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世界は不安な方向に変化している

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23 Dec 2021 03:12:50 GMT9
23 Dec 2021 03:12:50 GMT9

2020年10月、パンデミックがまだ拡大中でワクチンもなかった頃、ライターでCNNのホストのファリード・ザカリア氏が著書『パンデミック後の世界 10の教訓』を発刊した。ザカリア氏は世界を複数のレンズを通して見つめ、出現しつつあるトレンドをシンプルかつ明確に抽出する書き手だ。

彼はパンデミックの初期段階に何を学び、新たに出現する世界のありさまをどのように予測したのだろうか。第一にザカリア氏は、パンデミックの初期の米国の対応の誤りから重要な教訓を学び、全うかつ効率的で、適切な統治を実現することの重要性を強調した。そして、あらゆる種類の課題について専門家の指摘に耳を傾け、事実に基づく政策(政治ではなく)を採用し、世界じゅうの他地域と調整し合わない限り、社会経済に大きな影響を及ぼすと警告した。第二に、不平等と貧困と戦わなければならない(パンデミックは、貧しい国が倍苦しむ中で裕福で多くの場合利己的な国々が危機にどう対処するのかを明らかにした)、デジタルインフラを使って、社会経済の突然の凍結を和らげる必要があると主張した。

ザカリア氏がこの著書で挙げているこのような教訓は今も有効だ。しかし、オミクロン変異株の影響が一時で済むことを望みつつパンデミックのトンネルから抜け出そうと歩を進めている今、他にどのような視野が広がっているのだろうか。データと展開の傾向の知見が1年分増えた今、特にワクチンの有益で即時的な影響(世界の一部の地域が他よりも強く受けている)も分かってきた中で、より明確にパターンを見極め、世界が正しい方向に進むように行動を起こすことは可能なのだろうか。

この1年は、デジタル通信とソーシャルネットワークが人の悩みの中心になった。個人の生活も社会的生活も、サイバー犯罪者(国が主導するものもある)と貪欲な企業の両方に破壊されていた。サイバー攻撃やランサムウェアによる襲撃が実際に急増した。2020年には、調査対象の企業の51%がランサムウェアの被害を受け、2021年には企業は11秒に1回攻撃を受けると推定されたのだ。また、一部の政府が、国民と外国人(ジャーナリスト、政治家など)の両方の批判者や政敵に対してスパイウェア(ペガサスなど)を使っていたことも分かってきた。

それと並行して、ソーシャルネットワーク、とりわけフェイスブックとインスタグラムは数十億人のユーザーに対して「利益第一の不道徳」を働いているとして非難された。個人データを抽出してその心理社会的プロフィールを構築するだけでなく、(多くの場合、不本意で)それらに非常に有害なふるまいをさせるアルゴリズムを適用したと指摘されたのだ。

何よりも心配な傾向は、世界がパンデミックから教訓を得ていないように見えることだろう。

ニダル・ゲスーム

スマートフォンからこれらのアプリを一つ残らず削除し、どのデジタル機器からもソーシャルネットワークにログインしなかったとしても、なお「合法に」追跡、プロファイリングされ(フェイスブック、ケンブリッジ・アナリティカなど)、見張られる(スマートフォンのカメラ、マイク、入力した文字などを通して)可能性があることが分かっている。

どうすればいいのだろうか。解決策は、デジタル行動の国際的なコンセンサスと新しい規範を企業、政府、個人に課して初めてもたらされる。それには世界ののけ者になる危険も伴う(デジタルアクセスの喪失や渡航禁止令、経済制裁にいたるまでの不利益)。

加速しているもうひとつのトレンド、遺伝子工学と生物医学研究にも倫理的ルールと規制を厳密に課す必要がある。例えば昨年4月、ある研究チームは、サルの胚にヒト幹細胞を注入してヒトとサルのハイブリッド胚をつくり、19日間成長を観察したと発表した。研究者たちは、この研究は科学者がより良い薬品と移植用臓器を開発するのに役立つと主張して、この「功績」を正当化した。一方、CRISPRと呼ばれる遺伝子工学技術は、さらに簡易、安価になり、効果が上がり、現在では植物、動物、ヒトの細胞にますます広く適用されている。ここで私が倫理的な懸念を指摘する必要はあるだろうか。

最後に、気候変動に関するCOP26会議のために各国がグラスゴーに集まり、気候変動の著しい影響(熱波、山火事、洪水、干ばつなど)を最低でも遅らせるための世界的な解決策の合意を目指した一方で、その他の環境災害も気づかれないまま連綿と続いているようだ。

例えば、滅多に聞こえてこないプラスチック汚染の惨状(毎日15億本のペットボトルと150億本のビニール袋が使われている)や、日常的に投げ込まれるプラスチックによる大洋と海の破壊(現在の海洋ゴミの80%はプラスチックである)、乱獲により、数百の種が消滅し、マグロなどの人気の高い魚が激減したことなどだ。

何よりも心配な傾向は、世界がパンデミックから教訓を得ていないように見えることだろう。中国の二酸化炭素排出量はOECD各国をすべて合わせた量よりも多いだけでなく、2021年にはパンデミック前のレベルよりも9%増えた。

私たちは真剣にパンデミックを、審査や点検、あるいはその両方の機会として、また一旦立ち止まってこの世界の方向性を熟慮する時間としてとらえるべきだ。そして不可逆的な変化と悲惨な結果を回避するためになすべきことを考えなければならない。今、未来を記述するのは私たちである。

  • ニダル・ゲスーム氏はUAEのアメリカン大学シャルジャ校教授である。

ツイッター: @NidhalGuessoum

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