
エルサレム:1月26日、イエメンの反政府勢力フーシ派はアデン湾をパトロール中の米軍艦にミサイルを発射し、海軍側はこれを撃墜した。フーシ派はさらに、イギリスの船舶を空爆するなど、海上交通への激しい攻撃を続けている。
米駆逐艦カーニーへの攻撃は、米海軍が中東においてこの数十年で経験した中で最大の海上での衝突が、さらにエスカレートしたことを意味する。26日夜には、フーシ派のミサイル攻撃で別の商業船が炎上した。
米中央軍(CENTCOM)によると、現地時間の27日早く、米軍は紅海に向けて発射準備をしていたフーシ派の対艦ミサイルに対して攻撃を行った。
カーニーに対する攻撃は、フーシ派が昨年10月に海上船舶への攻撃を開始して以来、直接アメリカの軍艦を標的にした初めてのケースであると、あるアメリカ政府関係者が匿名を条件に語った。この件について話すことに対しては許可が下りていないという。
その後26日、中東の海路を監督するイギリス軍英国海運貿易オペレーション(UKMTO)は、アデン湾で船舶がミサイル攻撃を受けて炎上したことを認めた。
フーシ派の報道官ヤヤ・サリー准将は、カーニーへの攻撃は認めなかったが、炎上を引き起こした商業船へのミサイル攻撃への関与は認めた。准将はこの船はマーシャル諸島船籍のタンカー、マーリン・ルアンダ号であると明かした。
CENTCOMは26日遅くに行った声明で、マーリン・ルアンダがイエメンのフーシ派支配地域から発射された1発の対艦弾道ミサイルで攻撃されたことを確認した。カーニーと他の連合軍艦船が対応し、被災した船に支援を提供している。CENTCOMによると、負傷者は報告されていない。
フーシ派が米軍艦を直接攻撃したことで、イスラエルとハマスの戦争が始まって以来、紅海における作戦はこれまでになく緊迫化することになった。米国は、フーシ派の攻撃について控えめな説明をするにとどめており、紛争が地全体に拡大するのを防ぐためもあり、フーシ派の攻撃対象を正確に判断するのは難しいと述べている。
米国と同盟国はイエメンのフーシ派の兵器庫を攻撃することを数週間控えていたが、現在は定期的に行動を起こしており、しばしば武装はしているが発射には至らない、差し迫った脅威とみなされる発射拠点を破壊してきた。
カーニーが直接標的にされたにもかかわらず、26日のCENTCOMの声明は、フーシ派はカーニー号「の方向に」発砲したとのみ述べた。
26日の攻撃を米軍艦への直接攻撃と認めることは重要だ、と民主主義防衛財団(the Foundation for the Defense of Democracies)のシニア・ディレクター、ブラッド・ボウマン氏は言う。
「彼らは今、ようやく率直になり、フーシ派は我が軍を攻撃しようとしている、我々を殺そうとしている、と言っているのだ」とボウマン氏は指摘した。
言葉や対応を抑制することは、戦争の拡大の防止を目的としているものの、フーシ派をさらに増長させるという逆の効果をもたらしている、とボウマン氏は言う。
CENTCOMによると、26日の攻撃では、対艦弾道ミサイルが、昨年11月以来フーシ派の攻撃を阻止するための米軍の作戦に参加しているアーレイ・バーク級駆逐艦カーニーに接近した。
「ミサイルは米軍艦カーニーによって無事撃墜された。負傷者や被害は報告されていない
今回の攻撃は、紅海とその周辺海域を航行する船舶に対するフーシ派による攻撃の内で最新のものであり、イスラエルがガザ地区で対ハマス戦争を続ける中、世界貿易の混乱をもたらしている。
アメリカとイギリスは、フーシ派による攻撃が始まって以来、イエメンにある同派のミサイル基地や発射基地を標的として何度も空爆を繰り返している。イエメンでは、フーシ派が2014年に首都サヌアを占領して以来紛争が続いている。
昨年11月以来、フーシ派はガザでのイスラエルのハマスに対する攻撃に報復するためだとして、紅海で繰り返し船舶を標的にしている。しかし、イスラエルとのつながりが希薄な、あるいは明確でない船舶を標的にすることも多く、アジア、中東、ヨーロッパを結ぶ世界貿易の重要航路の海運が脅かされている。
空爆作戦が始まって以来、フーシ派はアメリカやイギリスの船も標的にすると表明している。24日には、米国防総省と国務省向けの貨物を積んだアメリカ船籍の船2隻がフーシ派の攻撃を受け、護衛していた米海軍の軍艦が発射物の一部を撃墜した。
米海軍の中東地域最高司令官は22日、AP通信に対し、フーシ派の攻撃は1980年代のいわゆるタンカー戦争以来最悪のものであると語った。タンカー戦争では、アメリカとイランの一日限りの海戦で対立が頂点に達し、1988年には米海軍がイランの旅客機を誤って撃墜し、290人が死亡した。
AP