方が相違点よりもはるかに広いという事実に変わりはありません」

両国関係の中でも、軍事や教育に関する交流よりもはるかに重点が置かれているのは通商関係だと報道官は話す。二国間の年間貿易額は推定400億ドルで、16万5千人の米国人雇用を支えているという。

3月には、サウジアラビアの大手航空会社であるリヤド航空とサウディアの2社が、ボーイング・ドリームライナー121機を自社機材として購入する370億ドル相当の契約を締結した。

サウディア一社をとっても、ボーイング社の航空機の世界最大級の顧客であり、米国に万単位の雇用を創出している。(AFPファイル写真)

「この契約は重要なものでした。両国にとって重要なことだったと考えています。サウジアラビアが「ビジョン2030」の一環として掲げている多くの目標のひとつは、サウジアラビアを世界的な物流ハブに、また世界的な観光地に変えることです。サウジアラビアには世界中の観光客や企業に対して提供できることが多くあると我々は信じています」とナゼル報道官は述べた。さらに、サウジ王国を訪れる外国人観光客の利便性向上に加え、この契約によって米国で推定11万人の雇用が創出されると付け加えた。

報道官によれば、近年、サウジ王国が急速に変貌を遂げたことで、批判派の急先鋒までもサウジ・米国間の関係を再評価するようになったという。米国上院議員のリンゼイ・グラハム氏は、これまでのサウジ批判から大きく舵を切り、4月にはサウジアラビアを訪問し、同国政府にボーイング社との契約締結について祝いの言葉を述べた。

「サウジアラビアを再び訪れる人々は、たとえ5、7年の間隔しか空けていなかろうと、そこで起きた劇的な変化に気づかざるを得ません。リヤド、あるいはジェッダの空港に降り立った途端に分かるものなのです」と報道官は話し、米国歴代政権が共和党・民主党のいずれも、サウジアラビアとの強い結びつきを維持してきたと付け加えた。

「グラハム議員にせよ、その他の議員にせよ、私はここ数年、多くの米国からの訪問者に同行する機会に恵まれてきました。同時に、ビジネス、市民団体、シンクタンクといった方面の有力者からも同様のフィードバックが得られました。人々はサウジアラビアの変化に非常に驚いています。雰囲気も変わりました。明らかに、よりオープンになりました。このような訪問を経て、非常にポジティブな印象を抱いて帰国したという人々の話を聞きますが、私は驚きません」

サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下と会談する米上院議員リンゼイ・グラハム氏(左)=2023年4月13日、ジェッダ。(SPA)

ナゼル報道官は、二国間関係は強固であり、今後も発展を続けると強調したが、一方で、中国が最近仲介したサウジアラビアとイランの和平合意に対して「米国への平手打ち」と批判する声もある。もっとも、ホワイトハウスはその後、この合意について説明を受けたと述べている。ナゼル報道官も、サウジアラビアが「パートナーである米国と多くの面で対話を続けている」と付け加えた。

「とりわけイランについて言えば、我々はかねてから、そして現時点より数年前から、イランが紛れもない我々の隣人であると言い続けてきました。イランには大きなポテンシャルがあります。イランには若い世代が多く、偉大な歴史と文化があります。そこで、過去2年間、さまざまな場所で繰り返し対談を行ってきました。それが実を結んで、3月には北京で合意が発表され、国交回復と大使館の再開が表明されたのです」

とはいえ、今回の合意は、イランとサウジアラビアとの間のすべての問題の終結を意味するものではないと言う。特に、イランの核開発計画に対するサウジアラビアの懸念について言えば尚更とのことだ。それでもなお、サウジとイランの和平合意によってもたらされうる安定は、サウジアラビア国内だけでなく、中東地域にもプラスの効果をもたらすことになると報道官は付け加えた。

「サウジ王国を観光地、物流拠点として発展させることや、気候変動対策など、これらの課題は様々な面でグローバルな性格を持つため、中東地域には平和と安定が必要になります。このように我々が進めていることから、我々は、イランをはじめとする地域的パートナーだけでなく、世界の他の地域のパートナーとの関わりを通じて、平和と繁栄が必要だと考えています」

