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米、戦争のさなかにパレスチナ国家を改めて呼びかけも、暗い見通し

イスラエルとパレスチナ組織ハマスの間の戦闘が続く中、ガザ地区のスカイラインを背景に、イスラエルによる爆撃で破壊された建物が見える。2023年11月3日、イスラエル南部のガザ地区との境界沿いの場所から撮影された写真。(AFP)
イスラエルとパレスチナ組織ハマスの間の戦闘が続く中、ガザ地区のスカイラインを背景に、イスラエルによる爆撃で破壊された建物が見える。2023年11月3日、イスラエル南部のガザ地区との境界沿いの場所から撮影された写真。(AFP)
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04 Nov 2023 10:11:04 GMT9
04 Nov 2023 10:11:04 GMT9
  • ハマスが運営するガザ政府の保健省は、イスラエルによる容赦のない爆撃で9200人以上が死亡し、その大半が女性や子供だとしている
  • パレスチナ国家に長年反対しているベンヤミン・ネタニヤフ首相が率いるイスラエル史上最も右寄りの政府は、ヨルダン川西岸地区における入植地の強硬な支持者を多数抱えている

ワシントン:イスラエルの対ハマス作戦が激化する中、米国はパレスチナ国家樹立に向けた取り組みを改めて呼びかけているが、数十年の失敗を経た今、成功を期待する者はほとんどいない。

主に民間人を標的とした10月7日のハマスによる攻撃に対するイスラエルの報復を支持したことでアラブ世界からの激しい批判に直面しているジョー・バイデン大統領の政権は、ここ最近になって微妙にトーンを変え、パレスチナ民間人の被害を最小限に抑える必要性を強調している。

アントニー・ブリンケン国務長官は3日、再度訪問したイスラエルで、支援物資の搬入を可能にするための「人道的な戦闘一時停止」を呼びかけるとともに、より長期的には二国家解決が「現実的な最善の道、いや唯一の道だ」と述べた。

ブリンケン国務長官はテルアビブで次のように語った。「それこそが、安全で、ユダヤ的で、民主的なイスラエルを保証する唯一のものだ。また、パレスチナ人が安全、自由、機会、尊厳を平等に享受しながら自分たちの国家で暮らすという正当な権利を実現することを保証する唯一のものであり、暴力の連鎖を最終的に終わらせるための唯一の方法である」

しかし、ほぼちょうど30年前のオスロ合意で提案された二国家解決は、未だに実を結んでいない。パレスチナ自治政府はヨルダン川西岸地区の一部において限定的な自治権を持つのみである。10年前のジョン・ケリー国務長官(当時)による取り組み以降、米国はこの目標に向けた協調的な外交努力を主導していない。

パレスチナ国家に長年反対しているベンヤミン・ネタニヤフ首相が率いるイスラエル史上最も右寄りの政府は、ヨルダン川西岸地区における入植地の強硬な支持者を多数抱えている。

一方のパレスチナ自治政府はますます弱体化しており、2007年にイスラム過激派組織ハマスがガザ地区を掌握して以降は同地区を支配していない。

しかし、中東研究所の政策担当副所長であるブライアン・カトゥリス氏は、バイデン政権による二国家解決への呼びかけは、「我々は出口の見えない暗いトンネルを進んでいるわけではない」というシグナルを送っていると指摘する。

同氏は、「短期的に見れば非現実的に思われるが、地域のアクター、すなわちイスラエル、パレスチナ、そして特に一部のアラブ諸国に対し、我々がある種の地平に向けて再びコミットしているというメッセージを送るためにも、この種のことを言い続けることが重要だ」と語る。「せめて絵空事でも、異なる類の未来を示す必要がある」

10月7日、ハマス戦闘員らがイスラエルを越境攻撃し、自宅や音楽フェスティバルにいた人々を殺害した。イスラエル当局によると死者は1400人以上に上り、その大半が民間人だった。

一方、ハマスが運営するガザ政府の保健省は、イスラエルによる容赦のない爆撃で9200人以上が死亡し、その大半が女性や子供だとしている。

バイデン大統領とブリンケン国務長官は、ハマスに対応するイスラエルの権利を公に支持する一方で、同国に対し、同国がパレスチナ自治政府に代わって徴収している税収を引き渡すよう、またヨルダン川西岸地区における入植者によるパレスチナ人襲撃を取り締まるよう迫っている。

ある米国の同盟国から派遣されワシントンに駐在している、ある外交官は、「二国家解決を呼びかけていることは、それが設定された目標であることや、今後パレスチナ国家が実現することを意味しない」と語る。

「米国はむしろ、今後に関する対話を強制的に始めようとしているのだ」

イスラエル史上最悪の犠牲を出した10月7日の攻撃以前でさえも、パレスチナ国家に対する支持は双方において低下していた。

ピュー研究所が今年実施した世論調査では、イスラエルがパレスチナ独立国家と平和的に共存できると考えるイスラエル国民は、10年前の50%から減少し僅か35%だった。パレスチナ側も同様の低下を示している。

ネタニヤフ首相は、ハマスによる攻撃の数週間前に国連で行った演説において、二国家解決に向けた外交は過去のものであるとしたうえで、イスラエルとアラブ諸国の国交正常化こそが未来だと述べた。ただ、今や後者の見通しも暗くなっている。

戦略国際問題研究所のベテランアナリストであるアンソニー・コーデスマン氏は、10月7日の攻撃を受けての評論の中で、二国家解決に向けた真剣な調停努力がなされるたびに新たな暴力や緊張が引き起こされてきたと指摘した。

今回の戦闘勃発が示しているのは、「二国家解決は完全には死んでいないかもしれないが死の間際にあるため、その復活に向けた努力はゾンビ外交的な行為にすぎない可能性が高い」ことだと、同氏は書いている。

しかし、オスロ合意後にパレスチナ自治区で勤務した経験を持つカトゥリス氏は、何か代替案はあるのかと問い、イスラエル人とパレスチナ人が同じ国で暮らす未来に疑義を呈する。

同氏は次のように言う。「一部の人々には二国家解決が非現実的に思われるのかもしれないが、存在する様々な選択肢の中でおそらく最も現実的なものだ」

AFP

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