




パレスチナ自治区、ガザ地区: 世界中のイスラム教徒にとって、ラマダンは祈りと内省と喜びの晩餐の時である、 しかし、ガザ地区住民の今年の願いは、5カ月にわたる戦争と苦しみが終わることだ。
それはイスラム世界全体で広く共有されている希望であり、日曜日か月曜日に三日月を見ることで始まる断食月を前に、多くの人がガザに思いを寄せている。
ハマスによる10月7日の対イスラエル攻撃に端を発した戦争は、ガザを荒廃させ、何万人ものパレスチナ人を殺害し、レバノンからイエメン沖まで、中東のその他の場所に広がる暴力の引き金となった。
ガザ南部の廃墟の中、ネヴィン・アル・シクセクさんは、間に合わせのテントの外に座り、プラスチック製のラマダンのランタンで周囲の殺戮から幼い娘の気をそらしていた。
イスラム暦第9月のラマダンは、夜明けから夕暮れまで断食が続き、良い時期には家族や友人とイフタールの食事を楽しむ。
今年はガザ全域で、大量の飢餓という悲惨な警告が発せられる中、明かりは聖なる月の到来を告げる数少ないサインとなっている。
国際的な調停者たちは、ラマダン(断食月)に合わせた停戦を望んでいたが、金曜日までに突破口は開かれなかった。
人口240万人の領土の大部分は、爆撃で破壊された街角、やせ細った子供たち、砂に掘られた集団墓地などの地獄絵図となっている。
シクセクさんと彼女の家族は、ガザ北部の自宅でラム肉やお菓子に舌鼓を打つ代わりに、他の避難民と共有する避難地の粗末なテントで断食を行う。
「食べるものがあればの話ですが」とシクセクさんが言うと、夫のモハメド・ヤセル・レイハンさんもうなずいた。
かつては、7世紀に預言者ムハンマドにコーランが啓示されたことを記念するラマダンの期間中は、「日常、喜び、精神、デコレーション、そして美しい雰囲気がありました」とレイハンさんは言った。
「今はラマダンが来ても、戦争と抑圧と飢餓です」
イスラエルの公式発表に基づくAFPの集計によると、ガザ紛争は、ハマスがイスラエル南部で前前例のない攻撃を行い、民間人を中心に約1160人が死亡した後に勃発した。
ハマスが運営するガザの保健省によれば、イスラエルの報復軍事作戦によって、これまでに少なくとも30,800人が死亡しており、その大半は女性と子どもだという。
イスラム世界の他の地域は、紛争から高インフレまで、独自の課題に取り組んでいるかもしれない。しかし、多くのイスラム教徒は、今年はパレスチナ人のことを考えているという。
「祈るたびに、パレスチナにいる兄弟姉妹のために祈りを捧げます」と、世界最大のイスラム教徒人口を抱える同国西部のアチェ州に住むインドネシア人の主婦ヌルニサさん(61)は言う。
「私は何も彼らを助けることができないので、ただ祈ることしかできません。戦争が早く終わることを祈っています。現地の人々はとても苦しんでいます」
絶望した住民が屠殺した馬や木の葉さえも食べるようになったという、ガザに迫り来る飢餓の報道は、ヨルダンの5児の父、サイフ・ヒンダウィさんにも重くのしかかっている。
「ヨルダンの物価を見てください。物価は上がっていますが、それでもあるものは買うことが出来ます。一方ガザでは、パンを作るために動物の飼料を使っています」と44歳の彼は言った。
戦争はレバノン南部にも深刻な影響を及ぼしており、イランに支援されたヒズボラ過激派がイスラエルとほぼ毎日攻撃を交わし、国境の両側で何万人もの人々が避難している。
引退した教師マリアム・アワダさんは、現在、ティレ市の学校兼避難所に住んでいるが、ストレスのため、今年のラマダンは断食できないだろうと語った。
「神は、私たちが住んでいるこの場所で断食をすることを強制されないでしょう」と彼女は言った。
イエメンでは、イランに支援されたフーシ派の反政府勢力が11月、イスラエルに関係する船舶に向けてミサイルを発射し始めた。
フーシ派の作戦は国外では評価を受けるかもしれないが、イエメン国内では10年近くに及ぶ内戦によってもたらされた人道危機を悪化させている。
反フーシ派の米軍による空爆の標的となっている港湾都市ホデイダでは、レストラン経営者のアリ・モハマドさんは、今月は不況になることを覚悟していると語った。
「空爆が始まったとき、ビジネスは突然崩壊しました。この状況が続けば……廃業するしかないでしょう」
ソマリアの首都では、貿易商のアブディラヒム・アリさんが、紅海の危機が物価を上昇させることを心配していると語った。
イスラエルに併合された東エルサレムのイスラム教徒は、アル・アクサモスクでの暴力を心配している。この場所はイスラム教で3番目に神聖な場所であり、ユダヤ教では神殿の山として知られる最も神聖な場所である。
ラマダンの期間中、イスラム教徒は数万人から数十万人単位で、その象徴である岩のドームで祈りを捧げる。
しかし2月、イスラエルの強硬派であるベングビール国家安全保障相は、占領下のヨルダン川西岸地区に住むパレスチナ人はラマダン期間中、エルサレムへの入場を「許可されるべきではない」と主張した。ベンヤミン・ネタニヤフ首相の事務所は火曜日、礼拝者は例年と「同様の人数」でモスクに入ることを許可されると述べた。
しかし、アル・アクサ近くのコミュニティセンターで働くアハラム・シャヒーンさん(32)は安心していない。2021年にイスラエル警察がモスクを襲撃したとき、シャヒーンさんは隣で祈っていた女性たちがゴム弾で撃たれるのを目撃しており、また同じことが起こるのではないかと恐れている。「私たちはもう5カ月も戦争とともに生きています。本当に疲れ、消耗しています」
ラマダン期間中、最も華やかな都市カイロでは、名前を伏せたガザの学生が、今年の聖月は耐え難いものになると恐れていた。「生まれて初めて、ラマダンという考えに耐えられません。ファヌース(ラマダン中の飾り)を見るたびに胸が痛みます」
「私の兄弟や姉妹は1日1回も食事ができないのに、私たちは何もかも当たり前のように断食明けの食事をすべきなのでしょうか」
AFP