
ウィーン:アメリカのジョー・バイデン次期大統領の下で、イランの核合意を再開するには、イランの合意違反を元に戻すことを明確にする新たな合意を結ぶ必要がある、と国連の原子力監視機関のラファエル・グロッシ事務局長が語った。
1月20日に、大統領に就任するバイデン氏は、制裁解除の見返りに、原子力活動に厳格な制限を課すこの合意に対して、「イランが再び徹底順守するならば」、アメリカはこの合意に復帰すると語っていた。
ドナルド・トランプ大統領がこの核合意を離脱し、イランに再びアメリカの制裁を課した後、イランはこれに対応して、この合意内容にある多くの制限に違反した。アメリカ政府がまず制裁を解除すれば、すぐにこうした措置を元に戻す、とイラン政府は述べている。
ロイター通信とのインタビューで、イランの順守を監視する国際原子力機関(IAEA)を率いるグロッシ事務局長は、この合意をたやすく元に戻すには、あまりにもたくさんの違反がありすぎたと語った。
「私はイランが『私たちは出発点に戻ります』と単純に言うと思えません。なぜなら、出発点はもはやそこにないからです」と、IAEA本部でグロッシ事務局長は語った。
「協定か、合意か、理解か、それとも、私たちがすることを明確に規定する何らかの附属文書が必要なことは明らかです」と、同事務局長は語った。
「さらに多くの(核)物質が存在し、…さらに多くの原子力活動が存在し、さらに多くの遠心分離機が存在し、さらに多くのことが発表されています。だから、こんなことがありながら、何が起きるというのでしょうか。これはイランが政治レベルで決断すべき問題です」
イランの濃縮ウラン備蓄量は2.4トン以上あり、この合意で設定された上限の12倍だが、合意に署名する前に、イランが保有していた8トンよりはまだはるかに下回っている。イランは取り決めの純度3.67%を超えて、ウランを4.5%まで濃縮しているが、合意前に達成した20%を下回っている。
イランは山の中に掘られた場所、フォードウ燃料濃縮プラントのような合意内容で認められていない場所で、ウランを濃縮している。もっと最近では、合意内容で第1世代のIR-1ウラン濃縮遠心分離機しか使用できないとされている場所、ナタンツの地下濃縮プラントで、高機能な遠心分離機を使って濃縮を開始した。
「見たところ、私たちが2015年の12月の元の場所に戻ろうとしています」と、グロッシ事務局長は語り、この合意の制限が導入される1カ月前、大量の核物質と装置が迅速に取り除かれたことに言及した。
「イランが(順守)したいなら、かなり迅速にそうすることができるでしょう。しかし、こうしたことの全てのために、私たちには綿密に準備した道があるのです」と、同事務局長は語った。