• 国連設置の法廷の法的対応をめぐる論争の中で、同法廷を「失敗」とする声も

ナジア・フサリ

ベイルート：2005年のラフィク・ハリリ元首相暗殺事件を裁く、国連設置の国際法廷の判決にレバノン国内では衝撃と失望が走った。

レバノン特別法廷の判決は「未来運動」支持者に概して受け入れられたが、一部の支持者は、ベイルートで元首相の他21人が死亡したトラック爆破事件に関与した疑いがある3人のヒズボラメンバーが無罪となったことを非難した。

18日にハーグで言い渡された判決によると、サリム・アイヤシュ被告（56歳）1名が事件への関与の罪を認定された。

判決を受けて、ソーシャルメディアでは判決を不満とする声があがり、約10億ドルを費やした法廷による証拠不十分という判決を「失敗」と批判した。

法廷では多くの質問の証言を得られなかったという声が多くあがる一方、証拠が明らかにされなければ被告は無罪であるとする意見もある。

法廷に近い関係者がアラブニュースに語ったところによると、衝撃と失望の理由は、レバノンの刑法は大陸法系であるのに対し、法廷では英米法系の刑法に依拠していたからだという。

「英米法では、強固で説得力のある証拠によって裁定することを原則とするのに対し、大陸法では犯罪に関与すれば、共犯者として裁かれる。共犯者の刑罰は比較的軽いが、犯罪の首謀者は即座に起訴される」

判決は、容疑者メンバーの中でアイヤシュ被告を「ハリリ氏の暗殺を実行した主犯者」と結論づけた。

同被告を「爆破装置を使ってテロ行為を計画的に実行し、他の21人の命を奪った謀略の共犯者」と表現した。

アイヤシュ被告は「入手可能な証拠によると、ヒズボラへの組織的な関与を持っていた」とされる。

2600ページにのぼる判決では、「ヒズボラとシリアが暗殺に関心を持っていたことが疑われる」と付記された。

法廷が英米法の法的伝統に依拠することを選択した理由に疑問を投げかける声は多い。

関係者は、「レバノン特別法廷（STL）で使用できるオプションが多すぎた。複数の刑法に依拠することも可能であったが、STLの裁判官の専門が英米法系であったため、同法の体系が採用された」と語る。

判決は、アサド・サブラ（43歳）、フセイン・オネイシ（46歳）、ハッサン・ハビブ・メルヒ（54歳）の3被告を証拠不十分で無罪とした。

関係者によれば、「STLは、4人の被告間に連携があり、特別な任務に関して協力関係があったことを認めたが、3人が自分たちの活動がハリリ氏の殺害につながることを知っていたという結論には至らなかった。3人の責任を問う明確な証拠が法廷では明らかにはならなかった」という。

判決は、「ハリリ氏の暗殺を計画した容疑者グループがムスタファ・バドレディン氏の指揮下にあったことを証明するのは困難である。バドレディン氏には暗殺につながる行為を犯す意図はあったが、同氏が事件の首謀者であったことを認める証拠はない」と指摘した。

元大臣で弁護士会の会長であるラシド・デルバス氏はアラブニュースにこう語った。「判決は矛盾を含んでいるため注意深く読む必要があり、ヒズボラとシリアだけでなく、検察側や被害者にも使用できる政治的スポンジのように見える。判決は多面的だ」

「判決はヒズボラのメンバーが共犯者と共に罪を犯したことを示した。検察は既存の手続きに従い起訴する必要がある」と彼は付け加えた。

ヒズボラの議員や指導部は判決についてのコメントを拒否した。支持者たちはソーシャルメディア上で判決に喜びを示す一方、国連が支援する法廷を認めないともコメントした。

元議員のファレス・スアイド氏は、判決は事件の政治的動機を明らかにしたと語る。

同氏は「シリア軍のレバノンからの完全撤退を求める声が判決の核心だ」と述べた。

「判決は事実に基づいたもので、個人の罪を認めたものだが、サウジアラビアと米国が指摘した政治的なつながりの存在を認めたものだった。レバノンの政党に必要なことは、このつながりを認識したうえで次の質問に答えることだ。ヒズボラは今やっていることを続けることができるのか」

「判決はテロリスト集団の有罪を認めた。アイヤシュ被告が、殺人の長い歴史を持つ組織の一員でなければ、このような暗殺を計画し、資金などを準備し実行できたとは誰も思わない」とスアイド氏は語った。