

ガザ地区ハーン・ユーニス:ガザ保健当局によると、19日、「極めて重篤な」未熟児31人がガザの主要病院から無事搬送され、エジプトに向かうことになった。一方、イスラエル軍がハマスの作戦を捜索するために病院の敷地内に入って数日経ったが、重度の感染創など救急治療を要する患者250人以上が動けずにいる。
イスラエル軍が病院の建物外でパレスチナ武装勢力と戦闘している間に、停電になって物資も枯渇したシファ病院にいた新生児は、ガザ南部の町ラファで応急手当を受けている。ガザ地区病院の総院長ムハンマド・ザクート医師によると、脱水症状、低体温症、敗血症になっている新生児もいたという。同医師によると、避難前の2日間に4人の新生児が死亡した。
18日に1時間、シファ病院を訪れた世界保健機関(WHO)のチームによると、病院の廊下は医療廃棄物と固形廃棄物で埋め尽くされており、「安全と衛生が保たれていないのを恐れ、避難を求めている」患者の感染リスクが高まっている。病院スタッフ25名が残っているという。
WHOによると、大多数の患者は切断の処置を受けたり火傷を負ったりしているが、抗生物質を入手できないため、多くが重度の感染症になっていた。今後24時間から72時間以内に、病院に残っている人々をガザ南部に避難させるミッションが計画されているが、「安全回廊の保証がまだ得られていない」という。
イスラエル軍は19日遅く、ハマスがシファ病院の建物内部と地下に広大な司令部をおいているという自らの主張を裏付ける強力な証拠があると発表した。イスラエルはシファ病院について、武装勢力ハマスによる6週間前のイスラエル南部への広範な攻撃後、ハマスによるガザ地区の支配を終わらせるための紛争の主要な標的と説明してきた。
イスラエル軍は、複数の建物、ガレージ、広場を含む20エーカー(約8万平方メートル)の病院敷地の地下約10メートルのところに、長さ55メートルのトンネルを発見したと発表した。トンネルには階段、防爆扉、狙撃兵が利用すると思われる銃眼などがあったという。
イスラエルの調査には、10月7日のハマスによる攻撃後、シファ病院に連行されたとイスラエル軍が主張する、タイ人とネパール人の人質2人が映る監視カメラの映像2本も含まれていた。ただし、AP通信はこのイスラエルの調査結果を独自に検証できなかった。
同軍はまた、先週ガザで遺体となって発見されたイスラエル女性兵士ノア・マルシアーノ中尉が、シファ病院内でハマスによって殺害されたとする独自の医療報告書を発表した。
ハマスとシファ病院のスタッフはこれまで、病院の地下に司令部があったという疑惑について否定してきた。この病院は、イスラエルが見境なく、民間人を生死に関わる危険にさらした象徴的な場所になったと非難が集まっている。包囲されたガザ地区ではイスラエル軍の爆撃により数千人が死亡し、食料、水、医薬品、燃料の不足が深刻である。
ハマス幹部のオサマ・ハムダン氏はイスラエル軍の発表を否定したが、ガザに数百キロに及ぶトンネルがあることは否定しなかった。しかしハムダン氏は、「イスラエル側は、単なるトンネル以上の重大なものである司令部が存在すると主張してきた」と釘を刺した。
船舶の拿捕
イスラエル軍によると、イエメンを拠点とする反政府組織フーシが紅海南部でトルコからインドに向かう貨物船を拿捕したが、イスラエル人は乗船しておらず、イスラエル船ではないという。
フーシは、イスラエル船を拿捕し、船と乗組員をイエメン沿岸に連行したと発表したが、「我々のイスラム教の教えと価値観に従って」乗組員を人質として扱っていると発表する以外、詳細を明らかにしなかった。イランが後ろ盾となっているフーシは、紅海を航行するイスラエル関連船舶を標的にすると脅迫していた。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相府は、イスラエルの大富豪が関与するバハマ船籍の自動車輸送船「ギャラクシー・リーダー」を攻撃したフーシを非難した。
ガザ北部での激しい戦闘
