ベイルート:レバノンの元参謀長は2月11日、昨年のベイルート港での大規模爆発の捜査担当主任判事に、爆発する数年前に、そこに保管されていた押収物である大量の硝酸アンモニウムを民間企業に売り渡すか、輸入業者に送り返すように勧めたと語った。
陸軍に揮発性化学物質の使い道はない、と2017年まで陸軍参謀長だったジャン・カーワジ氏は証言した。
カーワジ氏は捜査が始まった6カ月後、証人として事情聴取のために召喚された。同氏はこの捜査で証言する初の陸軍当局者であり、最高位の治安当局者だ。
硝酸アンモニウムは大量にあった上、「用途が限定されているので、そして、時間が経つにつれて溶解するので、長時間保管することは、危険なので」、陸軍にとって硝酸アンモニウムは使い道がない、と同氏は捜査担当主任判事に語った。
陸軍にはそれを保管するスペースもないし、除去する能力もないとカーワジ氏は語った。陸軍は税関当局に、その硝酸アンモニウムをレバノンにある民間の爆発物を取り扱う企業に売り渡すか、元の輸入業者の費用負担で、原産国に再輸出するように当時依頼していた、と同氏は付け加えた。
地元メディアの調査によると、この港に保管されてから数カ月後、輸入業者たちはほぼ3,000トンの硝酸アンモニウムの検査を各自が実施して、返送してもらう要求を全て取り下げていたという。この化学物質は爆発するまで、結局この倉庫に6年間留まることとなった。爆発を引き起こした火元は不明のままだ。
昨年の8月4日に引火した揮発性の化学肥料は、核爆発以外では史上最大規模の爆発に数えられるものを引き起こし、ベイルートの外観を損ない、211人を死亡させた。6,000人以上がこの爆発で負傷した。
硝酸を積んだ貨物船は、船舶に関する技術的な問題があったために、2013年にベイルート港に入って来た。その時、硝酸は押収され、2014年からずっと湾港倉庫で保管されていた。
この爆発の後、レバノンの政治・治安関係者の多くが、この保管されている硝酸アンモニウムについて聞いており、そのうちの多くが内部のやり取りで、危険な状態でこの港に保管しておくと、火災等になる恐れがあると警告していたことが明らかになった。
カーワジ氏が責任者であった当時の陸軍参謀本部は、この硝酸アンモニウムの扱いに関して、税関局と書簡をやり取りした機関の1つだった。
2016年4月に、陸軍は税関当局に推奨する書簡を1通送っていた。
11日、カーワジ氏はファディ・サワン捜査担当主任判事に、「陸軍は法に従って義務を遂行してきており、今も遂行し続けています」と述べた。カーワジ氏の弁護士が伝える同氏の声明は、レバノン国営通信で放送された。
12月にサワン捜査担当主任判事は、ハッサン・ディアブ暫定首相と3人の前閣僚を訴追し、数百人の死につながった過失があるとしていた。
この訴追は激しい反発を誘発し、前閣僚たちは同判事の法廷での権力に異議を唱え、この捜査を中止させた。しかし、同国の最高裁判所は、サワン捜査担当主任判事に任務を再開するように要請した。
カーワジ氏の尋問は、この捜査再開の合図となり、レバノンでの数十年に及ぶ刑事免責の文化と、司法問題への政治的干渉を考えれば、この捜査が阻止されるのではないかという国民の懸念を和らげそうだ。
ほぼ30人、そのうちの大半が湾港・税関関係者がこの爆発があって以来、逮捕され続けている。
AP通信