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シナゴーグ襲撃で7人死亡、ヨルダン川西岸地区で暴力が連鎖

入植者地区で発生した銃撃事件の現場で犠牲者の救助にあたるイスラエルの救急隊員たち。2023年1月27日、イスラエルに併合されている東エルサレム。(AFP)
入植者地区で発生した銃撃事件の現場で犠牲者の救助にあたるイスラエルの救急隊員たち。2023年1月27日、イスラエルに併合されている東エルサレム。(AFP)
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29 Jan 2023 12:01:09 GMT9
29 Jan 2023 12:01:09 GMT9
  • 銃撃犯は東エルサレムに住む21歳のパレスチナ人で、単独で犯行に及んだものとみられる
  • ナブルスでイスラエル人入植者がパレスチナ人3人を射殺するなどヨルダン川西岸地区で暴力がエスカレートする中、今回の襲撃が起こった

エルサレム:27日夜、東エルサレムのシナゴーグの外で1人のパレスチナ人が銃を乱射し、70歳の女性を含む7人を殺害し3人を負傷させた後、警察によって射殺された。当局が発表した。イスラエル人に対する襲撃としては近年で最も多くの犠牲者を出した事件であり、さらなる流血の可能性が高まっている。

ヨルダン川西岸地区でイスラエル軍が急襲を実施し9人を殺害した翌日、住民らがユダヤ教の安息日の祈りのために集まっていた際に今回の襲撃は起こった。襲撃をきっかけにヨルダン川西岸地区とガザ地区ではお祭り騒ぎが始まり、人々が空中に発砲したりクラクションを鳴らしたり菓子を配るなどした。

ガザ地区からロケット弾が相次いで発射されイスラエルが報復空爆を実施するなど、ここのところ暴力が爆発的に高まっており、パレスチナ人による暴力に対する強硬策を推進する超国家主義者が優勢なイスラエルの新政権は早くも難題を突きつけられている。こういった状況は、29日に行われる米国のアントニー・ブリンケン国務長官の地域への訪問にも影を落としている。

ベンヤミン・ネタニヤフ首相はイスラエルの国家警察本部で記者団に対し、治安評価を実施して「即時の対応」を決定したことを明らかにしたうえで、安息日明けの28日夜に安全保障内閣を招集してさらなる対応について協議すると述べた。

襲撃現場を訪れたイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相(中央)。2023年1月27日、イスラエルに併合されている東エルサレムの入植者地区。(Ahmad Gharabli/AFP)

ネタニヤフ首相は詳細を明らかにしなかったが、イスラエルは「決意と冷静さ」を持って行動するとしたうえで、私的制裁を加えようなどと考えないよう国民に呼びかけた。

ホワイトハウスのカリーヌ・ジャン=ピエール報道官は、米国は今回の襲撃を非難するとしたうえで、「命が失われたことにショックを受け悲しんでいる」と述べ、国際ホロコースト記念日に襲撃が起きたことを指摘した。

米当局によると、27日にジョー・バイデン大統領はネタニヤフ首相と電話会談し、米国はイスラエルの政府と国民に対して支援を提供すると伝えたうえで、今回の銃撃事件は「文明社会に対する攻撃」だと述べた。また、イスラエルの安全に対する米国の揺るぎない責務を強調したと、ホワイトハウスは伝えている。

イスラエル警察によると、銃撃事件が発生したのはユダヤ教超正統派の住民が多いネヴェ・ヤアコフ地区で、銃撃犯は自動車で逃亡した。警察が犯人を追跡し、銃撃戦の末に射殺したという。

エルサレム警察のドロン・トゥルジェマン署長は、銃撃犯のほか7人が死亡し3人が負傷したことを正式に発表した。

警察は、銃撃犯が東エルサレムに住む21歳の人物であると特定した。単独で犯行に及んだものとみられる。トゥルジェマン署長は、犯人に協力した人物を見つけ出すために「積極的かつ多大な」努力を行うと約束した。

警察は、襲撃犯が使用したとされる拳銃の写真も公開した。

ヨアフ・ガラント国防相はイスラエル軍トップやその他の治安当局高官らと面会し、警察を支援しエルサレム周辺やヨルダン川西岸地区のユダヤ人入植地の警備を強化するよう指示した。

ガラント国防相は次のように述べた。「イスラエル国防当局はテロに対し断固として全力で対応するとともに、襲撃に関与したものを見つけ出す」

イスラエルの救護団体「マーゲン・ダビド公社(MADA)」によると、死亡したのは男性5人と女性2人で、そのうち数人は60歳以上だった。エルサレムのハダッサ病院によると、15歳の少年が手術を受けて回復に向かっているという。

