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中東の緊迫化で世界の原油相場が上昇

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08 Jan 2020 10:01:21 GMT9
08 Jan 2020 10:01:21 GMT9

金曜日にバグダッドでイランのカセム・ソレイマニ少将が殺害されたことで、中東の地政学的緊張感が前面に押し出された。原油価格は反発し、ブレントは2019年6月以来の高値に達した。ブレントの価格は月曜日早朝の取引で非常に重要な1バレル70ドルのラインを突破した。ただし、その後は少し下落している。資金の安全な逃避先も同様で、金は7年ぶりの高値となり、人民元・ドルのレートも著しく上昇した。

原油価格は、かつてのような中東の地政学的緊張の重要なバロメーターとしての立ち位置を失った。しかし、アラビア湾での船舶への攻撃やフライスやアブカイクのサウジの石油関連施設に対するドローンやロケット弾による攻撃などの地政学的イベントで急上昇し、現在はイラクやシリア、レバノンでイランの影響力を及ぼしているコッズ部隊を指揮していたソレイマニの殺害の余波を受けている。

トレーダーはより長期的な価格帯と展望の定量可能な傾向に注目する傾向にある。イベントリスクに対する反応は、一時的とはいえ、大きくなる傾向がある。中東の一触即発の緊張は、石油生産にも影響を与えて来た。例えば、イランや国の崩壊につながったリビアに対する制裁がそうだ。湾岸諸国は、全般的に影響を受けてきておらず、サウジアラビアへの攻撃が行われている時など、影響がある場合でも、生産はすぐに持ち直した。

地政学的緊張は、アメリカのシェール業界が驚くほどの好調を続け、十分な供給が行われている市場も背景にして起きた。国際エネルギー機関は、2020年も下げ相場になると予想している。需要は1日120万バレル(bpd)に増加する見込みである一方で、非OPECによる供給は、210万bpdに成長すると見込まれており、原油在庫は70万バレル前後になる可能性がある。

マクロ的な需給バランスは、石油価格の地政学プレミアムがなぜあまり大きくなってこなかったのかを説明するのに役立つ。問題は、最近のエスカレーションが先物価格をどこに持っていくかだ。イランは報復を誓い、イラク議会は外国部隊を追放する法的拘束力のない票決を可決した。しかし、アーディル・アブドゥルマフディーは単なる暫定首相であり、同国は新内閣の組閣を待ち望んでいる。つまり、採決の結果は恐らく、話半分に捉えるべきだろう。

今後数週間で、一時的な原油価格上昇につながった単発のイベントリスクにとどまるのかどうかが証明されるだろう。

コーネリア・マイヤー

ソレイマニ殺害で原油価格が1バレル70ドルから80ドルの新たなレンジに押し上げられたという流派も中にはある。これは必ずしも正しくないかもしれない。繰り返すが、トレーダーはイベントリスクに注目し、単に水面下でくすぶっているだけなら、地政学的緊張のことは忘れるだろう。

イラクは、11月の生産高が460万bpdのOPEC第2位の産油国だ。イラクとアメリカの間の緊張関係、特に、アメリカ軍が追放される可能性と、アメリカに対する報復制裁が行われる可能性が、イラクの原油生産にどのような影響を与えるのか、今はしばらく様子を見るべきだ。最近の出来事により、Daeshが再び力を付けることにつながるのか、また、それがイラクの原油生産にどのような影響を与えうるのかという問題もある。これはサウジアラビアの相当な余剰生産能力に照らして考えなければならない。これは必要ならば利用することが可能だ。

イランは報復すると脅しているが、どのような形を取るのかは不明だ。ホルムズ海峡は明らかに弱点だ。アメリカ合衆国エネルギー情報局によると、世界の石油船の35%はこの海峡を通過しなければならない。イランがこの水路に永久的な損害を与えるようなことをする可能性は低い。中国と日本の両国がそのエネルギーのニーズを満たすため、中東の石油に大きく依存しているからだ。

ロシアと中国はイランと友好関係を築いており、他方日本は、2018年5月にドナルド・トランプ大統領がイラン核合意から離脱して以降、対話の窓を開き続けてきた。イランには見方が少なく、友好国の希望を考慮しなければならない。これは、水路や石油設備に対する小規模な攻撃を排除できるということではない。イランの指導部は、アメリカやその同盟国による総攻撃に軍事的に耐えられないことも認識している。

全体として考えると、この地域における緊張は週末にかけて別の段階に高まった。今後数週間で、一時的な原油価格上昇につながった単発のイベントリスクにとどまるのか、あるいは、イランの反応とそれに対するアメリカの対抗が先物価格を新たな、より高い価格帯へ押し上げるのかが証明されるだろう。

  • コーネリア・マイヤーは、経営コンサルタント、マクロ経済学者、エネルギーの専門家。ツイッター:@MeyerResources
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