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コロナ禍で悪化した肝臓がん治療に明るい兆し

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18 Nov 2021 01:11:52 GMT9
18 Nov 2021 01:11:52 GMT9

アラブニュース・ジャパン

細川 環

東京:世界がポストコロナに移行する中、日本の医療機関は治療が難しいとされるがんに立ち向かうべく、最新医療を持って日々研鑽している。

コロナ禍で病院の健診から足が遠のいていた患者さんも、戻ってみると手遅れになっていたというケースは珍しくない。手術可能だった悪性腫瘍がもはや切除不能な状態にまでに育ってしまった場合、予後が良くないとされる肝臓がんの患者さんが生存するためには、どのような選択が残されているのだろうか?

肝臓のがんは大きく2つの種類に分けられる。転移性のがん(主に大腸がんの肝転移)と原発性のがん(主に肝細胞がん)である。前者は、他の臓器に発生したがんが肝臓に転移したものであり、元々の肝機能に問題のないケースが多く、抗がん剤などの副作用にも耐えられるため、進行している症例でも抗がん剤治療で腫瘍を切除可能な状態にまで小さくすることが可能なケースが多いとされる。しかし、肝細胞がんの患者さんの場合、肝臓が既に肝硬変や慢性肝炎などに侵されていることが多く、抗がん剤などの治療への耐性が弱いこと、また肝細胞がんは一般的な抗がん剤が効きにくいがんであるため、進行してしまった症例では手術をはじめとする根治的治療の対象とならず、そのまま亡くなってしまうケースが多いと言われている。

肝細胞がんの根治を目指した場合、最も有効と考えられる治療は手術であるが、この選択が叶わない場合、どのような治療法が残されているか?近年、抗がん剤が効かないとされてきた肝細胞がんに対しても、がんの成長メカニズムを阻害する分子標的薬、最近話題の免疫チェックポイント阻害薬など新しい薬剤が次々に登場し、肝細胞がんの治療を取り巻く環境には大きな変化が起こっている。現在、様々ながんの専門領域において、あらゆる治療法を組み合わせた「集学的治療」によって、切除困難な進行がんの症例を、手術可能な状況へ持っていき、予後の延長を企図する「コンバージョン」という考え方が議論されている。肝細胞がんの患者さんの場合も、病気の性質上、薬物治療の劇的な効果を期待することはまだ難しいとされているか、進行した症例でも、新規薬剤を用いた治療により根治を企図した切除へコンバージョンできる症例が少なからず報告されるようになっている。

東京都港区にある虎の門病院消化器外科医長の進藤潤一先生は言う、

「切除など絶対に不可能と考えられた症例が、薬物治療後に根治切除に至るケースなど、私が医者になった20年前には考えられなかった事例も出始めています。近年の肝細胞がんの治療オプションの多岐化、そして生存率の改善には目をみはるものがあります。」

ただ、肝細胞がんは肝硬変などによって傷んだ肝臓が新たながんを発生させる温床となっているため、治療を行っても再発が多く、真の意味でのがんの根治が難しいと言われている。今話題のゲノム医療も、特定の遺伝子が関与することで発生するがんや効果を発揮しやすい薬剤や治療法をIT企業が構築したAIのプラットフォームを利用して提供し、適切な治療選択につなげようという一見画期的な治療法であるが、肝細胞がんにおいてはそうしたゲノム医療の応用は進んでいるのだろうか?

「肝細胞がんに対してどのような治療が適切であるかは、その時その時の患者さんの状況、腫瘍の状態などによって異なり、手術をしたらすべて終わりではありません。将来的な再発に対する治療選択肢を失うことがないよう、次の治療にどうつなげていくか、病気をどのように制御し、予後の延長を企図していくか。肝細胞がんの患者さんで長期生存を達成するためには、そうした大きな時間軸での治療の考え方が重要になります。ゲノム医療で実際に遺伝子結果を治療に応用できているのは、一部のがんにおいてであり、肝細胞がんの場合は遺伝子情報を得られたとしても有効な治療の選択につなげるまでのレベルにはまだないというのが実情です」と進藤医師は言う。

肝臓がんにおいてAIが専門医の診療をサポートするまでにはまだ年月がかかりそうだが、肝臓がんの治療は着実な進歩を遂げている。有効性の高い新規薬剤が次々に登場し、進藤医師が言うように進行がんの症例でも予後の延長を期待できるケースが増えてきているとされている。コロナ禍はがん患者さんの診療にも大きな影響を与えた。しかし、その中でも医療は着実に進歩し、難治がんの一つである肝臓がんの分野においても明るいニュースが出始めていることは、肝臓がんの患者さんにとって光明と言えるであろう。

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