Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter
  • Home
  • 中東
  • 新型コロナウイルスという共通の敵を前にしてもなお団結できないパレスチナとイスラエル

新型コロナウイルスという共通の敵を前にしてもなお団結できないパレスチナとイスラエル

新型コロナ拡散に苦しむパレスチナとイスラエル。この苦境は両者の差を縮めるのか、それともさらに遠のかせるのか。(AN 写真/Ahed Izhiman)
新型コロナ拡散に苦しむパレスチナとイスラエル。この苦境は両者の差を縮めるのか、それともさらに遠のかせるのか。(AN 写真/Ahed Izhiman)
新型コロナ拡散に苦しむパレスチナとイスラエル。この苦境は両者の差を縮めるのか、それともさらに遠のかせるのか。(AN 写真/Ahed Izhiman)
新型コロナ拡散に苦しむパレスチナとイスラエル。この苦境は両者の差を縮めるのか、それともさらに遠のかせるのか。(AN 写真/Ahed Izhiman)
新型コロナ拡散に苦しむパレスチナとイスラエル。この苦境は両者の差を縮めるのか、それともさらに遠のかせるのか。(AN 写真/Ahed Izhiman)
新型コロナ拡散に苦しむパレスチナとイスラエル。この苦境は両者の差を縮めるのか、それともさらに遠のかせるのか。(AN 写真/Ahed Izhiman)
新型コロナ拡散に苦しむパレスチナとイスラエル。この苦境は両者の差を縮めるのか、それともさらに遠のかせるのか。(AN 写真/Ahed Izhiman)
新型コロナ拡散に苦しむパレスチナとイスラエル。この苦境は両者の差を縮めるのか、それともさらに遠のかせるのか。(AN 写真/Ahed Izhiman)
新型コロナ拡散に苦しむパレスチナとイスラエル。この苦境は両者の差を縮めるのか、それともさらに遠のかせるのか。(AN 写真/Ahed Izhiman)
新型コロナ拡散に苦しむパレスチナとイスラエル。この苦境は両者の差を縮めるのか、それともさらに遠のかせるのか。(AN 写真/Ahed Izhiman)
Short Url:
16 Apr 2020 08:04:00 GMT9
16 Apr 2020 08:04:00 GMT9

レベッカ・アン・プロクター

【ドバイ】すべては3月初頭に始まった。ギリシャからの旅行者の一団がベツレヘムとエルサレムを訪れた。ウイルスはいつも外からやって来る。感染はさまざまな文化圏をめぐり、旅行を通じて伝播する。

ヨルダン川西岸地区ではじめての新型コロナウイルス感染者が出たという報はパレスチナ自治区を駆け巡った。これが3月5日のことで、聖書でおなじみのベツレヘムにある名高いエンジェル・ホテルで宿泊客と従業員7人が陽性反応を示したのがこの日だ。

急遽ホテルは検疫センターとなり、パレスチナ自治政府のマフムード・アッバース大統領は1か月間におよぶ緊急事態宣言を発出した。

健康が脅かされるとあって、あらゆる企業・大学・モスク・教会が門戸を閉ざした。パレスチナの都市からはどこも人混みが消えた。見捨てられたも同然の様相を呈した西岸地区の街もあった。

「パレスチナ当局は最初期の数週間、1日あたり平均数百人から500人の検査をしていた」。そう語るのは、西岸地区のビールゼイト大学地域公衆衛生研究所のウィーアム・ハンムーダ助教だ。

「いまは検査施設は1か所にとどまらず、自治政府側は1日1,500人以上に検査を施せる体制だとしている」

ハンムーダ氏によれば人工呼吸器は不足しているそうだ。

「西岸地区には現在120台の人工呼吸器があるが、250台までは増やしたいと苦心している」と同氏は本紙に語った。

「が、最悪の場合、最低でも800台の人工呼吸器が必要となると保健省は言っている」

目下、各行政区域には指定の検疫医療施設が最低でも1か所ある状況だ。

ラマッラーの場合、トゥルムス・アイヤーにある眼科病院が患者の収容先に利用されている。

ベッドが埋まると、1民間病院3ホテルの利用が予定される。

検査キットは世界保健機関(WHO)から調達している。人工呼吸器については追加の入札がおこなわれている。

「世界の友人たちと連絡を取っているところだ」と語るのは、PLOの渉外局で広報活動アドバイザーを務めるイーナース・アル=ムザッファル氏だ。

「今回のパンデミック対応で必要とされる経費は1億2,000万ドルと見積もられている。となれば財政赤字は倍増し国家経済の損失も莫大なものとなる。

「すでに世界銀行および関係省庁でチームを組み今回の危機による経済的な影響について精査しているところだ。また、終息後の経済再生についても準備を開始している」

4月2日には、西岸地区とガザ地区でのコロナ禍対策への援助として、世界銀行が新たに500万ドルの緊急措置を承認したところだ。

「パレスチナ経済にブレーキがかかり、国庫収入は落ち込んだ。領内の税収減しかり、イスラエルがイスラエルの港湾でパレスチナへの輸入品から徴収する税収減しかりだ」と語るのは、自治政府のイブラーヒーム・ミルヒム報道官だ。

