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ガザ地区の人道的理由による一時停止はイスラエル・ハマス戦争の終結となり得るのか?

6週間にわたる容赦のない空爆の後の4日間の一時停戦により、ガザ地区のパレスチナ難民は援助物資を受け取ることができるようになる。(AFP)
6週間にわたる容赦のない空爆の後の4日間の一時停戦により、ガザ地区のパレスチナ難民は援助物資を受け取ることができるようになる。(AFP)
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25 Nov 2023 09:11:06 GMT9
25 Nov 2023 09:11:06 GMT9
  • 11月24日に開始された一時停戦により、援助物資の輸送が円滑化され、人質と捕虜の交換が可能となる
  • 援助機関は、パレスチナの民間人の膨大なニーズを満たすのに4日間では十分ではないと警告している

アナン・テロ

ロンドン:人道援助団体は、ガザ地区において、イスラエルとパレスチナの武装組織ハマスの数週間にわたる戦闘を経て、11月24日に発効した4日間の一時停戦が恒久的なものになることを望んている。

この一時停戦は、ガザへの援助物資の輸送の円滑化を目的としている。イスラエルは、今回の戦争の引鉄となった10月7日の襲撃でハマスによって拉致された人質の内50人を、自国の刑務所で拘禁中の150人のパレスチナ人と交換する見込みである。

イスラエル当局者の発言として伝えられる報道によると、ハマス側が1日あたり少なくとも10人の人質の解放に同意すれば、戦闘停止は当初予定の4日間を超えて延長され得るという。

BBCによると、イスラエル政府がハマスに与えたインセンティブは、解放交渉が未完了の人質の家族にとっては重要であるものの、数多くの人々がハマスとの部分的な取引は容認出来ないと主張しているという。

しかし、そうした合意によって、イスラエルの監獄に拘禁されていると考えられる7,300人のパレスチナ人が引き換えに解放されるのか否かについての詳細は明らかではない。ロイター通信によると、イスラエルとハマスの双方が、一時停戦終了後に戦闘は再開されると述べている。

ガザ地区南部へと退避するパレスチナ人。(AP通信)

「歓迎すべき一歩」と受け止められている一時停戦ではあるが、複数の人道援助機関、団体がこの停戦を「不十分」とし、即時かつ全面的な停戦の差し迫った必要性を強く主張している。

飢餓に対する行動やハンディキャップ・インターナショナル、世界の医療団、ノーベル女性イニシアチブ、ノルウェー難民評議会、オックスファム、難民インターナショナル、セーブ・ザ・チルドレンのすべてが、この停戦協定を大きな傷口に貼られた「絆創膏」に例えている。

セーブ・ザ・チルドレン・パレスチナの地域責任者であるジェイソン・リー氏は、11月22日の声明で、「人道的理由による停戦は正しい方向への歓迎すべき一歩ですが、戦争の終結の代替にはなりません」との意見を明らかにした。

リー氏は、パレスチナ領域の飛び地であるガザ地区の北部と南部の両方で起きている戦闘に言及し、「ガザ地区には安全な場所など実際のところは存在しません」と述べた。

ユニセフのキャサリン・ラッセル事務局長は、11月第4週、国連安全保障理事会で、ガザ地区は「子供にとって世界で最も危険な場所」になったと語り、殺害された子供の数は5,300人以上であり、「この戦争の真の代償は子供たちの命で測られることになるでしょう」と付け加えた。

一時停戦のニュースにより、ガザ地区とエジプトの境界線にあるラファ検問所が改めて注目されることになった。イスラエルによる2007年の封鎖以来、パレスチナ領域の飛び地であるガザ地区の人々にとって国外にアクセスする唯一の方法であったラファ検問所だが、戦闘開始以来最初の3週間は閉鎖されていた。

国連人道問題調整事務所によると、ラファ検問所再開以後、援助物資を積載した約1,400台のトラックが同検問所を通過してガザ地区に入ったという。

しかし、複数の援助機関が、これはガザ地区住民が必要としているもののほんの一部に過ぎないと述べている。飢餓に対する行動の中東責任者であるキアラ・サッカルディ氏は、ラファ経由のアクセスの現状は「限定的」なものだと述べた。

サッカルディ氏は、11月22日のメディア会見で、「検問所経由でのガザ地区への輸送には物流的な限界があります」と語った。

「現在のところ、ラファ検問所経由で輸送できる物資では十分ではありません」と、サッカルディ氏は付け加え、さらに多くのエントリーポイントの設置を求めた。

世界の医療団のジョエル・ワイラー事務局長は、ガザ地区への人道援助物資の輸送にはラファ検問所のみでは不十分であることに同意し、ガザ地区とイスラエル、エジプトの三国間国境のケレム・シャローム検問所の人道援助物資輸送目的での使用を可能とすることを求めた。

ワイラー氏は、11月24日の一時停戦は、ガザ地区の支援を目指す医療機関にとっては、よく言っても「応急処置」、悪く言えば「冗談」だと語った。「人道主義のペンキを薄く塗ったようなものです」と、ワイラー氏は付け加えた。

