
米国大手が独占してきた手術支援ロボット市場で、国産機も含めた競争が本格化してきた。
手術ロボは人の手よりも精密に動き、患者の身体的な負担を抑えることが可能で、健康保険の適用範囲が年々拡大している。
メーカーの裾野が広がって競争による価格低下が進めば、一段の普及も期待できそうだ。
手術ロボは、体に数カ所の小さい穴を開け、柔軟に動く多関節構造の器具を挿入する。
医師が拡大立体画像を見ながら操作し、出血などのリスクや体の傷痕が小さい。
世界で圧倒的なシェアを握るのは、米インテュイティブサージカルの「ダビンチ」だ。日本では2009年に薬事承認され、がんを中心に29の手術が健康保険の対象となっている。国内で570台以上が稼働する。
同社は1月末、1カ所の穴で手術が完結する最新機種「ダビンチSP」を発売した。日本で手術ロボの普及余地は大きいとみており、「複数台目の導入を目指す病院への提供を検討したい」(日本法人の滝沢一浩社長)と意欲を示す。
川崎重工業と医療機器大手シスメックスが出資するメディカロイド(神戸市)は、米社の牙城に風穴を開けようと、20年に国産初の「hinotori(ヒノトリ)」を投入した。狭い手術室でも使いやすい設計や、医師の要望を迅速に反映する製品改良体制が強みだ。22年9月末時点で28施設が導入し、30年度には1000億円の売上高を目指す。
アイルランドの医療機器メーカー、メドトロニックも22年12月に「Hugo(ヒューゴ)」を発売。4本の腕が独立した構造で、症例に合わせて柔軟に配置でき、収納もしやすい。
手術ロボ導入には従来、億円単位の費用が必要で、医療現場から「価格競争の原理が働いていない」との不満が出ていた。
メディカロイドの浅野薫社長は「さまざまなロボが出て市場が活性化するのはいいことだ」と語る。普及は大病院が中心だったが、価格が下がれば地方の中小規模病院にも広がる可能性がある。
時事通信