
ジョナサン・レスウェア
ロンドン:武装組織フーシ派が支配するイエメン海岸に係留されている老朽化した石油タンカーは、世界最大の原油流出を引き起こす寸前にあると、専門家らは警告している。
石油タンカー「セイファー号」の船内には100万バレルの原油が貯蔵されており、これは1989年にアラスカで発生し大惨事となったエクソンバルディーズ号原油流出事故の際流出した原油の4倍の量となっている。
2015年に放棄された同船への専門家による立ち入りを何度も阻止してきたのは、同国の武装組織フーシ派である。
国際的な専門家グループが火曜日に発表した論文では、直ちに行動を起こさなければ、「地域的な環境・人道的災害 」が発生すると警告している。
専門家らは、冬の間に大規模な原油流出が発生した際に、原油がどのように拡散するかを示すコンピューターモデルを制作した。この時期の潮流により、夏よりも紅海沿岸に沿ってはるかに遠くまで原油が拡散することが予想される。この石油タンカーは、原油の貯蔵・積卸し船として使用されていたもので、イランが支援するフーシ派と国際的に認められたイエメン政府との間のイエメン内戦の主要な戦場であるホデイダ沖に係留されている。
「今こそ、この地域の水域と紅海沿岸に接する6か国に住む何百万人もの人々の生活と健康が破壊されないよう防ぐ時です」と専門家チームを率いたストーニーブルック大学の海洋・大気科学部のカリーン・クライハンス准教授は述べた。「北紅海とアカバ湾のサンゴ礁は、今後数十年生き延びることのできる世界最後のサンゴ礁生態系の一つになると予測されています。そのため、セイファー号から原油流出が起これば、原油は海流を介して拡散し、地球規模の海洋資源を荒廃させることになります。」
クライハンス准教授は、気候変動による気温上昇により一掃されつつある世界中の他のサンゴ礁に比べ、この地域のサンゴ礁ははるかに暖かい海で生き延びることができると述べた。
『Frontiers in Marine Science』に発表された論文で専門家らは、地域的な政治的緊張があるものの、国連と国連機関である国際海事機関が緊急行動を起こして船内の原油を除去することを求めた。
専門家らは、「当局は、紅海周辺に住む人々の生活と世界最大の海洋保護区に生息する生物を気候変動から守るため、直ちに行動すべきだ」と同論文で主張している。
専門家らによると、国連は先月、専門家によるタンカーへの立ち入りについてフーシ派と合意に達したと発表したにもかかわらず、まだ立ち入りは行われていない。
5月には船内の機関室に水が侵入し、9月にはタンカー付近で原油漏れが確認された。
「セイファー号は2015年からイエメン沖に放置され、老朽化が進んでおり、世界にこれまでにない大規模な原油流出が起こる可能性があると警告を出しているのです」と専門家らは述べた。「しかし、この貴重な警告は無駄になっています」
先週、アメリカの関係者は、フーシ派がタンカーへの立ち入りを拒否したことは、テロリスト組織の行動に似ていると述べた。
2014年に首都サナアを制圧しイエメン内戦を勃発させたフーシ派は、紅海の船舶に対する攻撃について相次いで非難されている。
また、フーシ派は、火曜日にジッダ港で燃料を降ろしていた船を攻撃したと広く疑われた。爆発物を積んだ小型船がシンガポール船籍「BW Rhine」号に突っ込み、爆発と火災により火花が上がったものの、死傷者は出なかった。