
ダウド・クタブ
アンマン:昨年のクリスマス、ホッシュ一家の生活は順調だった。62歳のファイス氏は自宅で木工彫刻店を経営し、人並みの生活を送っていた。
彼はベツレヘムや近隣のエルサレムの土産物店で販売されている質の高い手作りの聖像を製作していた。
この地域では観光業が盛んであり、3人の息子ジョージ、ラミ、リチャードも職を得ていた。36歳になった長男のジョージは、インテリアコーディネートの仕事が順調であり、一家は長男がいよいよ結婚し、家庭を築く年として2020年を楽しみにしていた。
しかし、彼らの希望と夢は、新型コロナウイルスの感染拡大によって打ち砕かれた。
「観光業の停止は緩やかなものではありませんでした。前触れもなく急停止したのです。私達が住む都市は他のパレスチナの町とは違い、観光業にほぼ完全に依存しています」とホッシュ氏は語った。
2019年には、ベツレヘムの聖誕教会を訪れた観光客数が140万人(2018年比20%増)を記録した。聖誕教会はローマ皇帝コンスタンティヌスがキリスト教を公認した後、4世紀、コンスタンティヌス皇帝の母ヘレナ王妃によって建てられた。
新型コロナウイルスのパンデミックはホテル、ツアーガイド、土産物店、工場、レストラン、およびツアーバスに影響を与え、ベツレヘムにとって「大惨事」であるとホッシュ氏は加えた。
ベツレヘムに観光客が全く訪れない中、ホッシュ氏は、小売店がまだ一部営業しているエルサレムに行こうとも思ったが、イスラエルから旅行許可証をもらうのは難しかっただろうと述べた。
彼の妻のリタは、新型コロナウイルスが家族全員に影響を与えたとアラブニュースに語った。長男ジョージの結婚は延期され、クリスマス休暇に新しい服を買うという息子たちの伝統は今年中止された。
さらに家計への打撃により、クリスマス休暇のための食事の費用抑制も余儀なくされた。「(クリスマス休暇の食事)は予算によります。いずれにせよ今年は誰も来ませんし、誰もどこにも出かけませんので、豪華な食事を作る必要はありません」とリタさんは述べた。
ほぼ今年1年間、ホッシュ一家はほとんど収入がなかった。唯一の例外は、パレスチナ政府が今回の世界的保健危機による経済損失を軽減するために設立された特別基金から、息子のラミ氏に700シェケル(200ドル)の一回限りのお金が支払われたことである。
慈善団体『Shepherd’s Society』を運営するベツレヘム・バイブル・カレッジのジャック・サラ学長はアラブニュースにこのように語った。「私たちは、基本的な生活費用を賄うお金が全くない人たちのために、食料や医薬品の供給だけでなく、より高額な医療費用の両方の面で、何百もの家庭を支援しています。」
「私たちは多くの家庭を訪問していますが、彼らがどれだけ大変な状況であるかがわかります。問題は新型コロナウイルスのパンデミックだけではなく、占領も問題となっています。彼らには先が見えないのです。」
「状況は不安定で予測不可能なものであり、新型コロナウイルスの感染拡大による経済への打撃は、既に悪い状況をさらに悪化させています」と語った。
ベツレヘムの元市長であるベラ・バブーン氏は、これまでとは異なり、クリスマスのイベント、祝会、真夜中のミサは中止されるだろうとアラブニュースに語った。
「これまでで初めて、クリスマスシーズン中に聖誕教会を訪れる観光客や巡礼者の数がゼロになります。また、ロックダウンの結果、ベツレヘムは巡礼者や観光客、あるいは地元の信者さえもいない孤絶した場所となります」と彼女は言った。
バブーン氏はさらに、コロナ禍は、収入源を観光業に直接依存するベツレヘムに住む40%の家庭に影響を与え、さらに40%がその収入源が間接的に観光業に関連していると推定している。
ホッシュ家は数十年前から先祖代々ベツレヘムに住んでおり、気分が高まるクリスマスのお祝いには毎年参加してきた。
「息子たちはクリスマスツリーの点灯式に参加したいと言っていましたが、今回は新型コロナウイルスの感染拡大を避けるために中止されました。総大司教をお迎えするため外出しないクリスマスイブは私の記憶ではこれが初めてのことです。」
今年、ラテン・カトリック教会には新しい指導者が誕生した。ピエールバッティスタ・ピッツァバッラ氏は11月6日に総大司教に任命された。今年は保健上の制限により、総大司教は誰もいない教会で真夜中のクリスマスミサを執り行うこととなった。