
ドバイ/ワシントン:イスラエルは、ガザ地区への絶え間ない攻撃でハマスの壊滅を誓っているが、その着地点は見えない。たとえ戦場での勝利を収めたとしても、荒廃したパレスチナの飛び地をどのように統治するかの明確な計画は明らかになっていない。
「鉄の剣」作戦と名付けられたこの軍事作戦は、イスラエルが過去にガザで行ったことのないような、他に類を見ないほど激しいものなるだろうと、紛争に詳しい地域および欧米の(機密事項のため名前を伏せた)当局者8人は語っている。
10月7日にハマスがイスラエル南部を襲撃し、民間人を中心に約1400人が死亡した後、イスラエルは過去最高となる36万人の予備兵を招集し、この小さな飛び地を連日砲撃している。
米国と中東の指導者たちの間で行われた協議に詳しい3人の地域関係者によれば、イスラエルの当面の戦略は、多くの民間人を犠牲にしてでもガザのインフラを破壊し、この飛び地の住民をエジプト国境に向かわせ、ハマスが作戦を遂行するために建設した迷路のような地下トンネルを爆破して、ハマスを追い詰めることだという。
イスラエル政府関係者は、戦後の未来がどのようなものになるのか、明確な考えは持っていないと述べている。
ジョー・バイデン米大統領の側近の中には、イスラエルはハマスに永続的なダメージを与える効果的な計画は練っているのかもしれないが、出口戦略はまだ立てていないと懸念している者もいると、この問題に詳しいワシントンの情報筋は語った。
この1週間、アントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官がイスラエルを訪問し、ガザの戦後計画に焦点を当てる必要性を強調した、と同筋は付け加えた。
2006年以来ハマスに支配され、230万人が住むこの飛び地の将来について、イスラエルが明確な計画を打ち出していないことに、アラブ政府高官も懸念を訴えている。
「イスラエルはガザの最終的な解決策を持っていない。彼らの戦略は、何千もの爆弾を投下し、すべてを破壊してガザに侵入することだ。イスラエルは、ガザに対する最終戦略を持ち合わせていない」
イスラエル軍の地上侵攻はまだ始まっていないが、ガザ当局によれば、空爆によってすでに3500人のパレスチナ人が死亡、その約3分の1は子どもたちだという。これはハマスとイスラエルとの間で起きた、以前の紛争における死者数を上回る。
18日にイスラエルを訪問したバイデン氏は、ハマスに対して正義を果たす必要があるとイスラエル国民に語ったが、9・11のニューヨーク同時多発テロの後、米国は過ちを犯したと警告した。
「パレスチナ人の大多数はハマスではない」と彼は述べた。「ハマスは、パレスチナ人を代表しているわけではない」
カーネギー国際平和財団の中東専門家であるアーロン・デビッド・ミラー氏は、バイデン氏の訪問は、イスラエルの指導者であるベンヤミン・ネタニヤフ首相がガザ侵攻を実行する前に、均衡性を保った武力の行使やガザに関する長期的な計画などの問題を熟考するよう圧力をかける機会になっただろうと述べた。
「トンネルの街」
ネタニヤフ首相を含むイスラエル政府高官は、イスラエルの75年にわたる歴史の中で最も死者が出た今回の攻撃への報復として、ハマスを壊滅させると述べている。
その後に何が起こるかは、今のところ不明だ。
イスラエル国家安全保障会議のツァヒ・ハネグビ議長は17日、記者団に対し、「我々はもちろんこの件について考え、対処している。これには国家安全保障会議、軍、その他を含めた最終的な状況についての評価が含まれる」と語った。「この事態がどのようなものになるか、正確にはわからない」
「しかし、我々は『何が起こらないか』については確信している」と、彼はイスラエルによるハマス壊滅宣言を指して語った。
しかし、これはそう簡単なことではないだろう。
「これは、ベトコンのトンネルが子供の遊びのように見えるような、地下トンネルの都市だ」と、先の地域情報筋は、ベトナムで米軍を挑発した共産ゲリラ部隊を指して言った。「イスラエルは戦車や爆撃でハマスを壊滅させることはできない」
地域の軍事専門家2人がロイターに語ったところによると、ハマスの武装組織である「エゼディン・アル・カッサム旅団」が地上侵攻の対応のために動員され、イスラエルの部隊を待ち伏せるために対戦車地雷やブービートラップを仕掛けたという。
