岸田文雄首相に向けて木村隆二容疑者(24)が投げ込んだ爆発物について、専門家は飛散した破片などには拳銃弾に近い威力があり、爆発の方向によっては死者が出る可能性が高かったと指摘する。和歌山県警は殺人未遂容疑を視野に、殺傷能力などを慎重に調べている。
爆発物は金属製の筒状で、黒色火薬が詰められていたとみられる。約40メートル離れた場所で筒本体が見つかり、さらに約20メートル先のコンテナではふたとみられる物がめり込んだ穴が発見された。
銃器に詳しい評論家の高倉総一郎氏は、ライターで導火線に着火して爆発させる典型的なパイプ爆弾だったとみている。外側のひもに取り付けられたナットとみられる部品などを飛散させ、殺傷する仕組みだったと分析。飛距離などから、殺傷能力は「小口径の拳銃から放たれる弾丸と同程度の威力があった。最悪の場合、死者が出ていた」と話す。
投入から爆発までに時間がかかった理由は、「自宅から現場に着くまでに火薬が湿気を含み、燃焼が遅れた結果では」と推測した。
高倉氏は、火薬に着火され部品が飛散したとみられることから、爆発そのものは「成功だった」と分析する。一方、別の関係者は、金属筒が破裂せずに見つかった点に着目。「火薬量の不足や不十分な密閉のため、爆風が逃げたのではないか」と話し、事前に実験などをしていなかった可能性を指摘した。
時事通信