ハーンユーニス(ガザ地区):イスラエル軍は火曜日、ガザ地区にある立法府や警察本部を占拠するなど、ガザ地区北部の広範囲を掌握した。これは、イスラエルが目指す支配勢力ハマス武装組織の鎮圧に向けて、大きな象徴的価値をもたらすこととなる。
一方、パレスチナ当局は、ガザ地区最大の病院のすぐ外の路上でイスラエル軍がハマスと戦闘を繰り広げるなか、この病院内から身動きがとれないでいる36人の新生児およびその他患者を避難させるための停戦を呼びかけた。
占拠された建物の中では、兵士がイスラエル国旗や軍旗を掲げて祝っていた。全国放送された記者会見で、ヨアフ・ガラント国防大臣は、ハマスがガザ地区北部の「支配力を失い」、イスラエルがガザ市で大幅な前進を遂げたと語った。
しかし、戦争がどれくらい続くのかを聞かれたギャラント国防相は、「1日や2日ではなく、何か月も続くだろう」と述べた。
ガザ地区にいるイスラエル軍司令官の一人(ギラッド中佐とのみ特定)はビデオの中で、シファ病院近くに展開する同中佐の部隊が政府の建物、学校、住宅を占拠し、そこで武器を発見するとともに、敵の戦闘員を排除したと話した。
イスラエル軍は立法府とハマス警察本部、さらにはハマスの軍事情報本部が入る複合施設を占拠したと発表した。これら建物は強力な象徴物であるが、その戦略的価値は不明だ。ハマス戦闘員は地下壕にいると考えられている。
イスラエル軍は数日間にわたってシファ病院を包囲している。この病院では、ハマスが建物内およびその地下に潜み、主力司令部を守るために民間人を盾として利用しているとイスラエル側はいう。病院職員とハマスはこの主張を否定している。
何百人もの患者、スタッフ、避難民が建物内から身動きがとれず、物資は枯渇しつつあり、保育器やその他救命設備を稼働させるための電力もない。関係者の話では、何日も冷蔵する術がなかったため、遺体安置所のスタッフは火曜日に、病院の庭に120体以上の遺体のための集団墓地を掘った。
イスラエルは、10月7日のハマスによる攻撃で1,200人ほどが殺害され、約240人が人質として連れ去られたことを受け、ガザ地区におけるハマスの支配を終わらせることを誓った。イスラエル政府は、ハマス打倒後にこの領土をどうするかは不明であることを認めている。
イスラエルの猛攻撃は今世紀に入ってから最も激しいレベルの爆撃となっており、ガザ地区の230万人のパレスチナ人は悲惨な状況に陥っている。
ラマッラーのパレスチナ保健省によると、ガザ地区では1万1,200人以上が命を落とし、その3分の2は女性および未成年者となっている。また、約2,700人が行方不明になっていると報告されている。同省の集計では民間人と戦闘員の死者数を区別していない。
ガザ地区のほぼすべての人口が、この小さな領土の南側3分の2に押し込められており、悪化する状況のなかで爆撃が続いている。ここ数日で約20万人が北部から避難したが、まだ数万人が残っていると考えられると、国連は火曜日に発表した。
火曜日、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、ガザ地区の燃料貯蔵施設が空になっており、南部の学校やその他施設に避難している60万人以上の人々に向けて、エジプトから限られた食料や医薬品を届けるといった救援活動を間もなく終了すると発表した。
「燃料がなければ、ガザ地区での人道活動は終わりを迎える。さらに多くの人々が苦しみ、おそらく命を落とすだろう」とUNRWAのフィリップ・ラザリーニ事務局長は語った。イスラエルは、ハマスによって燃料が軍事転用されるとして、ガザ地区への燃料の搬入を繰り返し拒否している。
病院の窮状
ガザ市中心部にあるシファ病院は、市街の数ブロックにわたる複合施設であるが、その周辺での戦闘はここ数日間激化しており、いまや病院は「墓地と化している」と病院長は声明で述べた。
パレスチナ保健省は、土曜にシファ病院の非常用発電機の燃料が切れてから、乳児3人を含む患者40人が死亡したと発表した。さらに、保育器に電力が供給されていないため、さらに36人の乳児が死の危険にさらされているという。
