
ウクライナに侵攻したロシアへの制裁をめぐり、政府は選択肢の一つである同国航空機の日本領空の通過禁止に慎重だ。ロシアが対抗して日本機のロシア上空飛行を拒否すれば、欧州直行便に多大な影響が出るためだ。先に通過禁止措置を発動し、対抗措置を受けた欧州各国に比べ、「返り血の方が多い」(政府関係者)という。
1日の自民党外交部会などの会合では、飛行禁止を求める意見が出たが、政府側は態度を保留。林芳正外相は同日の記者会見で、「欧州とわが国との間にある地理的な状況の違いやそれが物流に与える影響等も考慮する必要がある」と述べた。
ロシアは飛行を規制した欧州各国の航空機を領空通過禁止にした。既に日本―欧州間の約20便が運航を停止している。
国土交通省幹部は、制裁としての効果について、「ロシアは日本に飛ばせなくなるだけだが、日本は欧州全域に飛ばせなくなる」と述べ、日本側の打撃が大きいと指摘する。他の制裁と異なり、「日本が『抜け穴』になる話でもない」(外務省幹部)ため、各国と協調する必要性が高くないことも慎重姿勢の背景にある。
一方、自民党内には、ロシア国内でプーチン大統領への不満を高める効果があるとして、「停戦交渉が始まった今を逃してはならない」(中堅議員)との声が出ている。
時事通信