

ナジア・フサリ
ベイルート:レバノンで金曜日に自殺事件が2件あり、同国で急激に悪化する景気後退が背景にあると考えられるこれらの自殺をきっかけとして、政府の危機対応に抗議するデモが各地で起こっている。
レバノン東部ヘルメル県に住む61歳の男性は、昼前、ベイルートの繁華街のカフェの外で拳銃自殺した。現場には、レバノンの国旗と遺書、そして本人に犯罪歴がないことを示す書類が残されていた。
ショックを受けた見物人らの口から、自殺の背景には経済危機による国の荒廃があるという言葉が口に出た。
「自殺したのは空腹のせいなんだ」。治安部隊が遺体を運び去るなか、男性のいとこが叫んだ。
男性の死がきっかけとなり、ベイルートのハムラ地区で抗議デモが起こった。デモ参加者らは、1975~1990年の内戦以来最悪の経済危機に対する政府の対応を非難した。
「自殺ではなかった。冷酷な殺人だったのだ」と書かれたプラカードも見られた。
抗議者らの非難は、「自分たちを代表せず、インフレや高いドル為替レートや停電のことなど振り返ってもみない政府」に向けられた。
第二の自殺は、南部の都市サイダーの近くで起きた。自らの命を経ったのは、失業中のバンドライバーだった。地方当局によると、この自殺も経済崩壊が背景にあるらしいという。
37歳の男性は、ジャドラの町にある自宅で首を吊った。金曜の朝、遺体が発見された。
当局の発表によると、男性には妻と一人娘がおり、経済的な問題で追い詰められていたという。
抗議デモは、レバノン通貨崩壊のなかで起こった。今週、レバノンポンドは闇市場での対ドル取引レートで9,000ポンド以上に達した。
為替レートが急落するのとほぼ同じスピードで物価も急騰し、企業、金融機関、中小企業も、やり繰りする余地がほとんど奪われた形となった。
国民の間に高まる怒りを受け、ヤン・クビシュ・国連レバノン特別調整官は、政府高官に警告を発した。
「レバノン国民の辛抱が永遠に続くと思い、それに甘えないように。国民は、電力セクターをはじめ、どのセクターにも何の改革もなされない状態にも、政府がまとまったビジョンや対策措置に欠け、経済崩壊にも拡大する国民の苦しみにもまったく対処できていない状態にも、業を煮やしているのだ」と、クビシュ調整官はツイートで述べた。
国際通貨基金(IMF)の救済措置に期待が高まったが、それもおぼつかなくなった。ガジ・ワズニ財務相によると、交渉は「保留中であり、国による改革実施待ちの状態」という。
金融危機から脱するために必要だとして国際社会から要求されている改革も、今のところ止まったままの状態だ。政治的相違が邪魔をしているのだ。
ワズニ財務相は「政府と議会間の統一されたアプローチ」を呼びかけ、「ゆっくりしている時間などない」と述べている。
政府のIMF支援要請をめぐる意見の相違により、ハッサン・ディアブ内閣の辞任を求め、サード・ハリーリー前首相に首相の座に戻るべきだとの声が上がっている。
それに対しハリーリー氏は、「救済のパスワードは改革だ」と述べた。
木曜日、ハリーリー氏は記者団に対し、自分が政府を率いる場合の条件は「変わっていない。つまり、働き方を変える必要があるし、割り当ての慣習を終わらせる必要がある」と述べた。
ヒズボラに関しては、次のように述べた。「この政府の内部に、狙いがリヤドであれどの街であれフーシ派のミサイルの対サウジ攻撃に拍手するような人物がいるというのに、政府は湾岸アラブ諸国に対し、どうやって資金を提供してほしいと頼めるというのか」
ハリーリー氏はさらに、「閣僚の中に運動(自由愛国運動 )があり、すべての閣僚と口論したがっている。アマル運動であれ、サード・ハリーリーであれ、ワリード・ジュンブラートであれ、レバノン軍団であれ、誰でもだ。こんな状態で、政府はどうやって機能するというのか」
前首相は、自分は「ミシェル・アウン大統領とも誰とも対立していない」と述べ、自由愛国運動のゲブラン・バシル党首について言及した。
これが中央銀行の金融犯罪監査の裏付けとなっている、とハリーリー氏は言う。「なぜなら、隠すことなど何もないからだ」