「財務省でもイスラエル側に理解を求めている。今回のパンデミックが収束するまでは、国有銀行からの借り入れに加え、国庫へ充てるために納税および税控除について協議中だ」

医療支援は進行中だが、自治政府側にはさらなる困難も予期される。

イスラエルから戻ってくるパレスチナ人労働者の数は多い。その理由はさまざまだ。解雇された、安全な場所がない、感染が恐い、ラマダンは家族や恋人と過ごしたい、など。ラマダンは4月23日から始まる予定だ。

イスラエルでは14日の時点で1万1,000人以上の感染者が確認されているように新型コロナの蔓延は激化しており、こうしたパレスチナ人の中にもキャリアがいる可能性がある。

パレスチナ自治区では今のところ発病者数は248人にとどまっており、比較的痛手を被っていない。が、がらりと様変わりする事態もありうる。

パレスチナとイスラエルの当局間では当初、罹患したパレスチナ人労働者へのケアについては相互理解があった。

イスラエル領内ないしイスラエルによる入植地で通常勤務する西岸地区出身のパレスチナ人はおよそ15万人いる。

パレスチナで働くよりも実入りがいいためイスラエルで働いているわけだが、これがそのまま西岸地区の経済の安定にも資するところがきわめて大なのだ。

「もともと彼らは1、2か月をイスラエルで過ごし、イスラエル側の雇用主は適当な住居や必要な場合の医療について提供する責任があった。が、実際にそうしたことはおこなわれていない」と、ハンムーダ氏は言う。

3月25日、パレスチナへ戻る労働者の一人がイスラエル警察によって数時間検問所に放置されるという一件があった。イスラエル領からは救急車で搬送されたが、検査結果は陰性だった。

パレスチナ自治政府のムハンマド・シュタイエ首相はこの一件を受けて、全パレスチナ人労働者はみずからの安全のために西岸地区へ戻るようにとうながした。

「西岸地区へ労働者を規律的に送り返すという約束をイスラエルは守らなかった」とミルヒム報道官。

「橋の下に設けられた巨大な雨水管を通って帰還する労働者の姿を収めた映像もある。

「こういったことがあると、自治政府としても労働者の帰宅までの動線を管理しきれなくなるし、帰宅して家族を感染させないという保証もしづらくなる」

ミルヒム報道官によると、パレスチナ自治政府はイスラエルとの境界沿いに診療施設を設け、労働者の検査と体温測定をおこなっている。

「検査用の綿棒に事欠くため、無作為抽出した者のみの検査となっている」と報道官は言う。

「高熱の見られる者については自宅隔離とし、検査結果が出るまでは監視下に置かれる」

3月前半までは、イスラエルとパレスチナとで一致結束し、共通の敵に対するはずだという望みがあった。

「今回のパンデミックは世界規模のものだ。打ち勝つには協力するしかないとだれもが思うはずだが、そうはなっていない」とハンムーダ氏は言う。

「新型コロナが拡大するというのにあいかわらずの野放図ぶりだ。健康への危機が今まさに進行中だというのに、パレスチナ人へ唾を吐きかけるイスラエル人入植者の話は引きも切らない」

ミルヒム報道官もハンムーダ氏の見解に同調する。「イスラエルは今回のパンデミックに乗じてパレスチナ人の苦しみを倍にしている」

地元メディアの報道によると、感染者数の急増にもかかわらず、イスラエルは厳格な都市封鎖はおこなっていない。その一方で、過ぎ越しの祭の間は外出禁止や移動制限については緩和された。

あるパレスチナ人政治アナリストは、イスラエル政府とパレスチナ自治政府が長きにわたり共同歩調を取ってきた歴史を示しながら、「新型コロナはイスラエルにとっては安全保障問題なのだ」とする。

「西岸地区で感染者数の急増が起きればもはやイスラエルの国内問題とは言い切れなくなる。理由はこうだ。西岸地区と東エルサレムの不法入植地には7,000人程度のイスラエル人不法入植者らがいる。西岸地区のイスラエル人入植者の200人ほどがすでに罹患しているのだ。

「とどのつまりが、両者は共同歩調を取る以外にないんだよ」

新型コロナでは、イスラエルの監獄に収容されているパレスチナ人政治犯の問題も持ち上がっている。「パレスチナ人囚人クラブ」は16日、イスラエルのメギド刑務所に収容されている4人の囚人が新型コロナに感染したことを確認している。

「これを機に政治の問題を超克すべきだ。パレスチナ人政治犯は人道的に扱い、我々のほうで受け入れるべきなんだ」と同アナリストは語る。

中東における新型コロナ感染症拡大がいかなるゆくえをたどるのかはいまだ杳として知れない。が、イスラエルもパレスチナもともに公衆衛生の不備はつのる一方なだけに、政治では容易に一致できない両者がその差を縮めるべく真摯に努める姿勢もあるいはみられるかもしれない、死のウイルスになぞらえられる共通の敵を奇貨として。

特に人気
オススメ

return to top

<