ナジア・フサリ
ベイルート:フランスのエマニュエル・マクロン大統領が8月31日、ベイルートに到着する前に、レバノンの長く反目し合う政治家たちは30日、先を争って表面上の安定を繕おうとした。
ドイツ大使のムスタファ・アディブ氏は、首相に指名されることが確実視されている。アディブ氏はその前に、サード・ハリーリー元首相率いる主要スンニ派勢力、未来運動と、ゼブラン・バジル元外務大臣率いる最大のキリスト教勢力、自由愛国運動の両方から指名されていた。
イランが支援するヒズボラグループとその支持者、アマルもまた、アディブ氏の指名を支持することが予想される。
ベイルートの湾港地区で壊滅的な爆発で、190人近くが死亡したことを受けて、国民の怒りが噴出した中、今月辞任したハッサン・ディアブ氏とアディブ氏は交代することになる。レバノンはまた、国内経済を壊滅させた財政危機にも頭を悩ませている。
アディブ氏(48歳)は政治学の博士号を取得しており、2013年からレバノンの駐ドイツ大使だ。同氏はナジーブ・ミーカーティー元首相と親密な関係だ。
未来運動の主要人物、ムスタファ・アロウシュ博士は、未来運動が「政治的野心のない人」を指名するだろう、とアラブニュースに以前語っていた。
「私たちの指名は、フランスのエマニュエル・マクロン大統領の条件と一致するものとなるでしょう。つまり、指名される人物は、権力の座にある政治家の1人であるべきではありません」と、アロウシュ博士は語った。
レバノンの無能で腐敗した政治エリート層に対する抗議で、昨年10月以来、アディブ氏は既に、街頭で抗議活動をするデモ集団からの反発に遭っている。
「私たちは議会による公式協議の結果を拒絶します。こうした結果は既に予め分かっており、例のごとく所謂挙国一致の政府、外国ででっち上げられた政府が誕生するでしょう」と、この抗議活動を支持する野党、ナショナルブロックのメンバー、ナジ・アブ・ハリル氏は語った。
30日、日曜日の自らの説教の中で、マロン派のベチャラ・アル・ラーヒ総主教は、「この国が経済的、財政的、社会的苦境の底から立ち上がり、必要な改革を達成するために、欠くことができない力を持った小規模な非常事態政府」を期待すると語った。
ラーヒ総主教は、「独立性、統合性、政治的経験があることを特徴とし、腐敗の蔓延に染まっていない新たな公職者がいる新国家」を求めた。
マクロン大統領は31日の夕方に、ベイルートに到着し、政治改革と再建を強く求めることになっている。湾港地区の爆発以来、2度目となるベイルート訪問は、9月1日のレバノン建国100周年の祝賀と重なっている。
アメリカ合衆国もまた変化を促しており、デイビッド・シェンカー国務次官補が今週訪問する。
首相のポストは、レバノンの宗派ごとに政治権力を分散する体制において、イスラム教スンニ派の者が選出されなければならない。アディブ氏の立候補は31日に、スンニ派最大の政党、未来運動を率いるサード・アル・ハリーリー氏を始め元首相たちから、必要不可欠な政治的支援を受けてのことだった。
キリスト教マロン派のミシェル・アウン大統領は、新たな首相を指名するための公式協議で、31日に議員たちと会談することになっている。同大統領は、議員たちの中で最大の支持を得た候補者を、指名することが求められている。
レバノンの主要なシーア派政党、ヒズボラと、ナビ・ベリ議会議長率いるアマルは両方とも、この協議でアディブを指名するだろう、とシーア派幹部情報筋は語った。
ヒズボラと政治的協力関係にあり、アウン大統領が設立し、今は義理の息子、ジブラーン・バシール氏が率いるキリスト教自由愛国運動(FPM)も、同じことをするだろう、とバシール氏なロイター通信に語った。
一旦首相が指名されれば、新政権樹立の動きが始まるだろう。新政権が認められるまで、ディアブ政権は暫定政権として継続する。
レバノンの財政危機は、10月以来80%も通貨の価値を下落させ、麻痺した銀行制度の中で預金者に預金を下ろせなくし、貧困と失業を加速させた。
レバノンは巨大負債を抱えて債務不履行となった後、財政支援の確保を目指して、5月に国際通貨基金と話し合いを始めた。しかし、金融制度の損失規模をめぐって、レバノン側の部局の中で、こうした件は立ち往生している。