
日米両政府が日本国内で「実戦」を意識した共同訓練を強化している。陸上自衛隊と米陸軍による「オリエント・シールド23」が14日から北海道で開始。軍事行動を活発化させる中国やロシアをにらみ、有事が想定される地域で自衛隊と米軍の共同対処能力を示す。ただ、地元との調整が難航し、一部計画が変更を余儀なくされた。
共同訓練の強化は、昨年末に策定した安全保障関連3文書に明記された。木原稔防衛相は15日の記者会見で「米国の本地域へのコミットメントを維持・強化する上でも非常に重要だ」と強調した。
オリエント・シールドは計3500人が参加し、北海道を中心に23日まで実施する。ウクライナ軍にも供与されている米軍の高機動ロケット砲システムHIMARS(ハイマース)を投入。対艦・対空戦闘などの訓練を行う。
10月14~31日には陸自と米海兵隊の計6400人が参加する国内最大規模の「レゾリュート・ドラゴン23」を予定。3500人規模だった前回から拡大する。九州・沖縄各地で島しょ防衛や負傷者輸送の訓練を行う。
地元との調整が難航するケースも目立つ。オリエント・シールドでは、津軽海峡を太平洋に抜ける中ロ艦艇の動きを念頭に、北海道南部の静内対空射場(新ひだか町)で日米共同の地対空ミサイル射撃を計画したが、実射は陸自のみとなった。関係者によると、漁業者など地元側と折り合いが付かなかった。
レゾリュート・ドラゴンでは、陸自の輸送機オスプレイが沖縄で初飛行する。新石垣空港(石垣市)を使って負傷者輸送訓練を実施する予定。沖縄県は、オーストラリアで起きた米軍機の墜落事故を受け、同型機の飛行自粛を沖縄防衛局に求めている。陸自は自衛隊員を住民に見立てた国民保護の輸送訓練も検討しているが、14日には米軍機が同空港に緊急着陸。国民保護訓練の実施は固まっていない。
日米は1月の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)で「南西諸島を含む地域での共同訓練増加」に合意した。防衛省幹部は「気候や地形など実地で行うことは重要だ」としつつ、「住民感情などもあり、一直線に訓練拡大とはいかない」と語った。
◇日米共同訓練の主な内容
【オリエント・シールド23】
〔期間〕 9月14~23日
〔参加者〕 陸上自衛隊2300人、米陸軍1200人
〔開催地〕 北海道、鹿児島、沖縄
〔訓練概要〕対艦・対空戦闘、兵たんなど
【レゾリュート・ドラゴン23】
〔期間〕 10月14~31日
〔参加者〕 陸自5000人、米海兵隊1400人
〔開催地〕 北海道、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄
〔訓練概要〕対艦・対空・対着上陸戦闘、兵たん・衛生など
時事通信