ガザ地区への人道援助物資や商品の輸送を可能とするためにケレム・シャローム検問所の使用を可能とするよう、国連もまたイスラエルに要請している。

イスラエルの空爆を受け、子供を抱いて退避する女性。(AFP)

国連の人道問題担当事務次長で緊急救援調整官のマーティン・グリフィス氏によると、2007年のイスラエルによる禁輸措置まではガザ地区に輸送される貨物の60%以上がこのケレム・シャローム検問所経由だったという。

とは言うものの、主眼は依然として空爆を中止させることにある。

アムネスティ・インターナショナルUSAのポール・オブライエン事務局長は、破壊の度合と物資の不足を考慮すると、パレスチナ領域の包囲下の飛び地であるガザ地区での差し迫ったニーズは数日間の短い時間で満たすにはあまりにも深刻かつ甚大であると述べた。

オブライエン氏は、11月22日のメディア会見で、「ガザ地区での緊急のニーズへの対応は、数日間の停戦では実現できません。数百台の援助物資を積載したトラックは、必要不可欠かつ有用ではあるものの、それだけではガザ地区の状況に十分な対応はできないのです」と語った。

ガザ地区が被った破壊の程度を勘案してみると、こうしたニーズの規模が明らかになる。ガザ地区の住宅のほぼ半数が倒壊や深刻な損傷を受け、教育施設の51%以上が破壊されたのだ。

他方、燃料不足により停電が発生しており、その結果、浄水場に電力が供給されなくなり、水系感染症が蔓延している。

ハンディキャップ・インターナショナルのパレスチナ担当の地域マネージャーであるダニラ・ジジ氏は、イスラエルによる空爆は民間人を殺害するだけではなく、「多種の重傷を人々に負わせている」と語った。

ハーン・ユーニスでの葬儀で子供の遺骸を運ぶ親族。(AFP)

空爆による負傷には、重度の脊椎損傷や切断を必要とする外傷が含まれている、ガザ地区の医師たちは、封鎖により援助物資が得られず、麻酔薬や鎮痛剤、適切なアフターケアやリハビリテーション無しでの手術を余儀なくされている。

「現在の耐乏状態が始まる前、私たちはガザ地区の障害のある人々の21%を対象としていました。現時点での状況がどうなっているのかはまったく分かりません。何人の障害を持った人々が無事でいるのか、推測すらできないのです」と、ジジ氏は語った。

ジジ氏は、アムネスティ・インターナショナルUSAのオブライエン事務局長と同意見で、医療や食料、水へのアクセスを確保し、そして人間の尊厳の守ることは、数時間や数日間では遂行不可能な継続的なニーズであり、現在の一時停戦は「200万人に援助物資を届ける」のには不十分だと述べた。

「一時停戦の実態がどうなるのか、私たちには分かりません。私たちは安全には活動出来ないのです。継続的な停戦が必要です。援助を必要としている人たちの実情を見極めるために、安全な通行許可が必要なのです」と、ジジ氏は語った。

ガザ全域での即時かつ継続的な停戦の要請に参加したオブライエン氏は、イスラエルに対して影響力を持つ人々、「特にバイデン大統領と議会」に、「人権の側に立ち、継続的な停戦のために尽力する」よう呼びかけた。

オブライエン氏は、米国に、「国際人道法に違反するあらゆる方策に対しても、武器移転と支援を停止する」ことを求め、国際人道法への違反があれば戦争犯罪として捜査を行うよう要請した。

ガザ地区北部へのイスラエルによる空爆中にビル群から上がる煙。(AFP)

「イスラエル国防軍(IDF)と米国は、標的はハマスであり、その拠点がガザ地区であることから、同地区内の教会や学校、病院に対しての空爆においても人道法は順守されていると主張しています。それは不当な主張です。そして、こうした事は戦争犯罪として調査される必要があります」と、オブライエン氏は語った。

継続的な停戦の見込みは、しかしながら、わずかである。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、同国政府の目標はハマスを完全に壊滅させることだと繰り返し述べている。

とは言え、ハンディキャップ・インターナショナルのジジ氏にとって、代替策などあり得ない。4日間の停戦は、ガザ北部の民間人の安全な南部への退避を図るためにイスラエルが11月9日に合意した毎日4時間の停戦よりも多少はましなはずのだ。

ところが、報道によると、ガザ地区南部は安全な避難場所であるとの言明にも関わらず、イスラエル軍はその南部だけではなくイスラエル側が退避用として定めた安全なはずの経路をも標的として攻撃し続けている。

その結果、国連機関を含む人道援助機関は、「安全地帯」を設置するというイスラエルの一方的な提案を受け入れなかった。

これらの人道援助機関は、共同声明で、現況下でのそのような「安全地帯」の設置は「大規模な人命の損失を初めとする、民間人への被害に繋がる危険性があります」と述べた。

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