
アラブニュース
アンカラ:長年にわたって外交的に対立する2つの国に興味深い動きが起きている。トルコが、コロナウイルス(COVID-19)のアウトブレイクに苦戦するイスラエルに医療用品を提供し始めたのだ。
この医療パッケージにはマスク、手術用手袋、防護服などが入っている。
イスラエルはコロナウイルス感染症の最前線で働く兵士を守るため、最近中国からも100万枚のマスクを入手した。
荷物はトルコ南部のインジルリク空軍基地に送られ、イスラエルの航空機がそこでピックアップする予定だ。イスラエルでは100人近くがコロナウイルスによって命を落としている。
ブルームバーグの報道によると、イスラエルはお返しとして、トルコがパレスチナ自治政府に医療支援物資を輸送することを承諾した。
トルコとイスラエルは2010年5月のマヴィ・マルマラ号事件によって関係が破綻した。この船はトルコ所有の支援船で、ガザの封鎖を突破しようとしたところイスラエルの特殊部隊に急襲され、乗船していた活動家10人が殺害された。
この攻撃後、当時首相だったレジェップ・タイイップ・エルドアンは、イスラエルはこの「虐殺」に対する罰を受けるべきだと訴えた。
2013年3月、イスラエルとトルコの首相は米国の仲裁で外交関係の正常化とイスラエルの元司令官に対する法的措置停止、さらに遺族への補償を決めた。
ワルシャワに拠点を置くポーランド国際問題研究所のアナリスト、カロル・バシレフスキ(Karol Wasilewski)は、トルコ政府が見せた連帯の動きを「コロナ外交」と呼び、人道支援を通じて政治的目標を達成しようとしていると評した。
「これは間違いなく興味深い展開ですが、トルコとイスラエルの関係が雪解けに向かうとは思えません。両国の摩擦は特にこの数十年、根深くなっています」とバシレフスキはアラブニュースに語った。
さらに「パレスチナ問題について、イスラエル当局は、もしパレスチナ、特にガザ地区でウイルスが広がれば、自国にとっても大きな問題になるということを知っています。ですからトルコのパレスチナへの支援を承諾したのは、ただのプラグマティズム(実用主義)です」と述べた。
パレスチナ問題について、イスラエル当局は、もしパレスチナ、特にガザ地区でウイルスが広がれば、自国にとっても大きな問題になるということを知っています。
ですからトルコのパレスチナへの支援を承諾したのは、ただのプラグマティズム(実用主義)です。
カロル・バシレフスキ(アナリスト)
「トルコはおそらく世界で最も強力なパレスチナの支援国の1つなので、支援の手を差し伸べるのは極めて自然なことです」
バシレフスキは、トルコがこうした人道的姿勢を見せることでイスラエルとの関係を修復できると考えている可能性を完全には排除しなかった。
トルコの支援は人道的側面もあるが、国の外交政策目標を推進させるのにも役立つ。
12月、イスラエル公共放送協会(KAN)は、イスラエルの貯留地からトルコ経由でヨーロッパ大陸まで通すガスパイプラインについて、イスラエル当局はトルコ当局と話し合いの準備ができていると断言した。しかし、トルコ政府は公式な承認をしていない。
バシレフスキによると、トルコの政策決定者は、有権者がそのような話し合いを受け入れない可能性を恐れて承認することに消極的になっており、トルコとイスラエルの関係を修復することで大きな利益をもたらそうと考えているという。
イスラエルのエネルギー省の予測によると、イスラエル沿岸のリバイアサンガス田とタマルガス田には、約8,000億立方メートルの天然ガスが貯蔵されている。
テルアビブにあるイスラエル国家安全保障研究所のガリア・リンデンストラウス上級研究員は、アラブニュースにこう述べた。「この難しい時期にトルコは寛容さを見せていますが、この措置だけでは関係修復には至らないでしょう」
「イスラエルと並行してパレスチナ人を支援する手段という意味合いもあります」
リンデントラウスによると、それでもこの動きはイスラエルのメディアが報じたため、イスラエルの一般市民の目に映るトルコのイメージを少し改善できるかもしれない。
経済面では、最近イスラエルはトルコからの鉄鋼輸入が増加しており、この傾向は昨年から続いている。
しかし、反ユダヤ主義の陰謀説にふけることは今でもトルコ政治の一部にとって日常茶飯事である。
3月初旬の演説で、トルコのイスラム系福祉党のファティフ・エルバカン党首は、COVID-19のアウトブレイクの責任についてイスラエルを非難した。
「このウイルスはシオニズムの人口抑制目的であり、それを裏付ける重要な研究もあります。シオニズムは5,000年前から人々の苦しみを引き起こす細菌です」とエルカバンは述べた。