外務省によると、今回の襲撃はイスラエル人に対するものとしては、8人の死者を出した2008年のエルサレムのユダヤ教神学校における銃撃事件以降で最も多くの犠牲者を出した事件となった。事件が起こった場所とタイミングを考えると、イスラエルからの強硬な反応が引き起こされる恐れがある。

26日深夜から27日未明にかけて、ガザ地区の過激派組織がイスラエル南部に向けてロケット弾を相次いで発射したが、全て撃墜されるか空き地に落下した。イスラエルはガザ地区の標的に対する空爆で応えた。死傷者は報告されておらず、27日に銃撃事件が発生するまでは平穏が訪れたかに見えた。

現時点では犯行声明は出ていない。ガザ地区を支配する過激派組織ハマスのハゼム・カセム報道官は、今回の襲撃は26日に実施され多数の死者を出した急襲に対する「報復であり当然の反応」だと述べた。

ガザ地区内のいくつかの場所では、パレスチナ人数十人が自発的に集まってエルサレムでの襲撃を祝うデモを行った。デザート店から菓子を大きなトレーに載せて持ち出して配る人もいた。

ガザ市の中心街では、襲撃を祝う銃声、車のクラクションの音、モスクの拡声器からの「神は偉大なり!」という掛け声などが鳴り響いた。ヨルダン川西岸地区の多くの町ではパレスチナ人たちが花火を打ち上げた。

今回の襲撃は、26日のジェニン急襲を受け既に高まっていた緊張をエスカレートさせた。ジェニンでは少なくとも7人の過激派と61歳の女性を含む9人が死亡し、ヨルダン川西岸地区における単一の事件としては過去20年で最も多くの犠牲者を出した事件となった。同日にはエルサレム近郊でも別の戦闘が発生しパレスチナ人1人が殺害された。

27日には、前日に殺害された人々の最後の一人が埋葬された際に、怒ったパレスチナ人らが行進した。

22歳のパレスチナ人の葬儀が行われた後のエルサレム北部やヨルダン川西岸地区の別の場所でイスラエル軍とパレスチナ人デモ隊の小競り合いが発生したが、この日の大半の時間はエルサレムでもガザ地区でも平穏が訪れていた。

その平穏を突如として破ったのが東エルサレムで起こった銃撃事件だった。野党党首のヤイール・ラピード前首相は「恐ろしく痛ましい」事件だと述べた。

ネヴェ・ヤアコフ地区は宗教的なユダヤ人入植地であり、イスラエル人は自国の首都の地区であると考えている。イスラエルはエルサレム全域が分割できない自国の首都であると主張しているが、パレスチナ人は東エルサレムを自分たちの将来の国家の首都にしたいと考えている。

現状を受け、ブリンケン国務長官の訪問では緊張緩和に大きな重点が置かれるものとみられる。紛争の根本にある原因、イスラエルの新しい極右政権のアジェンダ、急襲に対する報復としてイスラエルとの治安協力を停止するというパレスチナ自治政府による決定などが議題となる可能性が高い。

ホワイトハウス国家安全保障会議のジョン・カービー戦略広報調整官は、バイデン政権はこの数日間イスラエルとパレスチナの指導者らと緊密に連絡を取っているとしたうえで、「今緊急に必要とされているのは、全当事者が、民間人の命がさらに失われることを防ぐためにエスカレーションを緩和するとともに、ヨルダン川西岸地区における治安状況の改善に協力して取り組むことだ」と強調した。

ハマスは2007年にガザ地区の実権を競合勢力から奪って以来、イスラエルとの間で4度の戦争と数回の小規模な衝突を起こしている。

パレスチナ人による攻撃が相次いだことを受けてイスラエルが昨年春にヨルダン川西岸地区における急襲作戦を強化して以来、緊張が高まっている。

イスラエルを代表する人権団体「ベツェレム」によると、ヨルダン川西岸地区および東エルサレムで150人近いパレスチナ人が殺害された2022年は、これらの領土における暴力による死者が2004年以降で最も多い年となった。昨年は、パレスチナ人によるイスラエル人に対する攻撃で30人が死亡した。

AP通信の集計によると、今年に入って30人のパレスチナ人が殺害されている。

イスラエルは、殺害されたパレスチナ人の大半は過激派だったとしている。しかし、侵入に抗議した若者や衝突に関与していなかった人々も殺害されている。

イスラエルは、急襲の目的は過激派ネットワークの解体と攻撃の阻止だとしている。一方、イスラエルはヨルダン川西岸地区を55年間にわたって延々と占領している現状をさらに固めようとしているというのがパレスチナ側の言い分だ。イスラエルは1967年の中東戦争の際にヨルダン川西岸地区、東エルサレム、ガザ地区を占領した。

AP

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