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イスラエル軍兵士たちが、3人のパレスチナ人たちを銃撃した動画

AP通信による動画の精査と負傷者2人へのインタビューは、脅威足り得なかった3人にイスラエル兵たちが発砲したことを示している。(UGC、AP経由)
AP通信による動画の精査と負傷者2人へのインタビューは、脅威足り得なかった3人にイスラエル兵たちが発砲したことを示している。(UGC、AP経由)
占領下のヨルダン川西岸地区のベイト・リマ村の監視カメラの動画からキャプチャされた画像に映る、イスラエル兵たちの発砲後に地面に横たわる3人の男性の様子。2024年1月5日金曜日未明。(UGC、AP経由)
占領下のヨルダン川西岸地区のベイト・リマ村の監視カメラの動画からキャプチャされた画像に映る、イスラエル兵たちの発砲後に地面に横たわる3人の男性の様子。2024年1月5日金曜日未明。(UGC、AP経由)
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10 Jan 2024 10:01:01 GMT9
10 Jan 2024 10:01:01 GMT9
  • ベイト・リマ村で1月第1週に発生した射殺事件は、イスラエル軍兵士たちが理由もなく発砲したとされる一連の事件への新たな追加となる

ヨルダン川西岸地区、ベイト・リマ:ヨルダン川西岸地区の村の防犯カメラが記録した動画に、その村の中央広場に立っていた若い男性が突然銃撃され地面に倒れ込む様子が収められていた。助けに駆け寄った他の2人も同じく銃撃され、17歳の少年が死亡した。その直後にイスラエル軍の軍用車両複数台がその現場にやって来た。

AP通信はその動画を精査し、負傷した生存者2人にインタビューを行った。その結果、イスラエル軍の兵士たちは、3人のパレスチナ人が何ら脅威を示していないにも関わらず発砲したことが明らかとなった。負傷した1人は、立ち上がって飛び跳ねるように逃げようとした所に2度目の銃撃を受けた。

ベイト・リマ村で1月第1週に発生した射殺事件はイスラエル軍兵士たちが理由もなく発砲したとされる一連の事件への新たな追加となる。パレスチナ人たちは、2022年10月のガザ地区でのイスラエル・ハマス戦争の勃発以降、こうした銃撃が増加傾向にあると語っている。

イスラエル軍は、「対テロ作戦」の一環として、1月4日から5日にかけて夜を徹して複数の部隊がベイト・リマ村に移動したと発表した。イスラエル軍は、また、爆発物や焼夷弾を投げつけた容疑者たちに対して兵士たちが発砲したと述べた。

AP通信が、現地のタバコ販売店から入手した動画には、爆発物を投げつける人物の姿は映っていない。

イスラエル軍報道官は、動画の確認後、パレスチナ人の1人(動画では見切れている何らかの物体の前に跪いている事が視認できる)が、銃撃を受けた時、火炎瓶に点火していたとイスラエル軍兵士が報告したと語った。

しかし、動画では、最初の銃撃は跪いている男性ではなくナデル・ラマウィさんという別のパレスチナ人男性に命中している。ナデル・ラマウィさんは、AP通信に対して、見切れている物体は、17歳のオサイド・ラマウィさんが集めた段ボール箱と紙切れの束で、動画の男性たちが暖を取れるように火を起こす準備をしていたのだと語った。

ソーシャルメディアに投稿され、AP通信が確認した、この銃撃事件の他の動画では、オサイドさんが点火しようとしていた物体は、ナデル・ラマウィさんの説明通り、暖を取るためのものであるように見受けられる。さらに別の角度から撮影された動画で、何が起こったのかが今後一層明確になる可能性も依然残されている。

負傷した2人のベイト・リマ村住民は、AP通信のインタビューで、爆発物の投擲を否定し、1月5日午前2時頃のイスラエル軍兵士からの銃撃は理由のないなものだったと述べた。

イスラエル兵がベイト・リマ村にやって来た事が口伝てで広まった時、ラマウィさんの6人の兄弟の内2人は村の広場にいた。兄弟たちは、イスラエル軍の存在は認識していたが、対峙した状態ではなかったと語った。「私たちは、村のロータリーに立っていた若者たちと一緒でした」と、25歳のムハンマド・ラマウィさんは述べた。「私たちは、立ったまま何をするというのでもなく、周囲を見回し始めました」

タバコ販売店の防犯カメラの30分間の動画は、銃撃の約20分前から始まる。この動画には、自動車が両方向に走行する中、小グループのパレスチナ人の男性たちが集いカメラの視野を出たり入ったりする様子が収められている。村落内の離れた場所で身振り手振りをする男性たちもいる。

カメラ視野内の人々の数はやがて10人以下に減る。その後、ムハンマド・ラマウィさんの弟のナデル・ラマウィさんの左足に銃弾が当たり、周囲の男性たちは散らばるように逃げる。

動画には、ムハンマド・ラマウィさんが弟のナデル・ラマウィさんを助けようと駆け寄る様子が映っている。

「私たちは、狙撃手が撃ち始めたのを目撃しました。狙撃手が弟を撃ちました。私は弟を助けようと駆け寄りました。そして、その狙撃手は私を撃ったのです」と、ムハンマド・ラマウィさんは語った。銃弾は、ムハンマド・ラマウィさんの右腰に当たっていた。

動画には、17歳のオサイド・ラマウィさんが、自身のポケットに何かを入れた後、撃たれた2人を助けようと急ぐ様子が映っている。オサイド・ラマウィさんは即座に撃たれ、その後、その時の銃傷が原因で死亡する。兄のイスラム・ラマウィさんは、AP通信に、オサイドさんのポケットにはライターと20シェケル(5.36米ドル)、そしてタバコ1箱があったと語った。

