
クリストファー・ハミル・スチュワート
ロンドン:イラン外相ジャヴァード・ザリーフ氏が殺害されたガーセム・ソレイマーニー少将とイスラム革命防衛隊(IRGC)を批判している、リークされた音声記録は、政権内の政治的内紛の兆候だと、アナリストは分析している。
イランインターナショナルのペルシャ語テレビチャンネルによって最初に明らかにされた、長時間にわたるリークされた音声記録の中で最も注目に値するのは、ソレイマーニー氏とIRGC内の彼の加担者が、外交政策にほぼ全面的な支配力を行使しているというザリーフ氏の暴露であった。
ザリーフ氏は、IRGCのシリアでの戦場へのニーズが、しばしばイラン外交官のニーズと、イランの外交政策全体を奪ってきたと不平を漏らした。
誰がリークしたのかは明らかではないが、それは「センシティブなロウハーニー政権の終わりの時期に、そしてイランの大統領選挙の目前に出てきた」と、中東シニアアナリストでイランインターナショナルの編集者であるJason Brodsky氏は、アラブニュースに語った。
「イランの外務省が時にロウハーニー政権が出しているのとは異なる公式見解を明るみに出さないといけないということです。イランの広範囲なメディアエコシステムの様々な要素に、取り組まなければならないのだと見ています」とBrodsky氏は述べた。
「国内の政治的内紛と戦うという観点からして、外務省は、ここ数週間は実に困難な時期を過ごしていることが見て取れます。このストーリーを、そうした進行中の争いのコンテクストの中で見ることが重要です」と彼は付け加えた。
「それは進行中のウィーン核協議という国際的な要素と、また、6月に予定されているイラン大統領選挙という国内政治的な要素です。」
しかし、ザリーフ氏のような核合意支持派の政治家と政府事務方の強硬派の間の亀裂を超えて、さらに、リークされた音声はイラン外交政策のより根深い側面を浮き彫りにする。「誰が決定を下しているのか。」
「ザリーフ氏がイスラム共和制の中で演じている権力ダイナミクスを、多くの評者は必ずしも正当に評価していません。つまり、外務省はイスラム共和制内で、独立した政策決定の権力を持っていないとのことです。」とBrodsky氏は述べた。
シンガポール国立大学中東研究所の上級研究員であるAsif Shuja氏は、アラブニュースに対し、この権力不均衡は、イラン・イラク戦争中に形成されて以降続く、IRGCの政権に対する優勢の結果だと語った。
「IRGCは、イラン社会の中で特別な役割を果たすために設立されました―イラン革命を守るという役割です―。そして、システム全体の先頭には最高指導者がいます。」とShuja氏は言った。
時間とともに、IRGCの役割は、軍の伝統的な役割を果たすために拡大したと、彼は説明する。
IRGCの役割は、最高指導者のオフィスとイデオロギーをただ防衛することから領土保全に移行し、そうしたことが、IRGCの役割を陸軍と外務省をわきに追いやる方向へ導いた。
Shuja氏によると、こうしたことで、IRGCは「小国家、あるいは国家内国家」になってしまいさえしたという。
IRGCは今やイラン弾道ミサイルの備蓄全体をコントロールしている。また、IRGCは、政権に対する国内の異議を鎮圧する積極的な役割をますます担ってきている。とりわけ2019年11月には、何百人もの抗議者が、IRGC国内軍のバスィージ民兵組織とみられる治安部隊によって殺された。
Shuja氏は、ザリーフ氏のリークの時期を、間近に迫る大統領選挙から切り離すことは困難であり、強硬派派閥がもたらしている競合は、中道派の外相に大統領選出馬を思いとどまらせるという企ての下、リークに拍車をかけうると述べた。
イラン革命は「ガーセム・ソレイマーニー氏によって体現され、もし誰かが彼を否定するならば、イスラム共和制にとって大変不可欠な思想をも否定することになります」とShujaは述べた。「ザリーフ氏の選挙機会にとって、良い兆候ではありません。」