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友人か敵か。亡命者の運命をめぐってシリア難民の意見が分かれる

ベルリンのシュパンダウ地区にある難民キャンプの外で、アンゲラ・メルケル首相と自撮りする移住者。(ロイター通信)
ベルリンのシュパンダウ地区にある難民キャンプの外で、アンゲラ・メルケル首相と自撮りする移住者。(ロイター通信)
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02 Dec 2020 05:12:58 GMT9
02 Dec 2020 05:12:58 GMT9
  • ドイツでは、検察官はそれが世界のどこで犯されたかにかかわらず、人道に対する犯罪を起訴できる普遍的管轄権を持つ法律を使っている
  • ドイツの裁判所に持ち込まれた最初の事件では、拷問と性的暴行の罪でシリアの元情報部員2人の裁判が4月に開始された

ドイツ ゲーラ:バッシャール・アサド大統領の政府から亡命したシリア治安部隊の元メンバーは戦争犯罪で起訴されるべきなのか、それともシリア高官を裁判にかけるための重要な証人となるべきなのか。

この問題は、2011年に内戦が勃発して以来、何十万人もの人々が殺害され、残虐行為が続いてきたシリアの難民や亡命者を二分してきた。

60万人のシリア難民が暮らすドイツでは、検察官は、アサド氏の軍による拷問や法的手続きを経ずに処刑された疑いのある被害者ために裁判を行う目的で、それが世界のどこで侵されたかにかかわらず、人道に対する犯罪を起訴することができる普遍的管轄権を持つ法律を使用している。

ドイツの裁判所に持ち込まれた最初の事件では、拷問と性的暴行の罪でシリアの元情報部員2人の裁判が4月に開始された。

2人の容疑者は2012年にシリアから脱出し、ドイツへの亡命を認められた。現在ドイツにいるシリア人の多くは、これらの亡命者は友人なのか敵なのかと疑問を抱いている。

「ドイツでの裁判は戦略的にも道徳的にも間違っている。亡命者は命をかけて反対派に参加し、シリアの政権の信用を失墜させた」と、シリアの長期にわたる反体制派、Fawaz Tello氏は言う。

「革命の最初の数か月間に亡命した人たちが裁判にかけられているのを見て、気が確かであれば誰が今、亡命しようとするのだろうか」

シリア政府は、国際的な人権団体が証拠書類として提出した拷問や法的手続きを経ない処刑の報告を常に否認している。

シリア軍の精鋭第4師団の元大佐、マフムード・アルアブドラ氏は、いまだ解決されていない戦争の中でシリア政府が行った戦争犯罪疑惑の証拠を集めているドイツとフランスの司法当局に証言した数百人の亡命者の1人だ。

同氏によると、6年前にシリアを出国した際に持っていた数少ない持ち物の中で、自分の階級を示す軍人カードが最も貴重な品だったという。

ピンク色のプラスチックで覆われたこの紙は、フランスやドイツで行ったシリア政府に関する証言の信憑性を高めたという。

「抗議者への発砲を拒否した兵士が処刑されたり、民間地域に向けて重砲が発射されたりしているのを見た」と、5人の子どもの父親で56歳のアルアブドラ氏は、妻と暮らすドイツ東部の都市ゲーラの質素なアパートで巻きタバコを作りながら話した。

「亡命を決意した夜のことを覚えている。2012年2月13日のことだ。私は(ダマスカスの西にある)サボウラ軍事基地で、部屋の電気を消して祈っていた。私は、『神よ、私はこのような犯罪に加担したくない。私をここから連れ出してくれ』と言った」とアルアブドラ氏は振り返った。

活動家は、シリアのための国際法廷を設立しようとする試みが失敗した後、政府の施設で拷問を受けたと言う何千人ものシリア人のための裁判を行う最初の一歩としてドイツでの事態の推移を歓迎している。

拷問に関する裁判で被害者の代理人を務める欧州憲法および人権センター(ECCHR)のアンワール・アル・ブンニ氏は、「被害者に公正な裁きを求めるなと言う権利は誰にもない」と語った。

「戦争犯罪者と疑われる者を不問にすることは、アサド政権を免責することに等しい」

裁判の主な被告であるアンワール・R被告は、ダマスカスの刑務所で58人を殺害した罪で起訴されている。検察官は、同刑務所で2011年と2012年に少なくとも4,000人の反体制派の活動家が拷問を受けたと主張している。被告はすべての罪を否認している。

被告はアサド政権の治安部隊で諜報機関の大佐を務めていたが、2012年にトルコに脱出し、そこで反政府組織の自由シリア軍で活動するようになった。被告は2014年にドイツに来て亡命を認められた。

反体制派のTello氏は、6年前にジュネーブで行われた紛争終結を目指した国連主催の協議で、アンワール・R被告は反体制派の代表団の一員だったため、被告の裁判は反体制派グループにとって「屈辱」で、反体制派グループは内部での争いにより傷ついていると述べた。

元陸軍大佐のアルアブドラ氏は、罪を犯した者全員が裁判に掛けられることが現実的かどうかを疑問視した。

告発されることを恐れているのかと尋ねられたアルアブドラ氏は、自分にはやましいことはないとロイター通信に語った。同氏はトルコに逃れる前にアサド氏の軍やISIL(イスラム国)と戦ったという。

「我々は戦争に勝つには程遠い。仮に勝ったとしても、何らかの大赦があるべきだ。アサド一族とその最も忠実な側近は裁かれるべきだ」と同氏は話した。 

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