ムハンマド・ラマウィさんは這って逃げることが出来たものの、他の2人は地面に横たわったまま取り残された。ナデル・ラマウィさんは、立ち上がって飛び跳ねるように逃げようとしたが、再度地面に倒れた。後日、病院のベッドから、ナデル・ラマウィさんは右足を撃たれて倒れたと語った。

動画全体を通して、イスラエル兵たちが携行している銃以外に、武器は見当たらない。銃を撃った者の姿も見えない。

銃撃の約2分後、4台のイスラエル軍の軍用車両が到着し、銃を構えた10人前後の兵士が姿を見せる様子が動画には収められていた。兵士たちはムハンマド・ラマウィさんの周囲に集まった、兵士の1人は、足でオサイド・ラマウィさんをつついた。

イスラエル軍の兵士たちは、4分も経たない内に負傷したパレスチナ人たちを地面に置き去りにし、積み上げられた段ボール箱を無視し、誰を逮捕連行することもなく、また軍用車両に乗って去って行った。

AP通信が確認したこの銃撃事件の別の動画では、2人の負傷者を避難させようと急いでやって来たパレスチナ側の車両によって、積み上げられた段ボール箱が倒れる様子が映っていた。

その直後、理髪師を目指していた高校生のオサイド・ラマウィさんの死亡が近くの病院で確認された。

イスラエル軍の報道官は、パレスチナ人たちがベイト・リマ村に入ったイスラエル軍部隊に対して火炎瓶を投げた事案が他にあったと語ったが、それが何時のことだっがかは分からないと述べた。動画に映っていた男性たちは、その夜、ベイト・リマ村で起こった事件らしきものは彼らが知る限りその銃撃だけだったと話した。

イスラエル軍は、その兵士たちが軍の方針に違反していたのかどうかの質問には応じず、また、正式な調査が行われるのか否かについても語らなかった。

イスラエルの人権団体「ベツェレム」によると、たとえ理由不明の銃撃がカメラで撮影され、イスラエル軍が調査したとしても、それが起訴に至ることは滅多にないという。

ベツェレムの広報担当のドロール・サドット氏は、「こうした事件は度々起きているが、誰もそれについて耳にすることがありません」と語った。「イスラエル軍は調査を開始すると言うことでしょう。そして、この種の調査は、メディアが取り上げなければ、何年もかかるのです。そして、やがて、何事もなかったかのように忘れ去られてしまうというわけです」

サドット氏の主張に対して、イスラエル軍の報道官は、声明で、「各調査ファイルは状況に応じて精査されます。それが適切な場合には、起訴を含む様々な強制措置が講じられます」と答えた。

これまでに、軍の交戦規定に明らかに違反し、兵士たちが自らの生命が危険に晒されていないにも関わらず発砲した事例を複数の人権団体が発表してきている。大半の事例の犠牲者はパレスチナ人だったが、今回のイスラエル・ハマス戦争ではイスラエル人が銃撃され殺害された事件があり注目を集めた。

2023年12月、ガザ地区でハマスの拘束から逃れたイスラエル人の人質3人が白旗を振り、ヘブライ語で助けを求めた後、イスラエルの兵士たちにより射殺された。

サドット氏は、イスラエル・ハマス戦争の勃発以来、ヨルダン川西岸地区の兵士たちや入植者たちによる今までに無いレベルの脅しや破壊的行為をベツェレムは目の当りにしていると語った。国連の監視員たちによると、ヨルダン川西岸地区は、現在、記録されている中でも最大級に死の危険性の高い局面にあるという。

今回の銃撃で2人の兄弟が負傷してしまったベイト・リマ村在住のアフメド・ラマウィさんは、イスラエル・ハマス戦争が始まって以降、イスラエル軍の兵士たちはより攻撃的になったと実感していると語った。以前は村落内の群衆を解散させるためには、まず非致死性の先行手榴弾が用いられていた。現在では、「兵士たちは人々にすぐに発砲しています」と、アフメド・ラマウィさんは語った。

パレスチナの保健当局者たちは、武装組織ハマスがイスラエル南部を襲撃し、大半を民間人が占める約1,200人を殺害して以来の緊迫した3ヶ月間で、340人のパレスチナ人がヨルダン川西岸地区で殺害されたと発表した。

ハマスによる襲撃を受けたイスラエルは、ガザ地区では23,000人以上を死亡させた空爆と地上作戦を展開し、ヨルダン川西岸地区では時として死亡者の出る強制捜索を毎晩のように実行して厳重な警戒態勢を敷くことに全力を上げている。イスラエル側は、こうした取締りの対象はハマスや他の武装組織であると述べている。

ムハンマド・ラマウィさんとナデル・ラマウィさんは、銃傷から回復しつつある。2人とも平素は近傍のパレスチナの村の工場に勤務し、調理済みのサラダを市場で販売するための包装作業を行っている。歩けるようになるまで仕事は再開しないと2人は語った。

ナデル・ラマウィさんは、1月7日に大腿部の銃傷の手術を受けた。ムハンマド・ラマウィさんは退院したものの、右足には体重をかけられない。ラマッラー市の北方に位置する人口4,000人のベイト・リマ村で、ムハンマド・ラマウィさんは、家族で住んでいる小ぶりで装飾の凝らされた自宅の周囲を金属製の歩行器の助けを借りて足を引き摺りながら歩き回っている。

ベイト・リマ村のロータリーの壁には、イスラエル軍との遭遇や衝突で死亡した村の男性たちの風雨に晒された顔写真が貼られている。その顔写真の列の中に、自身が殺害された地面のへこみを見つめるオサイド・ラマウィさんの写真もある。

AP

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