イスラエル軍は、保育器をシファ病院に輸送する取り組みを開始したと発表した。しかし、それらは電力がなければ役に立たないと、世界保健機関のクリスチャン・リンドマイヤー報道官は語った。
パレスチナ保健省は、赤十字国際委員会の監視の下で病院から避難し、患者をエジプトの病院に移送することを提案しているが、何の返答も得られていないと同省のアシュラフ・アルキドラ報道官は述べた。
イスラエルは病院職員と患者の避難を容認する意向を示しているが、病院から脱出したパレスチナ人の中には、イスラエル軍が避難者に向けて発砲したという人もいる。
イスラエルは、シファ病院内およびその下にハマスの司令部があるという主張は、情報に基づいたものであると話すが、それを裏付ける視覚的証拠は提供されていない。ガザ保健省はこの主張を否定し、国際機関に病院施設の調査を依頼したと話す。
パレスチナ赤新月社は火曜日、「10日間以上の包囲が続き、その間医療物資および人道物資が病院に届かなかった」ため、ガザ市内のアルクドスという別の病院から、そこに残っていた患者、医師、避難民の家族を避難させたと発表した。
赤新月社はXへの投稿で、イスラエル軍が病院を爆撃し、病院内にいる人たちに発砲したと非難した。
ホワイトハウス国家安全保障会議のジョン・カービー報道官は、詳細は不明であるが、ハマスや他のパレスチナ武装勢力が軍事作戦の支援や人質拘束のために、シファ病院やその他病院、さらにはそれらの地下にあるトンネルを使用しているという情報を米国が入手していると語った。
ある米当局者は、機密事項であることから匿名を条件に、この情報は複数のソースに基づいており、米国が独自に情報を収集したと話した。
カービー報道官は、米国は病院への空爆を支持しておらず、「罪のない人々が治療を受けようとしている病院での銃撃戦」は見たくないと語った。
人質のための行進
ハマスは月曜日遅くに、イスラエルによるものだと同組織が主張する攻撃で亡くなった、人質のノア・マルシアーノさん(19)の殺害される前後を映したビデオを公開した。イスラエル軍は後に、彼女は戦死した兵士であると発表したが、死因については触れなかった。
彼女は拘束中に死亡が確認された最初の人質である。これまで、ハマスによって4人が解放され、5人目はイスラエル軍によって救出された。
ハマスに人質に取られた約240人の家族や支援者が、テルアビブからエルサレムまでの抗議の行進を開始した。10月7日の襲撃以来、人質の窮状が世間の話題を独占しており、全国各地で連帯抗議活動が行われている。土曜日にエルサレムに到着する予定の行進参加者らは、イスラエル政府は残された家族の愛する人たちを帰国させるために、もっと努力するしなければならないと主張している。
息子のオメルさん(21)を人質として連れていかれたシェリー・シェム・トフさんは、ネタニヤフ首相に「どこにいるんだ?」と呼びかけた。
「私たちにはもう力はない。どうすることもできない。子どもや家族を戻して欲しい。」
ガザ市内の戦闘
北部との通信がほぼ途絶しているため、ガザ市内での戦闘に関する独自の報告を収集することはほぼ不可能となっている。
イスラエル軍のダニエル・ハガリ報道官は、同軍がガザ市中心部に隣接する建物密集地区のシャティ難民キャンプの制圧を完了し、市内全域を自由に動き回っていると述べた。
イスラエル軍が公開したビデオには、部隊が市内を移動し、建物に発砲する様子が映っている。ブルドーザーが建物を押し倒し、戦車が部分的に倒壊した塔に囲まれた街路を走り抜けている。
このビデオには、軍隊がハマス戦闘員の居場所を一掃し、彼らがいる建物を破壊しながら、グループのトンネル網を徐々に解体していく戦いの様子が映っている。
イスラエルは、これまでに重要な中堅司令官を含む数千人の戦闘員を殺害し、ガザ地区で自国の兵士46人が死亡したと発表している。ここ数日、戦争中ずっと続いていたハマスによるイスラエルへのロケット弾攻撃は徐々に減少してきているが、火曜日にはテルアビブへのロケット弾攻撃で2人が負傷した。イスラエル側の話の詳細とハマスの被害程度は独自に確認することはできなかった。
AP