


エルサレム:イスラエルは15日、ヨルダン川西岸地区でのパレスチナ人2人の殺害について、軍警察による調査を開始すると発表した。これはイスラエルの人権団体が、ヨルダン川西岸地区の難民キャンプを軍が襲撃し、イスラエル軍が無力化した1人と非武装の1人を殺害したように思われる動画を投稿したことを受けてのものである。
人権団体B’Tselemは、軍が2件の 「違法な処刑」を行ったと非難した。
監視カメラの映像には、ヨルダン川西岸地区北部のファラア難民キャンプで、2台のイスラエル軍車両がパレスチナ人のグループを追跡している様子が映っており、赤い容器を持っているように見える一人の男性が兵士に銃殺されている。B’Tselemはこの男性を25歳のラミ・ジュンドブ(Rami Jundob)さんと特定した。
その後、同軍のジープは地面に血を流して倒れているジュンドブさんに近づき、彼が動かなくなるまで何発も発砲した。それから兵士たちは、B’Tselemが36歳のタール・シャヒン(Thaar Shahin)さんと特定した男性が車のボンネットの下でうずくまっているところに近づき、至近距離から発砲した。
B’Tselemによれば、シャヒンさんは即死、ジュンドブさんは負傷により翌日死亡した。
イスラエル軍によると、軍警察は12月8日の発砲事件について「事件中に違法な発砲があった疑いで」調査を開始したと発表した。調査結果は軍検察官に委ねられるというが、これは刑事告発の可能性を示唆している。
Original security camera footage obtained by B'Tselem captures two short-range executions of Palestinians in al-Far'ah R.C. on 8 December 2023. pic.twitter.com/gyDztMXIww
— B'Tselem בצלם بتسيلم (@btselem) December 15, 2023
イスラエルがこのような事件を起訴することはほとんどなく、人権団体によれば、たとえ不正行為が見つかっても兵士が重い罰を受けることはほとんどないという。注目をあつめた事例では、2016年、地面に倒れていた重傷のパレスチナ人を射殺したイスラエル軍兵士が過失致死罪で有罪判決を受け、9カ月の減刑刑で刑務所に収監された。
同軍は最近、エルサレムのバス停で二人組のパレスチナ人襲撃者を殺したばかりの兵士が、イスラエル人男性を射殺した事件についての調査を開始した。その兵士は、男性が地面にひざまずき、両手を挙げ、シャツを開いて自分が脅威でないことを示したにもかかわらず、そのイスラエル人も襲撃者ではないかと明らかに疑った。この発砲事件は、イスラエル軍兵士、警察、武装した市民によるパレスチナ人襲撃容疑者に対する過剰な武力行使が蔓延しているという批評家の指摘を浮き彫りにした。
15日には別の事件で、警察は、東エルサレムでパレスチナ人フォトジャーナリストを殴打する動画に映った警官を停職処分にしたと発表した。このフォトジャーナリストは、トルコの通信社『アナドル』で働くムスタファ・ハルフ(Mustafa Haruf)さんであるとソーシャルメディア上で特定されている。
動画では、一人の警官がハルフさんに近づき、銃の台尻で殴り、もう一人の警官が彼を車に押しつけている。一人は銃をハルフさんに向け、もう一人はハルフさんを地面に引き倒し、ヘッドロックをしている。警官がハルフさんの体に膝をつき、もう一人の警官がハルフさんの頭を何度も蹴り、ハルフさんは痛みで悲鳴を上げている。
他の警官らは傍らに立ち、ショックを受ける見物人を見張り、押しとどめている。
「国境警備隊司令部は、これらの警官の行為を部隊の価値観と矛盾するものと見なしている」と警察は声明で述べ、警官の停職処分と調査開始を発表した。
どちらの事件も、イスラエルとハマスの戦争によってヨルダン川西岸地区と東エルサレムで緊張が高まっている中で起こり、イスラエル人はさらなる攻撃を警戒している。パレスチナ人と人権団体は、イスラエル軍が過剰な武力を行使し、説明責任を回避していると長い間非難してきた。
戦争勃発以来、ヨルダン川西岸地区ではイスラエル軍と入植者による暴力が記録的なレベルに達している。パレスチナ保健省によると、10月7日以降、ヨルダン川西岸地区で287人のパレスチナ人が殺害された。ヨルダン川西岸地区において、過去18年間で最も死者が多い年だと、同保健省は述べた。
AP