イスラエルの攻撃は、これまでイスラエル当局者が「草刈り」と呼んでいた過去のガザ作戦よりもはるかに大規模なものになるとみられるが、ハマスの軍事力を低下させることはできても、壊滅させることはできないだろう。
イスラエルは2008年〜9年、2012年、2014年と、過去に3回ハマスと衝突し、そのうちの2回で限定的な陸地侵攻を行った。しかし、それらは今回とは異なり、イスラエルの指導者たちはハマスの完全な壊滅を誓ったことはなかった。
この3回の戦闘で、パレスチナ人4000人弱、イスラエル人100人弱が死亡した。
イスラエルがハマスを完全に壊滅させることができるという楽観的な見方はワシントンには少なく、イスラエルがガザの領土を保持したり、再占領したりする可能性はほとんどないと米政府関係者は見ている、と米国の情報筋は語った。
より可能性の高いシナリオは、イスラエル軍ができる限り多くのハマス構成員を殺害または確保し、トンネルやロケット発射基地を爆破、そしてイスラエル軍に犠牲者が出た後は、勝利を宣言して撤退する方法を探すことだろう、と同関係者は語った。
地域に垂れ込める戦雲
地域全体が懸念しているのは、レバノンのヒズボラと、同組織の後ろ盾であるイランが、ハマス支援のために主要な新戦線を切り開くことで、戦争がガザの境界を超えて拡大することだ。
イランのホセイン・アミール・アブドラヒアン外相は、イスラエルがガザ侵攻を実行した場合、イスラエルに対する「先制攻撃」が行われる可能性を警告した。彼は先週末、米国がイスラエルを抑制できなかった場合、イランは傍観するつもりはないと述べた。
アラブの指導者たちは、先週同地域の国々を訪問していたブリンケン氏に、彼らはイスラエルへのハマスの攻撃を非難しているが、一方で、パレスチナの民間人に対する集団的懲罰には反対しており、これが地域の不穏を引き起こすことを懸念していると伝えた。
死者の数が増えれば、民衆の激しい怒りは地域全体に広がるだろう、と彼らは言う。
米国はヒズボラがイスラエル北部の国境から戦闘に参加することを懸念し、空母打撃群を地中海東部に派遣した。しかし、米軍が抑止の姿勢から直接の関与に移行する兆候はない。
同地域の情報筋によれば、米国は、2007年にハマスにガザの支配権を奪われたパレスチナ自治政府(PA)の再活性化を提案しているという。ハマスが追い出された場合でも、PAや他の権力がこの沿岸の飛び地を統治することができるかどうかには大きな疑問がある。
米国の元中東交渉官であるミラー氏は、ガザを統治するポスト・ハマス政府樹立の可能性について懐疑的な見方を示した。
「国連、パレスチナ自治政府、サウジアラビア、エジプト、そして米国がヨーロッパ諸国を率いて、ガザを『天井のない監獄』からより良い場所に変えることができるのだろうか?私には、それは地球上ではなく、はるか彼方の銀河系にふさわしい絵空事に思える」と彼は言った。
一方、ガザ内に人道回廊を設け、パレスチナ市民の避難路を確保しようという呼びかけは、アラブ近隣諸国から強い反発を招いている。
彼らは、今回のイスラエルの侵攻が、1948年の第1次中東戦争と1967年の第三次中東戦争がそうであったように、新たな、そして永続的な大量移住の波を引き起こすことを恐れている。当時、避難を余儀なくされた数百万人のパレスチナ人たちは、難民として今も受け入れ国に取り残されたままだ。
1967年の戦争でイスラエルに占領され、その後併合された東エルサレムと、占領地全域にわたるイスラエルの入植地拡大は、パレスチナ人との対立の核心である。ネタニヤフ首相は宗教的で過激な極右勢力を公然と受け入れ、ユダヤ人が入植するための土地をさらに併合すると約束している。
今年に入ってから、ヨルダン川西岸地区ではイスラエル軍兵士や入植者との度重なる衝突で数百人のパレスチナ人が死亡している。近隣のガザが燃え盛る中、暴力が同地区にも拡大するのではないかという懸念が広がっている。
「最悪のシナリオがどんなものであれ、それはさらに悪くなるだろう」と、他の地域情報筋は、紛争がガザを越えて広がる可能性について語った。
ロイター