
トリポリ :トルコは北アフリカにおける影響力を強め、戦争で引き裂かれたリビアに軍事介入し、チュニジア、アルジェリア、そしてモロッコに対し、「ソフト・パワー」、貿易と投資を行使する、とアナリストは話す。
トルコ製ドローンがリビアでの競争に勝利し、同じくソープオペラやその他の文化作品がマグリブ諸国で人々の心を掴んだ。マグリブの数か国は、かつてのオスマン帝国の一部であった。
イスラム保守派、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は近年、地域の一員としてのアンカラの役割を主張し、ギリシャや EU、またロシアや湾岸諸国と論争となっている。
彼がヨーロッパの以前の植民地勢力、とりわけフランスと対峙し、イスラム世界の擁護者としての姿勢を熱心に示したことで、トルコは、北アフリカやその他地域において多くの尊敬を獲得してきた、と観測者筋は話す。
マグリブにおけるトルコの影響力が増大したことは、エルドアンの「新オスマン、汎イスラム」外交戦略の結果である、とソルボンヌ大学の歴史学者、ピエール・ベルムレン (Pierre Vermeren) は話した。
民衆の反乱によって地域の独裁君主が倒され、トルコがムスリム同胞団 (the Muslim Brotherhood) のようなイスラム運動を後押しした「アラブの春の時分である 2011 年、このことは実際に始まった」、と彼は話した。
「2020 年、トルコの影響力が急増し、今ではリビア介入を指示し、トルコ兵士や傭兵を、アルジェリアとチュニジア国境に配置している。」
アンカラ支持網は、「ソーシャル メディアと報道機関を通じ」、トルコを宣伝している、とベルムレンは話した。
「アフリカ戦略の幕開けの一環として、マグリブ地域の国々との関係を強化しようとトルコは考えている」、とアンカラに拠点を置く政治アナリスト、アリ・バケール (Ali Bakeer) は認めた。
「トルコとアルジェリアの関係は急速に構築されつつある。その間、トルコとリビア間における両国の利害は日に日に増大している。チュニジアとモロッコに関しては、トルコは相互の経済的利益に注目しようとしている。」
トルコの影響力は、石油の豊富なリビアで最も顕著となっている。リビアは、2011 年の NATO の後ろ盾を得た蜂起によって長期独裁者、ムアンマル・カッザーフィー (Muammar Qaddafi) が倒され、死に至らしめられ、その後大混乱に陥った。
アンカラによる軍事顧問、設備および傭兵の援助は、シリアからアゼルバイジャンに至る同国の介入と防衛支援を反映し、国連の承認する国民合意政府を救済した今年、決定的となった。
トルコは、トリポリに拠点を置く国民合意政府が、東部に拠点を置く政治指導者で、エジプト、アラブ首長国連邦そしてロシアの支援を受ける、ハリファ・ハフタル (Khalifa Haftar) に忠実な勢力による攻撃を跳ね返す手助けをした。
また、これによってトルコは別の問題に関し助けられることとなった。ギリシャとキプロスとオフショアガス鉱床をめぐる争いという問題である。
それは、アンカラが国民合意政府が広大な領海に対する権利を主張する協定に調印後のことだ。
「トルコは、軍事的投資をその影響力に活用しようとしている…」、とグローバル・ネットワーク・イニシアチブ (Global Initiative Network) のアナリスト、イマードエディン・バディ (Emadeddin Badi) は話した。
同国の軍事的足跡は現在、国連の調停による停戦後、恒久の平和を希求しているリビアにて顕著である。
「トルコはチュニジア国境に最大の軍事拠点、海軍基地とシリア人傭兵が駐屯するキャンプを保有する」、とハーグにあるクリンゲンダール・インスティトゥート (Clingendael Institute) のジャレル・ハーカオウィ (Jalel Harchaoui) は話した。
トルコ議会は火曜日、同国のリビアにおける軍隊展開を 18 か月延長することを承認した。
「リビアでは、トルコは『ハード・パワー』を通じて、自分たちの重要性を主張してきた」、とベルムレンは話した。
「他のマグリブ地域では、おそらく『ソフト・パワー』により、主に経済的砲撃を用いて、後はすべて同じである。」
リビア西部の国では、トルコが注目しているのは、貿易と投資である。
1,200 を超えるトルコ企業がアルジェリアに店舗を構えている。今年早い時期、エルドアンはアルジェリアを訪問し、Covid-19 に関する医療提供でもまた、同国を支援した。
トルコは、アルジェリア製品の第三の最大輸入国となっており、両国は貿易額を年 41 億ユーロ (50 億米ドル ) に増加させようとしている。
別の分野については、トルコは近年、アルジェにある、オスマン時代のケッチャウア モスク (Ketchaoua Mosque) の復元の援助をした。
マグリブ地域におけるトルコの輸入品は急増しており、とりわけ「トルコ製」織物製品によって、地元製造の商品は締め出されている。
「トルコ製品が織物市場になだれ込んできていて、多くのモロッコ ブランドの息の根を止めた」、とモロッコ王国のある製造業者は話した。同国は、2006 年の自由貿易協定を改定した。
またチュニジアでは、2004 年の自由貿易協定以来増加している低価格のトルコ製品によって、企業が損害を受けており、チュニスでは 2018 年、一定の輸入税を再び課すこととした。
しかし、同地域の多くの人の心に訴えるものが別にある。それは、エジプトや他のアラブ数か国から「テロ組織」と分類されているムスリム同胞団を支援してきた、エルドアン自身である。
北アフリカの若者の人口が増え続ける中、パンデミックによって悪化した右肩上がりの失業率と取り組んでいるため、エルドアンは幅広い尊敬を得てきた、とベルムレンは話した。
トルコの国家元首は、エジプトのガマール・アブドゥル・ナーセルにまで遡る伝統を見習っている。
それは、「ヨーロッパを侮辱し、イスラム教徒の擁護者というイメージを打ち出した、また別の地中海の指導者」という伝統である、と歴史学者は話した。
ハーカオウィは、マグリブの多数の若者に訴える手法に同意し、「若者全体がトルコの例を見て独立の手本としている」、と判断している。
フランス通信社
トルコ大統領、レジェップ・タイイップ・エルドアンをイスラム国の一員と描写する広告。「愚かなスルタンをぶっ潰せ」とアラビア語で書かれた表題がある。リビア東部の港湾都市バンガージー (Benghazi) にて、2020 年 2 月 13 日撮影の資料写真。( 資料、フランス通信社 )