
【北京時事】中国で多発している新型のコロナウイルスによる肺炎の患者数は300人を超え、「ヒトからヒトへの感染」が確認されたことで、帰省や旅行などで大勢の人が移動する24日からの春節(旧正月)連休中に、感染の拡大が避けられない見通しだ。ネット旅行代理店中国最大手・携程(シートリップ)がまとめた春節の海外旅行先ランキングでは日本が第1位だった。
中国国家衛生健康委員会は21日、新型肺炎の国内患者数が同日午前0時(日本時間同1時)までに291人に達したと発表した。武漢市を含む湖北省で72人増え、同省の累計患者は270人。ほかは北京市5人、上海市2人、広東省14人。同委は22日午前、肺炎対策について初めての記者会見を開く。
中国国営中央テレビによると、武漢市では新型肺炎で新たに2人が死亡し、死者は計6人となった。政府の発表後、各省が個別発表した新たな患者数は、浙江省、重慶市、北京市が各5人、上海市4人、広東省3人、天津市2人、河南、山東、四川3省が各1人で、これらを加えた中国本土の患者数は310人を超えた。21日には台湾でも1人の感染が確認された。
中国政府は20日、今回の肺炎を法定伝染病に指定し、管理を強化することを決めた。この根拠となったのが国の専門家チームの調査結果で、トップの鍾南山氏は中国メディアに、湖北省武漢市での医療従事者への感染などから「ヒトからヒトへの感染が証明された」と言明。世界保健機関(WHO)の西太平洋地域事務局も同様の見解を明らかにした。
専門家チームの別のメンバーは「武漢にはできるだけ行かず、武漢市民はできるだけ(市外に)出ない」よう提案した。これを受け、武漢市政府は21日、市外への団体旅行を禁止する一方、市内の医療機関に肺炎患者を受け入れるベッド2000床を確保したと発表した。
ただ、中国の春節は1年で最も人の移動が激しくなる時期。連休は24~30日の1週間だが、前後40日間で延べ30億人が移動すると予想されている。2002年11月に広東省で発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)は、情報が隠されたまま03年2月の春節を迎え、大流行につながった。
シートリップが先月末発表した査証サービス部門の集計によると、今年の春節の海外旅行先トップ10は、日本、シンガポール、マレーシア、タイ、韓国、オーストラリア、米国、ベトナム、ニュージーランド、英国の順。日本は昨年の春節と比べ51%も増加している。
JIJI Press