ガザ北部の難民が密集するジャパリア難民キャンプで、激しい衝突があったと報じられた。同キャンプで国連が運営する病院に避難しているヤシン・シャリフさんは電話で、「銃声と戦車の砲撃音が止むことなく聞こえていた」と話した。
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリーニ事務局長は前日にも、ジャパリアの難民が密集している国連の避難所にある学校への空爆で24人が死亡したと述べた。目撃者の証言によると、イスラエル軍による空爆だという。
パレスチナ人に対しガザ北部からの退避を繰り返し呼びかけているイスラエル軍は、同地域では「テロリストを攻撃する目的で」活動しているとのみ発表した。
「この戦争では毎日、驚くべき、そして容認できない数の女性や子どもなど民間人の犠牲者が出ている。戦争を止めねばならない」と、アントニオ・グテーレス国連事務総長は先程の爆撃と、24時間以内にあった国連が運営する学校に対する爆撃についての声明で発表した。
パレスチナ保健当局によると、1万1500人以上のパレスチナ人が殺害されている。また、2700人が行方不明で、瓦礫の下に埋もれていると思われる。この数字には民間人と戦闘員の両方が含まれている。イスラエルは数千人の戦闘員を殺害したと発表している。
人質交渉
イスラエル側では約1200人が殺害され、そのほとんどが10月7日のハマスによる攻撃で殺害された民間人である。ハマスは約240人を拉致してガザへ連行し、イスラエルの安全保障の認識を打ち砕いた。イスラエル軍によると、直近24時間での12人を含む、63人のイスラエル兵士が死亡したという。
ハマスが人質4人を解放、イスラエルが人質1人を救出し、激しい戦闘があったシファ近郊で人質2人の遺体が発見された。
イスラエル、米国、そしてハマスとの仲介を行うアラビア湾岸の国カタールは、数週間にわたり人質解放の交渉を行っている。「数日以内にかなりの数の人質解放を期待している」と、マイケル・ヘルツォーク駐米イスラエル大使が米ABCの番組「This Week」で語った。「人質を救出するため、数日間の戦闘の一時停止について話し合っている」
カタールのシェイク・ムハンマド・ビン・アブドルラフマン・アール・サーニ首相は19日、「現段階での障害は正直に言えば、より現実的な運搬上の問題」と述べた。
冬の到来
ガザ地区の人口230万人のうち3分の2以上が、自宅を離れ避難している。UNRWAは、数十万人という避難民に基本的サービスを提供するのに苦労している。
UNRWAによると、運営する施設のうち17カ所が攻撃を受けた。
冬の到来とともに冷たい風と土砂降りの雨に見舞われ、ここ数日で避難民が感じる苦痛はますます大きくなっている。
イスラエルは先週末、UNRWAに対し、あと数日間人道活動を継続し、インターネットと電話を稼働できるだけの燃料の搬入を許可した。イスラエルは紛争開始時にすべての燃料搬入を停止し、その結果、ガザ唯一の発電所とほとんどの水処理施設が停止した。
ヨアブ・ガラント国防相は18日、イスラエル軍がガザ南部まで攻撃の拡大を計画していることを、これまでで最も明確に示唆した。ガザ南部は、イスラエルがパレスチナの民間人に避難するように指示したところである。イスラエルは、ガザ南部各地のハマスの標的とイスラエルが主張する目標を繰り返し攻撃しているが、民間人も多数殺害している。
避難区域はすでに避難民が押し寄せ密集しており、攻撃が近づいた場合にどこに逃げればいいのか不明である。エジプトは、イスラエルがパレスチナ人の避難民の帰還を許さない可能性を恐れていることもあり、パレスチナ人難民の流入を拒否している。
パレスチナ系カナダ人のハリル・マナアさん(71)は19日、ガザを出てエジプトに向かった。マナアさんはガザ南部に避難してから、親族とともにひとつの家を共有して、40人でぎゅうぎゅう詰めになっていた。「その家でも、激しい爆撃にさらされました。そして、その家にロケット弾が命中しました」とマナアさんは語った。
AP