
ラバト:モロッコは、新興の「グリーン水素」分野で北アフリカのトッププレイヤーになるという野心的な計画を表明しており、このクリーン燃焼燃料を欧州に輸出する計画を掲げている。
水素は、地球温暖化を減速させるための取り組みにおいて、化石燃料からの段階的脱却と大気中への二酸化炭素排出量削減に貢献できるクリーンなエネルギー源であると見られている。
既に大きな太陽光発電所を稼働させているモロッコも、自国の大規模な肥料部門にグリーン水素(化石燃料を燃焼させることなく製造される水素)を活用したいと考えている。
経済省によると、約150万エーカーの国有地(クウェートとほぼ同じ面積)がグリーン水素プラントとアンモニアプラントのために確保してある。
ムハンマド6世国王は、「l’Offre Maroc(モロッコの提案)」と呼ばれるグリーン水素国家計画を歓迎し、その「迅速かつ質的な実施」を求めている。
国王は震災前の7月に、モロッコは「この有望な分野で外国人投資家に支援されているプロジェクト」を活用しなければならないと述べた。
国内メディアは、オーストラリア、イギリス、フランス、ドイツ、インドの企業による投資計画を報じている。
水素は、水に強い電流を流すことで取り出すことができる。
この水素と酸素が分離するプロセスは電気分解と呼ばれる。
電気分解にクリーンエネルギー(太陽光や風力など)由来の電力が使用される場合、製造される水素は「グリーン水素」と呼ばれる。水素自体も燃焼時に二酸化炭素を排出しない。
ただ、問題がある。水素は爆発性が高く、保管や輸送が難しいのだ。そのため、水素燃料電池自動車はリチウムイオン電池を用いた電気自動車との競争において遅れをとっている。
しかし専門家によると、エネルギーを大量に消費するが電化が難しい鉄鋼、セメント、化学などの産業の脱炭素化においても、グリーン水素は大きな役割を果たし得る。
例えば、高炉にグリーン水素を活用することで「グリーン鉄鋼」を製造できる可能性がある。
また、水素はアンモニアに変換することで、エネルギーを貯蔵することができ、合成肥料の主原料としても利用できる。モロッコは既に世界の肥料市場における主要プレイヤーとなっているが、それは主に莫大に埋蔵されているリン鉱石のおかげである。
ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけとした肥料不足により肥料価格が1トンあたり1000ユーロ(1060ドル)に高騰したことで、モロッコは利益を上げた。
モロッコの国営リン鉱石公社は、グリーン水素から年間100万トンの「グリーンアンモニア」を早急に製造できるようにし、2032年までに生産量を3倍にする計画を発表している。
アナリストらは、モロッコがその野心的なグリーン肥料計画を実現するまでの道のりはまだ長いと注意を促している。
モロッコの研究機関「IRESEN」のサミール・ラチディ所長は、この分野は「萌芽的段階にあり、大規模な世界的プロジェクトが日の目を見るのは3〜5年後になるだろう」だと指摘する。
モロッコの優位性は、過去15年間に既にクリーンエネルギーに多額の投資をしてきたことにある。
発電電力の38%が太陽光や風力などのクリーンエネルギー由来であり、2030年までに52%に達することが目標とされている。
現時点では、石炭を使用して製造される「ブラウン水素」(製造過程における二酸化炭素排出量が非常に多い)や、天然ガスから製造される「グレー水素」と比較すると、グリーン水素は高価だ。
経済・社会・環境評議会のアフメド・レダ・チャミ議長は週刊紙ラ・ヴィ・エコに対し、グリーン水素の製造費用を1kgあたり1~2ドル以下に抑えることが目標だと語った。
AFP