
ロシアのプーチン大統領は31日、同国産天然ガスについて、外国の買い手は4月1日以降、ロシア通貨ルーブルで支払う必要があり、従わない場合はガス供給契約を停止するとの法令に署名した。大統領府が発表した。先進7カ国(G7)はルーブル建てでの支払いを拒否しており、日米欧に対するガス供給が停止される可能性が高まった。
西側諸国がウクライナ侵攻で制裁に踏み切ったことへの事実上の報復措置で、エネルギーの安定供給を脅かす事態に発展した。西側諸国はこれを受けて一斉に反発している。
欧州連合(EU)はガス消費量の約4割をロシアからの輸入に依存している。日本も液化天然ガス(LNG)の輸入の約8%をロシアに頼っており、供給が途絶すれば大きな影響を受けそうだ。
プーチン氏は演説で「ロシア産ガスを購入するためには、ロシアの銀行にルーブル建ての口座を開設しなければならない」と表明し、「この口座を通した支払いがない場合、買い手側の義務の不履行と見なす。既存の契約は停止される」と宣言した。「支払い通貨の変更は、金融・経済の主権強化の重要な一歩だ」とも述べた。
取引には国営天然ガス独占企業ガスプロム傘下の銀行に口座を開設する必要がある。既存のロシア産ガスの国際取引の契約はドル建てやユーロ建てとなっており、契約内容の一方的な変更となる。
G7はルーブル建てでの支払いを拒否することで一致している。ドイツのリントナー財務相は「われわれはユーロで支払い続ける」と強調。フランスのルメール経済・財務相は「契約では決済通貨が定められており、その通貨で決済されなければならない」と述べた。
岸田文雄首相は1日、日本の官民が出資するロシア・サハリン沖の石油・LNG開発事業「サハリン1」から撤退しない考えを表明した。首相は先に、三井物産と三菱商事が権益を持つ「サハリン2」についても撤退しない方針を明らかにしている。