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イスラエルのレスキュー隊代表に次々と性的虐待疑惑

タイのタクワパー郡にあるヤンヤオ仏教寺院に到着したイスラエルの有名なレスキュー隊「ZAKA」の責任者、イェフダ・メシ・ザハブ氏(2005年1月5日)(AP)
タイのタクワパー郡にあるヤンヤオ仏教寺院に到着したイスラエルの有名なレスキュー隊「ZAKA」の責任者、イェフダ・メシ・ザハブ氏(2005年1月5日)(AP)
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17 Mar 2021 11:03:04 GMT9
17 Mar 2021 11:03:04 GMT9
  • メシ・ザハブ氏は、かつてイスラエルの存在に反対し、ユダヤ人国家の設立が可能になるのはメシア到来後であると信じる過激な超正統派のメンバーであった。

エルサレム:イェフダ・メシ・ザハブ氏(Yehuda Meshi-Zahav)は何十年にもわたりイスラエルで最も有名な人物の1人であり、パレスチナ人の犠牲者をケアする超正統派による救助隊の設立と、宗教派と世俗派のイスラエル人との間の溝を埋めたことで広く尊敬を集めてきた。

しかしここ数日、同氏が数十年にわたり男性、女性、子どもに対して恐ろしい性的虐待を行ってきたと訴える告発者が増え続けている。

同氏は数週間前、これまでの功績を称え、イスラエルで最高の市民栄誉賞である「イスラエル賞」を受賞したばかりだが、このスキャンダルにより同氏の評判は完全に落ちた。また、閉鎖的なイスラエルの超正統派コミュニティにおける性的虐待の実態にも光が当てられている。

ユダヤ人社会における性的虐待の被害者を支援するマニー・ワクス氏(Manny Waks)は、「特に超正統派の場合、厳格な沈黙のおきてがあります」と説明。自身も出身地のオーストラリアで虐待を受けていたサバイバーでもある。

「ここには、私たち対彼らというように閉鎖的なコミュニティ精神があります、このようなことが重なると、特に子どもへの性的虐待については惨劇を招くことになります」

メシ・ザハブ氏は疑惑を否定しているが、告発者らは同様の証言をしている。世間的に有名であることを利用して、女性や少年少女に性的虐待を行い、超正統派のコミュニティが沈黙の壁で同氏を庇護してきたというものだ。

「N」という文字で識別される被害者は日曜日、最初にメシ・ザハブ氏に会ったのは彼が16歳だった1996年のことで、同氏は20歳年上だったとイスラエルの新聞イェディオト・アハロノト紙に語った。

「当時彼の近くにいた人たちは皆、私が彼のエスコートボーイだったことを知っていました。私は本当の意味で売春婦になり下がりました」

メシ・ザハブ氏は、かつてイスラエルの存在に反対し、ユダヤ人国家を設立できるのはメシア到来後であると信じる過激な超正統派のメンバーであった。しかし、1989年にエルサレム近郊でバス襲撃事件が発生し、16人が死亡するという惨事が起きたことをきっかけに彼の考えは変わった。

ユダヤ人の死者に敬意を表する慣習に沿って、犠牲者の遺体の回収作業を行うボランティア活動に参加。彼はこの経験から、すべての人の痛みは平等であるということを学んだという。

これらの取り組みの結果、1995年に「ZAKA」が設立され、災害や自爆テロの犠牲者の身元確認や、ユダヤ式埋葬のための遺体の回収などボランティア活動を行ってきた。その後、初期対応を行う救急救命士も加わり、イスラエル国内で広く認知されるようになった。

そして数々の栄誉を手にし、イスラエルの世俗派と超正統派の間でしばしば緊張が高まる関係において、穏健派の象徴となった。

同氏はイスラエルの独立記念日祝典における聖火点灯に招かれ、先頃両親が新型コロナウイルスに感染して死亡したことを受けて、新型コロナウイルスの感染予防対策の徹底を超正統派コミュニティのメンバーに呼び掛けた。同時に、安全対策を無視するよう信者たちに促したラビには「その死に責任がある」と非難した。

今月初め、メシ・ザハブ氏(61)はイスラエル賞の功労賞を受賞。ヨアヴ・ギャラント(Yoav Gallant)教育大臣により受賞が発表されると、泣き崩れながら「この賞はZAKAの何千人ものボランティアに与えられたものだ」と述べた。

長年の沈黙を破って告発者が名乗り出たのは、この受賞がきっかけとなったようだ。

それは先週の木曜日、イスラエルの新聞ハアレツ紙が、メシ・ザハフ氏によるレイプ、性的虐待、性的ハラスメントを告発する被害者6人の証言を掲載したことから始まった。

これに対し同氏は、「これらの誹謗中傷には根拠がなく、私に対するゴシップであり、私の発言を封じようとする行為にしか見えない」とする書簡を発表。ZAKAの責任者から一時退き、イスラエル賞を辞退したが、いかなる不正行為も否定した。

それ以降、ぽつぽつと寄せられていた証言は今や激流となっている。

イスラエル警察は日曜日、重大犯罪を扱う部門Lahav433が正式な捜査を開始したと発表。また、ヘブライ語のメディアは月曜日、2013年にも同氏に対する同様の申し立てを調査したが、証拠不十分で捜査を終了したと報じた。

 

一方、ZAKA側は「衝撃と驚き」を表す声明を発表し、メシ・ザハブ氏に対する申し立ては、組織を特徴づける価値観から何光年も離れたところにある、深い憎悪や衝撃、嫌悪を呼び起こしたと述べている。

超正統派の間で行われた性的虐待に関して正しい数を把握するのは難しい。

支援団体「VoiCSA」の代表を務めるワクス氏によると、イスラエル社会では一般的に男子の6人に1人、女子の4人に1人が性的虐待を経験していると推定される。また、超正統派の世界においてこの数字が異なることを示すものは何もないと説明した。

「私たちの多くは、虐待件数の増加に対してより脆弱性が高まっていると考えています」とワクス氏は語る。これには、性教育が行われていないこと、大家族であるために子どもに目が行き届かないこと、結束の強いコミュニティでは大人たちの間に一般的な信頼があることなどが理由として挙げられる。

メシ・ザハブ氏に対する告発について、「衝撃だが驚かない」とし、他の被害者とされる人々を勇気づけるきっかけになることを期待していると述べた。また、このようなケースにおける時効を廃止するようイスラエルに要求した。

現在、家族や教師や医師といった身近なコミュニティメンバーからの性的虐待の時効は被害者が18歳になってから20年、また、痴漢行為は3~5年、強姦は10年と定められている。

超正統派の間で行われた虐待に光を当てた歴史的なケースとしてイスラエルは1月、超正統派の元教師マルカ・レイファー(Malka Leifer)容疑者を長期にわたる法廷闘争の末にオーストラリアに引き渡した。同容疑者は74件の児童への性的虐待で追われていた。

性的虐待サバイバーのためのイスラエルの支援団体「マガン・フォー・ジューイッシュ・コミュニティ(Magen for Jewish Communities)」の責任者シャナ・アーロンソン(Shana Aaronson)によると、少なくとも6人がメシ・ザハブ氏に関して同団体に連絡してきたという。告発の兆しが初めて明らかになったのは6年前のことだったと説明した。

AP

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