米国とサウジアラビアの結びつきは、地域的問題で見解の相違があるにもかかわらず、ますます強まっており、その安定性と持続力を示している。一方で、最近アラブ連盟に再加盟し、一部のアラブ諸国との関係修復を進めているシリアとの関係正常化は、米国とサウジ王国の不一致点であった。

「我々の首脳陣は、現状維持は単純に持続不可能であるという正しい結論を下しました。したがって、シリアとシリア政府を無期限に孤立させようとする努力は、シリアの安定化に資さないということになりました。少なくとも人道支援の提供や配送を可能にするという点では間違いなく無益でした。国外への避難を余儀なくされている何百万人ものシリア人難民を本国に帰還させるという点でもまた然りです」

5月、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下は、ジェッダで開催されたアラブ連盟サミットの傍らで、シリアのバッシャール・アサド大統領と会談した。このような会議にシリアが参加するのは、シリア内戦が始まって以来初めてのことだ。米国国務省はこのような正常化に反発しており、アサド政権とアラブ諸国との外交の回復に反対している。

アラブ連盟サミットの傍ら、シリアのバッシャール・アサド大統領と会談するサウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下(左)=2023年5月19日、ジェッダ。(バンダル・アル・ジャルード/サウジアラビア王宮)

「我々が推進しているのは、シリアの独立と領土保全・統一が保たれ、難民が安全に故郷に帰れるような紛争の政治的解決です。また、切実に必要とされている人道支援がそれを最も必要としている人々に届くようにすることです」

中国がピースメーカーとしてのイメージを打ち出した一方で、サウジと米国にも平和の旗手として共に行動する用意があることは、両国の関係から見て取れる。ブリンケン長官はサウジ訪問前に、サウジとイスラエルの国交正常化において役割を果たしたいという自国の意向を表明している。

「イスラエル・パレスチナ間の紛争に対するサウジアラビアの立場は明確で、長年にわたり一貫しています。事実、2002年にベイルートで開催されたアラブ連盟サミットで、今は「アラブ平和イニシアチブ」の名で知られる中東和平提案を発表したのは、故アブドゥラー国王でした。イニシアチブでは、二国家解決に基づくパレスチナ人との公正で包括的な和平の見返りとして、イスラエルに全アラブ諸国との国交正常化を提案したものです」

報道官は「国交正常化の提案はまだテーブルの上にあります」と付け加えたものの、正常化を本格的に進めるためには、依然としてパレスチナ人の権利という中核的な問題は避けて通れない。

最近の米国とサウジアラビアの共同努力では、5月末にスーダンの紛争をめぐる停戦調停が成果をあげた。停戦は期限切れとなり、違反行為もあったものの、両国は調停者として、スーダン軍と準軍事組織RSFの間で停戦交渉が再開されるよう取り組んできた。

「サウジアラビアと米国は、スーダンの平和と安定を前進させ、回復させるために緊密に連携してきました。両国は対話の橋渡し役として、スーダンへの人道支援物資の輸送を可能にし、一定の緊張緩和を実現しました。なので、我々の取り組みは正しい方向に向かっていると信じています」

地域的政治の枠を(あるいは国際政治の領域すら)はるかに超えたところに、サウジと米国の協力がもたらす最後のフロンティアが待っている。先月下旬、アメリカのSpaceX社とAxiom Space社がアラブ諸国初の女性宇宙飛行士を宇宙に送り出したことで、両国は歴史的快挙を成し遂げた。サウジアラビア出身の宇宙飛行士ラヤナ・バルナウィ氏と同僚のアリ・アル・カルニ氏は、サウジアラビア人として初めて国際宇宙ステーションに滞在し、バルナウィ氏は複数の科学実験を実施した。

「それは、ある面では、これまでとは違う体験でした。サウジ王国全体にとってほとんど没入体験だったと言えます。というのも、二人の飛行士らは(中略)その体験の多くを王国の人々と共有することができたからです」と報道官は話す。

「我々にとって、大変喜ばしく、非常に誇らしい瞬間でした」

特に人気
オススメ

return to top